DIOは嫌がるジョナサンを、強引に窓の向こうにいる息子に近づける。
「慌てるな、ジョナサン。これはマジックミラーと言って
 あちらからは見えないようになっている。ジョルノの顔を
 見て見ろ、お前の痴態を見てしまった後の表情に見えるか?」

DIOに言われ、ジョナサンもつられて窓の中の少年を覗く。
ジョルノはペタペタと窓を触ったり、叩いたりして何かを調べて
いるようだった。どこか困惑しているものの少なくとも
情事を目撃してしまった時の表情ではなさそうだ。
ジョナサンは呆然とした表情のまま、ディオを見つめる。

「・・なんだその間抜け顔は、ああ、知ってたぜ。
 その窓の事はな。面白いから何も知らないお前を
 からかってやったのさ。そのブローチもわざと
 ベットに転がしといたんだ。」

「この・・・!」

ディオの馬鹿にしたような言い方にジョナサンの怒りが頂点に達し
信じられない程の底力でDIOの戒めを振りほどくと、怒りに任せ
その拳をディオに振り上げる。しかしその拳は当たることはなく
ジョナサンの体ごとそのまま床に突っ伏した。

「流石のこいつも体力の限界が来たらしいな。
 おい、お前の役目は終わりだ。俺はこれから
 こいつと大事な話をしなければならないからな。」

DIOはジョナサンを抱き上げると、昔の自分をひと睨みして
去っていく。ディオは舌打ちを一つすると、気絶している
ジョナサンに向かって一言言い放った。

「ジョジョ!お前がここにいる限り、俺からも逃れられないと
 思えよ。未来の俺もな!俺はジョジョを手放す気は
 ないからな!よく覚えておけ!」

DIOは過去の自分の遠吠えに、苦笑いを浮かべながら
自室にジョナサンを連れていった。

【汝の敵を愛せ 後編(ジョナサン編)】


数時間後、瀕死寸前だったジョナサンの体はどうなったかというと
気絶している間にも波紋の力でめざましい回復を遂げていた。
目が覚めた時には、最初にここにやってきた時の体力と
変わらないくらいまでに元に戻っていた。
服は相変わらず何も身に着けていないが
体は綺麗になっているようだ。自分はどうやらベットではなく
ソファーで眠らされていたようだ。

むくりと起き上がるとベットからかすかな寝息が聞こえるのに気付く。
深くかぶったベットカバーからチラチラ見える金の髪と体の線。
ディオ達にしては体の線が細く小さい。
誰だろうとついベットを覗くが突然現れた手に肩を掴まれ
強く引き寄せられる。勢い余ってそのまま何かにぶつかり
驚いて後ろを振り向くと、いつの間にかDIOがジョナサンの体を
支えていた。いつ近づいたのだろう、全く気付かなかった。
ジョナサンは慌ててDIOから距離を置き、拳を構え戦う意思を見せる。
しかしDIOはそんなジョナサンを相手にせず、キャビネットから
酒とグラスを二つだすとテーブルの上に置いた。

「よせ、裸のお前に何ができる?俺はお前と話がしたいんだ。
 どうだ?いい酒だぞ?飲まないか?」

「酒だって!!僕は君となれ合うためにここにいるわけじゃ・・」

「声がデカい、アレが起きるだろうが。」

一人で興奮しているジョナサンに呆れながら、DIOは
ベットで寝ている人物を指さす。ジョナサンが
誰だと尋ねると、DIOは息子だと答えた。

「ジョルノ・・・!?」

「ジョナサン、声がデカいと言っただろう?」

「・・・DIO・・彼を返すんだ!あの子は
 仲間の元に戻らなければならない・・・!」

声は潜めながらジョナサンは必死にDIOを説得する。
勿論DIOはそんなジョナサンの説得には耳を貸さない。
あくまで自分の意思は曲げないことをジョナサンに
強調して伝える。

「却下だ。息子は返さない。仲間より親の傍にいた方が子供の為だ。」

「君のどこが親だ・・!なら僕も言わせてもらう。
 あの子が親と一緒にいるべきと言うのなら
 僕だってその権利がある。あの子を連れて
 仲間の所へ帰らせてもらう・・・。」

「まてジョナサン。」

「DIO、僕はジョルノを起こすよ。
 止めたって無駄だ。」

ジョナサンはカーテンをちぎると体に巻き付け
衣服がわりにし、ジョルノの傍へ近寄る。しかしDIOに
突然腕を掴まれ、乱暴に引き寄せられる。再びジョナサンは
DIOに身を預けるような形になった。

「何をす・・・!」

「あまり調子に乗るなよ?ジョナサン。折角
 話し合いで折を付けようとしているのに
 人の好意を無下にするんじゃあない。」

鼻と鼻が合わさる手前まで顔を近づけられ、ジョナサンは
その気迫に思わず息をのむ。何気なくその体を
見るとあちこちに引っかき傷の様なものがついて
いるのに気づく。
回復の速い彼らの体に傷がついているという事は
これはまだ真新しい傷だという事だ。

「この傷が気になるか?なに・・さっき散々抵抗されてな。
 まだ「行為」に慣れないらしい。今日はいつもより
 ほんのちょっとだけキツめにやったから
 我慢できなくなって抵抗したのだろうな。」

「ち・・ちょっと待ってくれ・・まさか・・。」

「・・さっきやっと寝付いたんだ。起すんじゃない。」

「DIO!君はまさか・・!!」

「誰を」なんて聞かなくても、答えはもうわかっている。
知りたくなかった一番最悪な場面が脳裏をよぎり、
ジョナサンは怒りに任せてDIOの襟首をたくしあげる。
その途端、それまで表情を変えずジョナサンと接していた
DIOの顔付きががらりと変わると同時に
掌がいきなりジョナサンの顔面に迫ってきた。

「ジョナサン、回りくどい事をいつまで続けるつもりだ?
 お前も、口で会話するより体で会話した方がいいらしいな。
 ま・・・最初からそうするつもりだったがな・・・。」

片手で顎の骨が砕けるかと思う位に強く口を掴まれる。
懸命に振りほどこうとするが
神の力を得たDIOにはジョナサンの力など子供の
抵抗と同じ程度なのだろう。そのまま口を掴んだままの
体制でソファーに押し付られ、伸し掛かられる。

チラリと見えるDIOの左肩に見える星のあざ、それは間違いなく
自分の体の証。しかし組み敷く男の体は自分の体とは
まるで別物。そう感じるのは、自分の体だったものは完全に
DIOの肉体と「変化」したからなのだろう。
彼の長い髪がはらりとジョナサンの体にかかる。

「ジョナサン・・・。お前の相手は、この神の力を
 得たDIOだ・・。過去のディオでも、お前の子孫に
 敗れ去ったDIOでもない。大丈夫だ、お前なら耐え
 られるだろう。」

「ぐ・・ぐ・・・!」

DIOが言う「耐えられる」という意味は、きっと暴力に対して
の事ではない。これから屈辱的なことが待っていることの意味を知り
ジョナサンは思わず身を震わす。

「お前が大声を出さないと約束するなら
 この手を放してやろう、分かるだろう?
 子供の前ではしたない声を聞かせたいのか?
 今度は・・ガラスも防音壁もないんだぞ?」

そのままぐいとジョナサンの顔をジョルノが寝ている
ベットに向ける。突然ジョルノに寝返りを打たれて心臓が止まり
そうになる。今度こそジョナサンとジョルノを隔てるものは
なにもない。彼の目が冷めてしまったら、それこそ終わりだ。

「さあ、どうする?俺に口を塞がれたままするか?
 それとも自分で必死にこらえるか?」

先ほどディオにやられてあんなに大声を出して乱れたのに
これから先、DIOに抱かれて無言でいられるだろうか。
自分で声を防ぐ行為をDIOに邪魔されることだって考えられる。
DIOは口を押える手を少しだけ離され、答えを再度催促される。
そしてジョナサンは結局、口を塞がれる方を選んだ。

「そうか・・・それもいい。では始めるか・・・。」

DIOはさっそくジョナサンを包んでいたカーテンを
まるで紙でも破る様に引きちぎり、その体をまさぐる。
呼吸がしずらい上での愛撫は想像以上に苦しさを伴った。


「う・・・!く・・・ふ・・!」

「ジョナサン・・・今度は好きなだけ欲を放てばいい。
 俺は息子にそれを引っ掛けさせるような真似はしないからな。」

仰向けになったジョナサンの胸の飾りを舌で弄ると
突然歯を立てる。そこから血がジワリと滲み出て
DIOはそれを綺麗に舐めとった。
噛んでは舐め、噛んでは舐めを繰り返すDIOに
ジョナサンはビクビクと痙攣しながら愛撫に応える。
DIOの腹の下にあるそれは早くも硬さを増していく。

「ふむ・・・そろそろいいだろう。」

DIOはジョナサン自身が勃ち上がり始めてきたのを
確認すると懐から試験管と管の様なものを出す。
DIOは管を手に取るとジョナサンの性器にそれを
あてがった。

「ちと・・長さが足りないか・・・こちらにするか・・。」

DIOの言葉に体中から冷や汗が流れる。
これから何をされるのか、経験がなくても分かる。
DIOはテーブルの上にそれを投げ捨てると他の管を取り出す。
DIOの捨てた管の他にもいくつかの管と試験管が置いてあり、。
そのうちの一つには血がべっとりとついていた。

「ん?これが気になるのか?これは採取に失敗した管だ。
 暴れるからな・・内部に傷がついてしまったんだ・・。」

ジョナサンがテーブルの上の血の付いた管を凝視しているのに
気付いたDIOは、それを取りジョナサンの目の前に近づける。
まだ乾ききってない鮮やかな赤い血がDIOの指を赤く汚す。
それをまるで調味料が付いた指を舐めるようにDIOが
舌を這わす。それを見て、先ほど自分の胸が吸われた場面が脳裏に
フラッシュバックされ、快感を思い出し、ブルブルと身を震わす。

「誰のだか気になるのかジョナサン。それとも
 ついている血を見て、今から自分のされる事の恐怖で
 怖気づいたか?いや・・・そんな男ではないな
 お前は。うすうす気が付いているんだろう?誰の血だか。」

その言葉にハッと我に返り、寝ているジョルノを見つめる。
よく見ると、シーツに点々と小さな赤い跡がついているのが見える。
色が変色していないのを見るとついさっきついたもので違いない。
ジョナサンはDIOに塞がれている手を引きはがすと
後ろにいる男を思い切り睨みつける。

「まさか・・・まさかその血は・・彼の・・!」

「そりゃそうだろうな。お前にこれが差し込まれた
 記憶がないのなら、間違いない・・・。」

くだらない冗談を飛ばすDIOには罪悪感など
ひとかけらもないのだろう。ジョナサンは怒りを覚えるよりも
息子だというのにひどい扱いを受けた目の前の少年に
強い憐れみと同情を覚えた。

「何のためにそんなひどい事を・・・!!」

「研究の為だ、俺の血を受け継ぐ強い遺伝子を持つ精子を
 採取せねばならない、今後の研究の為にな。しかし
 研究をするとしても必ず成功するわけではない。
 より多くの精子を保存しておかないとな。ただ・・
 今回は失敗してしまったんだ、血の混じったものは
 使い道がないからな。」

「君は・・・息子の事を何だと思って・・!!」

「勿論愛している。しかしアイツはまだ俺の想いに
 気づいていない。アイツが俺を素直に受け入れない
 限り、ずっと続けていくつもりだが・・・?
 なに・・続けていくうちにいずれ快感に変わっていくかも
 しれんぞ。」

「き・・・君はそんなことをして可哀想だと
 思わないのか・・・!?」

ジョナサンの表情が悲しそうに歪む。目の前の男は
どうしてこうも冷たくなれるのか。悲しそうなジョナサンとは
対照的にDIOは何故か満足げな表情をしている。

「そうだな・・・お陰であいつの傷はまだ治りそうにない。
 場所が内部なだけに治りが遅いようだ。
 スタンドがあればたちどころに治るみたいだが
 あいつのスタンドは今拘束しているからな・・・。
 どうだ?ジョナサン、治療してやってくれないか?
 痛みが残るのはかわいそうだろう・・・?」

「クソっ・・・・!」

DIOに一矢報いてやりたいのもやまやまだが
今はジョルノの傷を癒してあげたい。
ジョナサンは一旦DIOから離れるとジョルノの傍に駆け寄る。

(可哀想に・・・痛かっただろう?
 今、治してあげるから・・・。)

心の底から、ジョルノを憐れみ、その手のひらを
彼の下半身にかざす。うう・・と小さなうめき声を漏らし
ジョルノが寝返りを打つ。痛いのだろうか。
ジョナサンはジョルノの一挙一動に細心の注意を払い
波紋を流す。そのせいでDIOが後ろから近づいて
来たのに気づかず、いきなり羽交い絞めにされる。
驚いで背後を見ると、DIOが笑みを浮かべながら
ジョナサンを見下ろしていた。

「DIO!なにを・・君だって彼を治してと!
 じ・・邪魔をするな・・!!」

「ああ、続けてくれ、俺も続ける。気にしなくていい。」

DIOはそれだけ言うとジョナサンの性器をいきなりしごき始める。
いくら眠っているとはいえ、ジョルノのすぐ手前で情事を
始めるなんて、非常識にも程がある。懸命に身じろぐが
DIOの体はピクリとも動かない。

「くうっ・・・!!」

「声を出すな・・・起きる。」

「や・・・やめろ・・こんな所でっ・・・!」

抗議の言葉とは裏腹に再び硬さを増す性器。
片手で必死に口を押えながらも回復の波紋を当て続ける。
そんなジョナサンの下半身に、いきなり激痛が襲う。

「ぎっ・・!!」

DIOが先ほどジョナサンに見せた管を、硬く反り立った
性器の穴に差し込んだのだ。あまりの痛みに
少しづつ性器が萎えかけていく。体中から冷や汗が
滝のように流れでる。

「痛いついでだ・・。だが・・先ほどの行為で
 痛みは慣れてしまったかもしれんな。」

DIOは言いながらジョナサンの秘部に己自身をあてがうと
一気に奥までつく。

「!!!」

声にならない悲鳴をあげ、そのままがくがくと震えだす
ジョナサンを気にせず、DIOは挿入を繰り返す。
先ほどDIOが言った通り一度貫かれていたせいで
痛みは殆どなく、すぐに快感が痛みにとってかわる。
つかれるたび声が出そうになる、でも声を出したら彼が起きてしまう。
片手で口を必死に抑え、片手からは波紋を流し込む。
飛びそうになる意識を必死にこらえ、何とかジョルノの
治療に専念する。しかし思った以上に頭がくらくらして
上手く波紋を流せない。

「ジョナサン、どうした?気合を入れてやろうか?」

腰を動かしながら、DIOはジョナサンの性器に
管をググッと差し込んでいく。鋭い痛みに
ジョナサンは目を見開き、ビクンと体を震わせる。

「あ・・が・・!く・・っ!・・は!!」

「この位耐えられないとは言わせないぞ。アイツだって
 耐えたのだからな・・・。」

更に奧にぐりぐりねじり込まれ、目頭に涙が浮かぶ。
だが局部の痛みよりも心の痛みの方が
ジョナサンを激しく苛む。可哀想に、この子もこんな思いをしたのか。
与えられたのはきっと苦痛だけじゃなかっただろうに。

「すまないな、ジョナサン。辛いだろうがお前の精子も
 必要なんだよ。必要な分だけ取らせてもらうぞ。
 心配するな・・すぐ快感に変えてやる。」

本気がどうかは分からないがDIOはジョナサンに
謝罪と憐れみと同情の言葉をかけると、
腰を掴み激しく揺すり始める。しだいに痛みは快感に
代わりジョナサンは精を試験管に放っていく。
達した後の快感がDIO自身を締め付け、彼の性器からも
ジョナサンの中に精を放つ。体中の筋肉が硬直し
その勢い余ってか、性器に刺された管が浮き上がり外れそうになる。

「おっと・・・。」

DIOは取れそうになるそれを見つけると再び管を差し込む。
一瞬体がびくりとするも、今度は痛みはない。
その代わりに新しい快感が体中に走り、ビクビクと体を震わせる。

「ひ・・・!!」

「なるほど・・・。どうやらこれも好きになったらしい。」

ジョナサンの意外な反応にDIOはほくそ笑むと、
今度は管とDIO自身の挿入を同時に激しく繰り返す。
対処しきれない快感にジョナサンは
体をく激しくねらせ何度も精を放った。
そして試験管が二本目に差し掛かり精が出にくくなった
事を確認すると、ようやくDIOはジョナサンから離れていった。


辛うじてジョナサンは大声をあげることはしなかったが
何度も精を放ち、またDIOに精を放たれ、放心状態で
ベットのふちに凭れ掛かる。
あれだけDIOを憎んだのに、ジョルノを心配したのに
今は頭の中は真っ白で何も考えられない。
DIOはジョナサンを担ぎ上げるとソファーまで運び
気付け代わりの酒を飲ませる。

「ごほっ・・・はァ・・はァ・・・。」

「どうだ?少しは正気に戻ったか・・?」

「君よりは・・・正気だ・・・。」

ジョナサンには歯ぎしりをする力も残っていないが
それでも負けずにDIOを睨みつける。
DIOはそんなジョナサンに苦笑いをすると、ジョルノの
眠るベットのふちに腰かける。激しい情事の後の部屋はすでに
静まり返っており、ジョルノの寝息だけが聞こえるだけだった。
それにしてもあんなに傍で激しい情事を交わしたというのに
本当にジョルノは気付いていないのだろうか、DIOはジョルノの反応を
確かるべく触れようとすると、怒気を含んだジョナサンの声が
背後から聞こえる。

「・・・その子にさわるな・・。」

「俺の息子だ、文句は言わせない。いや・・お前には
 文句を言う権利はあるな、何せお前も親だ。
 俺に抱かれながらも、手をかざすことを止めないお前に
 俺はしっかりと確信した。お前は確かに親にふさわしい。 
 ジョルノになくてはならないものだ。」

「だったら彼を返・・・!」

「そしてお前は俺にもなくてはならないものだ。なあ
 ジョナサン・・・。俺たちは片親だけで切ない思いを
 してきた。お前と俺だけではない、他のお前の子孫
 達だってそうだ。父が死去、父が不在、母が生き別れ・・。
 皆寂し思いをしてきている。ジョルノは両方とも
 いたが、最後まで両親に愛されなかった。血の繋がっていない
 カス男はともかく、実の母親にもだぞ?あまりにも
 可哀想だと思わないか?俺はやり直したいんだ、我が子を
 愛したい。しかし、俺にはパートナーがやはり必要だ。
 あんな冷たい女ではなく、我が子の為にどんなことも耐えられる
 お前が一番ふさわしい。」

ジョナサンの言葉を遮るようにDIOは滔滔と話を進めていく。
ジョナサンはそんなDIOを無視し、ふら付く体で
ジョルノに手を伸ばす。ジョナサンの目的はジョルノを仲間の元へ
連れて帰ることだ。DIOの言葉に何も感じていない訳ではないが
彼の酔狂に付き合ってられないのも事実だ。
しかしジョナサンは、今DIOの部屋にいる。
容易に逃れられないのも事実。
諦めの悪いジョナサンにDIOは仕方なく重い一撃をくらわす。
たった一撃だがその威力は大きく、ジョナサンの身動きを
止めるのには十分だった。

「まだ分からないのか?おれはお前もここから出す気は
 ないと言っているんだ。なあ、ジョナサン。俺を愛せ。
 俺とお前と息子で三人で仲良く愛を育もうじゃないか。
 俺はずっと憧れていたんだ、伴侶と自分の子に愛されながら
 末永く暮らすことをな・・。」

「・・・何を・・自分勝手な事を!」

一瞬のスキを見逃さず、ジョナサンが反撃するもすぐかわされる。
DIOはジョナサンの行動などとっくに見透かしているかのように
空振りしたその腕をつかむと、いつの間にやら部屋に入ってきた
ディオにジョナサンを投げ渡す。ディオは物でもキャッチするように
軽々とジョナサンを受け止めるとその体を羽交い絞めにする。
ディオに羽交い絞めにされながらも、まだ抵抗を止めようとしない
ジョナサンにDIOが冷たく言い放つ。

「だが、お前も、もう少し俺に愛されることに慣れなければ
 ならないらしい・・。今の状態ではジョルノとは
 一緒に出来ない。その為にはちと悔しいが、まず
 昔の俺に愛されることに慣れて貰わなければならないようだ。」

「は・・・離せディオ!」

「奴の言う通りだ、ジョジョ。物事には順序というものがある。
 まず、俺をたっぷり知ってからでも遅くない。既に
 くわれた後のようだが、お前の事だ。体力は元に戻りつつ
 あるんだろう?タフな奴よ。だがそのおかげで俺も
 それだけ楽しめるから助かるがな・・・。」
ディオがそう言い終わると同時に
突然自分の背後から骨がきしむような音が聞こえジョナサンは
思わず悲鳴を上げる。両肩に力が入らない。
どうやら骨にひびが入ったようだ。それでも暴れる事を止めない
ジョナサンを半ばひきずる形でDIOの部屋から退室していく。
律儀にもドアを閉めようとする昔の自分にDIOがいったん引き留める。

「まて・・時間が来たら、また俺の元に戻してもらうぞ。
 それと先ほども言ったが、「乱暴」ではなく「愛する」ことを
 前提でお前に「貸す」と言ってるのだからな・・。一応スタンドを
 つけて監視させてもらうぞ。約束を破ったら二度と
 ジョナサンはお前の手に渡らないと思え。」

「はっ!いいのか?そんなこと言って。俺の方に夢中に
 なるかもしれないぞ。」

「減らず口を・・・。流石昔の俺だな・・・。」

「来い、ジョジョ。時間が惜しい。俺はまだ
 満足したりないんだ。俺のあふれ出る欲をその体で
 受け止めてくれ。俺はお前じゃなきゃ満足できないんだよ。」

狂喜とも見える笑みをジョナサンにむけるとディオは素早く
ドアを閉め、ジョナサンを連れてDIOの元から遠ざかっていく。
廊下にはジョナサンの息子の名を呼ぶ声が何度も響いていた。



残されたDIOはジョナサンとの情事の時にあふれ出たと
思われる、自分の精液を掬い取る。それを指でこね回しながら
しみじみともの思いにふける。

「お前と俺の遺伝子か。」

それを眠る息子の頬につうと塗ると、愛おしそうにその頭を撫で
その耳元に小さな声で囁きかける。

「ジョルノ、もう少し待っていろ。もうじき「片親」ではなく
 「両親」がお前を迎え入れる日がやってくる。他人のカス(父)でも
 お前を愛さない女(母)でもない。お前には今度こそ俺達の
 愛に包まれる日々がやってくるんだ。お前だって望んでいるのだろう?
 愛し合う両親。その両親に愛される自分。素晴らしい家族像
 じゃあないか、誰もが望んだ当たり前のものだ。だからお前も
 俺を愛する努力をしろ、お前のもう一人の親だって俺を愛せるように
 頑張っているんだぞ?」

DIOはそれだけ言ってジョルノから離れるとテーブルに座り
一人酒を飲む。ほどなくして部下のヴァニラが果物をもって
部屋へやってきた。

「果物を持ってまいりました。
 テーブルの上にでもおいておきましょうか?」

「ああ、ついでに「昔の俺」の部屋のテーブルの上にも頼む。」

「「あの男」の分という事でしょうか?DIO様がそう
 おっしゃるなら。」

ヴァニラが持って来た果物はジョルノが「食べる」ための物だ。
DIOがジョルノに「食べさせる」ことはあえてしない。
誰しも敵の手から施しなど貰いたがらないだろう。
だが部屋に置いてあるものは施しとは違うので
我慢できない時に勝手につまめばいいとDIOが置かせたものだった。
死にたくなければ人は食物を口に入れる。
それが証拠に昨日置いた果物は知らない内に何個か減っていた。
それはジョルノが生きることを諦めていないという証拠だ。
きっとジョナサンとてそれは同じことだろう。

「早速用意しましょう。しかしあの男の事です。
 これだけでは足りないでしょうな・・。」

皮肉っぽく笑いながらヴァニラは頭を下げると、
DIOの部屋を出ていく。
DIOは果物の中からチェリーを一つとるとしげしげと
それを眺める。そのチェリーは珍しく三つの赤い玉が
ついており、二つは大きめで一つは小さい、家族の様なチェリーだ。

「なあ、ジョナサン?お前は俺たちを見捨てたりしないよな・・?
 優しいジョナサン。お前が愛すべきはこの俺と息子だけだ。
 早く俺に慣れて戻ってこい。親子三人で存分に愛し合おうじゃないか。」

DIOはチェリーを掌に包むように乗せると、そのまま口元へ
持っていき、優しくキスをした。


一方のディオはヴァニラの訪れで浅い眠りから目を覚ます。
ジョナサンとの情事を終えて、心地よい眠りについていた矢先だった。
ふと、突然不安に駆られベットカバーを覗いてみる。
そこには疲れ果てて深く眠るジョナサンの姿があった。
それを見たディオは安堵のため息をもらす。

(ふん・・さすがのこいつも体力の限界が来たらしいな。)

あれから、ディオはジョナサンとの情事の続きを行った。
決して丁重とは言えないが、先ほどのように人間の尊厳を
無視するような行為はしなかった。
情事が終わった後、ジョナサンはディオに会話を求めてきた。
怒る訳でもなく、感情的になる訳でもなくジョナサンは
真面目な表情でディオに尋ねる。

「・・ディオ。君に聞きたいことがある・・。」

「・・・なんだ?あの小僧関連の事はお断りだぞ。
 それを俺に言われても困るんでな。聞きたきゃ未来の俺に
 聞くんだな・・。耳を貸さないと思うが・・。」

「・・・そうか・・。じゃあ、他の質問をするよ。
 君はいつから僕を求めるようになったんだ?」

「・・・なに・・?」

ジョナサンに初めてそんなことを聞かれ、ディオは
らしくもなく言葉に詰まる。確かに二度もジョナサンを抱いて
おいて、「そんなつもりはない」などという言い訳は通用しない。
ジョナサンを求める理由はただ一つ。
負かしたいから、支配したいから、征服したいから。
今まではそれだけだと思っていた。しかし今考えると
そう思い込みたいだけだったのかもしれない。
いつまでも返事をしないディオをそのままにして
ジョナサンは一人、胸の内を語り始めた。

「・・・未来の君は僕をパートナーとして
 一緒に生きて欲しいと頼んできた・・・。何故だい?
 僕が憎いんじゃないのか?僕を殺したい筈じゃないのか?」

「・・・・。」

「未来の君は僕が傍にいる事を強く望んでる。
「愛している、ずっとそばにいて欲しい」と言ってきた。
 最初はただの狂言だと思ったさ、正気の沙汰じゃ
 ないってね。でもね、そんな狂気じみた言葉の中に
 彼の必死さと真剣さが垣間見えた。それと彼が心に
 抱えている孤独と寂しさも伝わってきたんだ。」

「・・・・。」

「ディオ・・僕は・・君の・・いや・・
 彼の寂しい気持ちは分かる・・・。でも・・・!」

今まで自分達に対して憎しみの表情しか見せなかった
ジョナサンの顔が憐れみを含んだものに変わっていく。
どうしてこの男は敵である自分にそんな顔をみせるのだろう。
敵対しているくせに、憎いくせに、親の仇をうちたいくせに。
ディオはそんなジョナサンの表情を見ないようにして
傍に置いてある度数の強い酒を一気に飲みこむ。

「おまえの・・・全部お前のせいだ。」

文句を一つ呟きながら更に酒を煽ると、ディオは先ほどの
ジョナサンの様に胸の内を語り始める。

「お前は俺に情けをかけすぎるんだ・・・。
 俺を憎んでいるくせに、俺に憎まれていると
 分かっているくせに・・。それなのにお前は俺を
 何とか理解しようと努力する。」

「ディオ・・僕が君を憎んでいる気持ちは
 変わらない!」

「それは俺も同じだ、だが全てを憎んでいる訳じゃない。
 俺もお前もな。なあジョジョ・・。
 お前はさっき「いつから自分を求めるように
 なったのか」と聞いたな。それはな、お前との
 偽友情ごっこが始まった時からなんだよ。あれだけひどい目に
 会いながらも、お前は必死で俺を理解しようとしていたよな。
 俺を疑う自分を責めても、決して俺を責めようとはしなかった。
 最初は馬鹿にしていたよ、そんなお前の事を。だがな、気付いたんだ。
 俺のお前に対する優しさは偽りだが、お前の俺に対する優しさは
 偽りじゃないと。嘲りながらもお前の優しさが心地よいと
 いつしか思うようになったんだ。・・・悩み苦しんだよ、
 お前を憎みたいと強く思う気持ちと、お前の優しさを独り占め
 してみたいと強く願う気持ちの狭間でな。・・・結局は
 お前への独占欲が勝ったみたいだがな・・・。」

「ディオ・・・。」

「・・・フン、酒をたらふく飲んで
 うっかり出た戯言だ、鵜呑みにするんじゃないぜ。
 まぬけが・・。」

それだけ言うとディオは殻になった酒瓶を床に放り投げ
ジョナサンから顔を背けるようにしてベットに寝ころぶ。
そんなディオに対して、ジョナサンはまだ何か言いたげに
していたが、不意に当初の目的を思い出してドアの方に近づいていく。
相変わらず諦めない姿勢のジョナサンに、ディオが仕方なく忠告をする。

「無理だ、ジョジョ。脱出は諦めるんだな。
 さっきアイツから聞いただろう?俺の手から万が一
 逃げることができても、アイツのスタンドが逃がさない。
 奴のスタンドはいつでもお前の傍にいるそうだ。
 歯向かおうと思うのは止めておけ。今のお前も、今の俺も
 とてもじゃないが敵う相手じゃない。」

「しかし僕はこのままここにいる訳にはいかない!」

ディオの忠告には耳をかそうとせず、
ジョナサンはドアに手を触れる。同時に短い呻き声と
鈍い音があたりに響き、ディオが音のした方を見ると
ジョナサンがいつの間にか床に倒れこんでいた。
ジョナサンはそのままピクリとも動かない。
どうやらDIOのスタンドの仕業らしい。
攻撃を受けて気絶させられたのだろう
ディオはやむなく気絶しているジョナサンを
抱きかかえ、ベットの隅に放り投げた。

「・・・だから無理だと言ったんだ。間抜け。
 それにどうせ、お前はここから一人では出れない。
 あの小僧を放って一人で出ることは出来ないだろうしな。
 だがあの小僧の傍には常に未来の俺がいる。
 不可能なんだよ、ジョジョ。未来の俺に抗う事はな。」

もう意識はないだろうジョナサンにそう言い聞かせると
ディオは再びジョナサンの隣に寝転がる。

「・・そしてこの俺も未来の俺に抗うのは無理なんだよ。
 未来を殺せば俺の人生もそこまでだ。なあ、ジョジョ。
 お前がアイツの物になったら俺はどうすればいいんだ?」

DIOは時間が来れば約束通りにジョナサンを迎えに来るだろう。
過去の自分から未来の自分の手に渡る。当たり前のことだ。
だが、その時自分はどうなるのだろう。DIOは心配いらないと
言っていたが、その理由は教えてくれない。
見えない未来にただただ不安が募っていく。
ジョナサンがいなくなる未来はいつやってくるのだろうか。
明日か明後日か、多分そう長くはないだろう。

「時間が流れていく。永遠の時間を約束された俺が
 まさか時の流れの早さに焦らされる日がくるとはな。」

いつも聞きなれている筈の時計の音が今日ほど煩わしく
感じたことはないだろう。ディオは時を刻む音から逃れるように
自ら瞼を閉じ、ジョナサンと共に眠りについた。



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