神々しい真紅のカーテンの中にいまだに静かに眠る首のみの男。
彼の住処である透明な水晶球に その景色が映っても 皮肉にもその中の首の男の目には何も映らない。 その耳に音は届いても、たまに聞こえるのは 一人の男の声だけ。 そして今日もその声の持ち主がやってくる。 重厚な扉の開く音が聞こえ、男の声が耳元で響く。 「・・・ジョジョよ。喜べ。今日はお前にほんの一時 の自由を与えてやる。そして語ろうではないか。 知りたいことが山ほどあるだろう・・・?」 男は水晶球の中の「友」に話しかけると,それを 胸に抱きいずこへと去っていった。 一方、水晶球の中の男は彼の言った意味を 運ばれながらもずっと考えていた。 「自由を与える」、「語り合う」まさに両方とも いつも望んでいたことだ。ただ「一時の」と言われた 事から、「永遠の開放」は望めないらしい。 それでもいい。知りたい。与えられたわずかな時間の 限りでも構わない。何を聞こうか。 彼は思いつく限りの疑問を頭の中に浮かべていた。 男は狭い一室へ入っていくと、部屋の電気のスイッチを 入れ、長いすに横たわる一人の男の胸部に 持ってきた水晶球を静かに置いた。 そして水晶球に顔を近づけ「友」に話しかける。 「・・・さあ、友よ。懐かしい「人間の体」だ。 こいつの精神に乗り移るがいい。ただし・・・ こいつが意識を取り戻すまでの間だが・・。」 その言葉に水晶球の中の男は躊躇する。 誰か犠牲になったのだろうか。 しかし今更悔やんでもどうしようもない。 かすかに聞こえる自分の下にある男の命の鼓動。 彼の命を乞うにしても話せなければ意味がない。 水晶球の中の男は意を決して神経を集中する。 正直どうやっていいか判らないが、とにかく願う。 ほんのひと時の間、体を貸して欲しいと。 そして時間もたいしてかからず水晶球の中の男と共に 横たわっていた男も目覚め始める。 【DIOとジョナサンのラジオ放送】 まず最初に感じたのは 体中に伝わる、柔らかい布の感触。 久しく味わう体の重み。 最初は薄暗い部屋がぼんやり視界に映り、そして次に 映ったのは自分以外の一人の男。 逞しい体に精悍な顔つきの男が自分を見下ろしている。 目の前の男は名乗ろうとはしないが、ジョナサンには それが誰だか判らないはずがなかった。 「・・・ディオ・・・?」 百年近くも開けた事がなかった口から言葉が漏れる。 とても懐かしい声。「そうだ」と返事をするかわりに 目の前の男がにやりと笑った。 「久しいな・・・本当に。お前の全身を見るのも。 その声を聞くのも・・・。」 「・・・・全身って・・どういうことだ・・?」 かつてのライバルだった「ディオ」という男はその言葉を 待っていたかのように、黙ってジョナサンの目の前に手鏡を渡す。 そこには当たり前だが自分の顔が映っている。 ジョジョは全身を確認する為に手鏡を握っている手を 伸ばしその身を映す。 「僕の・・・体・・・?」 肩についている「星」を何度も食い入るように見つめながら 「ディオ」に尋ねる。 「これは一体・・・・?」 「まあ、まて。色々質問はあるだろうが、 大体お前の知りたいことは判っている。 心配するなオレが全て教えてやる。とにかく そこに座れ。まずそうしなければ何も始まらん。 その前に一言、言っておくが俺は「DIO」と いう名だ。ブランドーの名はもう捨てた。 まあ・・響きは一緒だがな。」 そう言ってDIOは鉄で出来た椅子をジョジョの 傍に置き座るように促した。 彼のいうとおりにしないと何も聞けないと感じた ジョナサンは黙ってその椅子に座る。 DIOはそれを確認すると、自分も同じ椅子を持ってきて 隣に座った。目の前には四角いテーブル。 自分の手前には水差しとグラス。 そして自分の周りにおいてある 見たこともない鉄の箱。何かの機械であることは辛うじて 判ったがそれが何かは判らなかった。 頭の上に疑問符をいくつも浮かべているであろうジョナサンの 両耳に、いきなり柔らかいものがあてがわれる。 驚いてDIOを見ると彼も両耳に柔らかそうなものを あてがっていた。 ジョジョはますますわからないといった様子で口元まで 突き出ている変な棒の先に触ると、自分の耳に 「ボッボッ」とラジオから流れてくるような音が聞こえてくる。 「えっ?」と思わず声を出すとその声も自分の耳に届き 驚き慌てふためく。 「・・・・まず始める前に教えておかなければならんことが 結構あるようだな・・・。」 DIOは呆れた様子で、ジョナサンを眺めながらため息をついた。 そして十分後・・・。 「以上だ。判ったな。」 「う・・・うん。」 今から何をするのか、これはなんなのか、ついでに ジョナサンのその体について手短に説明されて、 突っ込みたいところが沢山あったがキリがないので 腑に落ちないながらも無理やり納得させられたジョナサンが こくりと頷く。 今から行うこれは、下僕達の娯楽の一環として行われている DIOのラジオ放送らしい。近状報告や、敵たちの行動、 聴きたい音楽のリクエストや、質問コーナーなど様々なコーナーが 用意されていると言うのだ。 DIOに対してのファンレターや質問のリクエストも多く、 その中でも、「過去のDIO様について知りたい」とか 「ライバルとの赤裸々な対話が聞きたい」などの要望が多く 届いているようだ。 DIOも以前から、生首のジョナサンと喋りたいとは 思っていたので今回がいい機会だとばかりに 過去から器となるジョナサンを攫ってきて、 今の彼の精神をいれたのだということらしい。 「そんなことができるものか」とジョナサンは最初 信じられなかったが、生首のジョナサンが未だに生きていることや、 吸血鬼の存在があることなどからまず突っ込まないと いけなくなるぞと言われ、押し黙リざるを得なかった。 それに、DIOの言い分の中でも一番良く判らなかったのが、 「いいか?、ちゃんと公式のゲームでこのDIOと昔のお前が 戦うシーンが用意されているのだ。公式で 認められているのだぞ?何かおかしいことがあると言うのか?」 と言われた事だった。「公式」だの「ゲーム」だの 全くわからない事だらけだったが、 それ以上は、このことに関しては何も聞けず、やがて ジョナサンは(このことについて)考えるのを止めた。 なんとなくそわそわしているジョナサンを後目に DIOは機械を弄りながら口元の「マイク」に 向かって話しかける。 「下僕の皆さんこんばんわ。今夜も「DIOのオールナイトwryy!」が 始まるぞ。今夜は素敵なゲストをお迎えしておいた。 我が永遠のライバル ジョナサン・ジョースターだ。」 どうぞ、とばかりにDIOが目配りをしてくるのでジョナサンは 慌てて自己紹介をする。 「こ・・こんばんわ・・・。ジョ・・ジョナサン ジョースターです・・。み・・みんなはジョジョ ってよんでます。ど・・どうぞよろしく・・・。」 自分とDIO以外に部屋には誰もいないのだが 彼の性格なのか、ついぺこりと頭を下げてしまう。 「彼が喋るのは何せ百年ぶりだからな、たどたどしいのは 許してやってくれ。さて、我が友よ。百年ぶりの会話に 聞きたい事もてんこ盛りだろうが、俺の何を聞きたい? だが時間はそんなにないからな、ゆっくり質問を纏めてくれ。」 そう言いながらもジョナサンの目の前に一枚の紙を渡す。 どうやらこの中から質問をしろと言うことらしい。 ジョナサンがじっと見ている間、DIOはひたすら 近状報告などを話している。 質問事項は全部DIO個人のことばかりで、 確かに気になるものもあったが、肝心な子孫達のこととか、 この世界の今の状況とかは一切かかれていない。 仕方がないのでジョナサンは当たり障りのなさそうな 質問を何点か選んでDIOに尋ねた。 「DIOは、長い漂流の間一体何をしてたんだい? 困った事とかなかったの?」 「おお。やはり気になるか。まあ百年の間の漂流はちと 辛かったな。何せ死ぬほど暇だ。それにいくら俺達が 不死身とはいえ、腹は減るし・・・乾くものは乾く。 生意気にも鮫の奴が、俺の棺ごと齧ろうとするし・・ ま・・・反対に齧って命の糧にしてやったがな。」 「す・・・凄いね。他に困ったことは?」 ジョナサンはDIOと鮫が格闘している姿を 想像しながら更に質問を続ける。 「あと、なにせ百年も体の手入れを しなかったものだから、衣服は風化するし・・ それに見ろ・・・。俺の肌の色と髪の質を。」 そう言って自分の頭をぐいとジョナサンに押し付ける。 確かに良く見れば昔のディオと同じ金髪ではあるが 昔のほうが柔らかそうな髪の質だったし、肌の方も 昔と比べると若干色が濃くなっている。 「本当だ・・・。やっぱり百年と言う年月は 体を変えていくものなんだねぇ・・・。」 ジョナサンはDIOの髪を触りながらしみじみ 感じたことを口に出していた。こうなると 自然に好奇心が湧き、次々と聞きたい事が出てきて しまうものだ。 「DIOはその・・陸に百年ぶりに上がって、まず 何をしたの・・・?」 「うむ、まず「食事」をして、手ごろな仲間達を作って 誰も使っていない廃墟を根城にしたな。俺達だって 休めるところが欲しいからな。だが城に入って真っ先に 行ったのは風呂のある部屋だな。俺はビジュアルに拘る男 なんでな。早速風呂場で素っ裸になって・・・」 「ええっ!?全部脱いだの!?」 目を?いて驚くジョナサンをDIOは不思議そうに 見つめて逆に聞き返す。 「?おかしいか?風呂に入ると言うのに全裸になるのは 当然じゃないのか?」 「そ・・・そ・・・そうなんだけど・・。」 そういって、ジョナサンは慌しく目を泳がす。 いまのDIOの体は自分の体でもあるのだ。 上半身ならまだ構わないのだが、全裸になったと いうことはつまり・・・。 「・・・顔が真っ赤だぞ。仕方ないではないか。 俺だって最初は驚いたさ。「あっ、そういえば 下はもう金髪ではなかったな」とか「そういえば サイズダウンしたんだったな」とか・・・」 「ちょ・・最後のはどういう意味だ!」 「だがな、感心したこともあったんだぞ?」 いきり立つジョナサンを宥める様に DIOが話をきりだしたので 思わず何かと思い耳を傾ける。 「え・・?」 「さすが、お前と言う人間は真面目というか 奥手というか・・・・ あんまり使い込んでいないんだなとしみじみ思ったぞ。 まあ、早く言えば色が鮮やかだと・・・。」 「それって褒め言葉!!?なんかわからないけど 凄く複雑な心境だよ!て、ゆうかその話は もう止めてくれ!(泣)」 折角会話できるようになったのに、いきなり こんな羞恥プレイをさせられるなんて あんまりだーとばかりにジョナサンが 泣き言を言ったのでDIOがしぶしぶ話題を変える。 「折角褒めたのに・・まあいい。ところでジョジョよ。 この顔を見てくれ。 今の俺の顔のことだが、こいつをどう思う?」 「すごく・・漢らしいです。(って、何いってんだ、僕は) てゆうか、随分顔が変わった気がする・・・。」 気を取り直してしげしげとジョナサンはDIOの顔を 眺める。さっき初めて「DIO」という男を見たときも 既に違和感を感じていたが過去の記憶に残るライバルとは 大分顔が違っているのだ。昔の彼は「美しい顔立ち」という 印象だったが今の彼は「精悍な顔立ち」になっている。 悔しいが自分より男らしい顔立ちをしている気さえする。 「俺があまりいい男だからって見惚れるな。」 「相変わらずの自惚れぶりだね。君らしいけど・・。 でも・・いい男は認めるよ。正直憧れるよ。 僕にはない渋い男の魅力が君にはあるからね。」 「お前は体の割には童顔だからな。」 「・・・そこは「そんなことはないぞ」ってお世辞でも 言うべきじゃないかな。全く君って奴は。」 はぁ・・とため息をつきながら、次の質問は何にしようかと 選んでいたジョナサンだったが、用紙の文字がうっすらとだが ぼやけて見えて、一生懸命目を擦る。 「・・・あれ?」 「どうした?」 「・・・いや・・・なんだろう目が・・・それにちょっと 気分が・・・?なんだろうこの感じ・・・頭が フワーっとする・・・。」 そう言いながら顔を手で覆うジョナサンを見たDIOは 視(?)聴者に向かって「ここでいったん休憩、さあ音楽の 時間だよ、ベイビー」などと言ってリクエストの音楽を 流し始めた。 かすかに体を震わして、今だ顔を伏せているジョナサンの 頭からイヤホンマイクを素早く外し、自らのも外して 彼を支えながら自室へと戻っていった。 ふらつくジョナサンをささえながら、DIOは思う。 多分昔のジョナサンの意識が戻ってきているのだろう。 万が一暴れられたとき、放送室を壊したくないので 安全なところに移動する事に決めたのだ。 まだ今のジョナサンと話したい事もあるので彼には もう一度気絶してもらう事にしようなどと考えていた。 「う・・・う・ううう・・。・・・うわっ! な・・何だここは、一体・・・・? な・・仲間は?ディオは!?」 一瞬体をびくつかせ、辺りを懸命に見渡すジョナサン。 どうやら昔の彼の意識が完全に戻ってしまったらしい。 自分の体を支えている男と目が会うと、いぶかしげに 見つめ、口を開く。 「・・・きみは・・?」 昔のジョナサンが彼のことが判らないのも無理はない。 なにしろディオとの死闘の真っ最中に、隙を見て DIOがどついて気絶をさせ、むりやり現代につれて きたのだ。 「お前を危機から救ったものだ。」 清清しいほどの大嘘と偽善者スマイルを 見せるDIOにジョナサンはあっさり騙され 礼を言う。しかし支えている彼の腕を自分から外そうと 掴んだとき、ジョナサンはDIOの中に眠る 「悪の波動」のようなものを感じてしまう。 (・・・でちゃったか・・・。) 二人の間に流れる、気まずい空気。さらに止めを 刺すように、通りすがかりの部下の一言。 「DIO様!今から西の町を襲ってまいります。」 「・・・ご苦労。」 部下はDIOに敬礼すると、足早にその場を去っていく。 「・・・・。」 「・・・・・。さて・・・。」 DIOがポツリと呟いた次の瞬間、激しいひと悶着が あったのはいうまでもなかった。 その頃首だけのジョナサンは、一人音楽に耳を傾けながら それなりに優雅なひと時を過ごしていた。 やがてDIOが戻ってくる気配を感じ、神経を研ぎ澄ます。 これからどうなるのだろう。もうお終いなのだろうか。 もう一度口がきけたら、一人のときに音楽やラジオ番組でも 流して貰えないか交渉してみる気だった。 「ふぅ・・いい汗をかいた・・・。 ・・・待たせたな、ジョジョ。またこいつに戻れ。」 そう言うと水晶球をコンコンと叩いて来たので 再び神経を集中して、昔の自分に乗りうつる。 次第に感じはじめる全身の感覚。 「ああ・・よかった・・。実は君に頼みたいことが・・。」 言いかけたと同時に体に感じる複数の違和感。 ふわりと香る、清潔感のある香り。さっぱりとした感触に 先ほどよりも暖かい体。だが何よりも違和感を覚えたのは 全身に纏わりつく倦怠感と原因不明の腰の痛み。 あと「尻」の、人に言えない部分への不快感。 「?」 「どうかしたか?ああ、体がさっぱりしているのはシャワーを 浴びせたからだぞ。汚れていたんでな。 どうだ?爽やかな気分だろ。」 「う・・うん。でもなんだろ、この倦怠感・・。 腰も痛いし・・・。」 「なんかした?」と聞こうとDIOの顔を見つめると 彼の顔はさっきより血色がよくなり、すっきりとした ものになっているのに気がつく。彼からもいい匂いが するのでシャワーを浴びていたことは判るが、 それだけにしては、えらく満足気な顔をしている気がする。 大体の人間は、これだけで何が起こったか把握できるのだが 色々と鈍いジョナサンには何故だか全く判らなかった。 「男だろう?細かいことは気にするな。久しぶりに 筋肉を動かしたのだ。疲れや痛みが出てきたのだろうよ。」 いけしゃあしゃあと言いながらDIOはテーブルの上に ブランデーと、そのつまみや、チョコなどをだして ジョナサンに勧める。幸いなことに多少空腹を 感じていたので(激しい運動を余儀なくさせられたせい もあって)有難くそれを頂戴した。 久しぶりに食べる美味しい食べ物や酒にジョナサンは いまの自分の立場も忘れ、飲みに飲み、食いに食った。 お陰でつまみがなくなる頃にはだいぶ出来上がってしまった。 「DIOー、ないよーおかわり!」 空になったでかい皿をDIOに突きつけて催促をする ジョナサンからそれを受け取り菓子を足してやる。 余程腹が減っているのか、久しぶりに食べられた ことが余程うれしいのか、盛られた菓子に目を輝かせ 無邪気に礼を言うと、無我夢中でぱく付いた。 一方その姿を見て久しぶりに和んでいたDIOだったが、 残念ながら時間が無制限にあるわけではないことを思い出し 更にお代わりを要求するジョナサンを優しくなだめ、 再びイヤホンを彼の耳にあてがった。 「・・・あ、始まるの?終わったらくれるんだよね?」 トロンとした目で子供のように菓子をねだるジョナサンに ウィンクをして合図をすると、再び下僕たちに向けて 放送を再開した。 「待たせたな。久しぶりの再開に嬉しくてつい飲みかわしながら プライベートなことで話し合ってしまった。ちょっと 酒が入っているので羽目を外したら許してくれ。さて 次の質問だが・・・。」 「あっ!DIOこれ、聞いてもらっていい?」 突然ジョナサンがDIOの話の途中に割ってはいる。 酒のせいで大分テンションがあがってしまったらしいが それもまた一興だと思い、寛容に質問を受け付ける。 「おう、なんだ?友よ。俺達の仲じゃないか、何でも聞け。」 「えーとね・・昔のDIOのイメージについて。」 「ほぅ?どういうイメージだったんだ?」 いくら酔っているとはいえ、犬猿の仲と言われるほどの 昔の自分とジョナサンのことだ。余り良くは言われないだろう が、今更何を言われようとも堪えないので敢えて笑顔で聞いてみる。 しかしジョナサンの口から出たのは自分の予想を斜め上に行く 発言だった。 「うさぎ!」 何か草食動物の名前が出てきたことに、 一瞬思考が止まりそうになったが 気を取り直してもう一度聞いてみる。 「・・・うさぎ?あのピョンピョンはねる・・。 まさかな・・ははっ。バカなことをいってしまったな。」 「それだよ。それ!大丈夫!聞き間違いないから。」 全く悪びれもせず相槌を打つジョナサンに内心 「犯り倒してやろうか、こいつ」などと憎悪を滾らせながらも 理由を聞く。 「あ、それはね、色が白くて目が赤いから!いつも 思ってたんだ。なんか似てるなって・・・。 でも男にそう言うこと言うのは例えライバルでも 失礼かなって思って。」 そういって頭をかくジョナサンに対し、顔をひくつかせ ながらも笑顔を作り、それに対して返事をする。 「そうだな。(怒)しかしこの俺を草食動物などに 譬えられるのはお前だけだ。さずが俺のライバル だった男だ。全く命知らずだな。はははは。(棒) かく言う俺も、お前にたいして抱いてたイメージが あるぞ?いっていいか?」 「いいよ。」 「うーん、そうだな(狸とかアライグマとかでもいいが) プレリードッグに似ていたと、今思えば感じるな。」 「ぷれりーどっぐ?聞いたことない名前だけど ドッグとつくところを見ると犬の仲間か何か? かっこいいかい?」 情報の乏しい昔の時代に生きていたジョナサンは 一生懸命「プレリードッグ」について想像を 巡らせていた。DIOに聞いてもどんな生き物か 全然教えてくれないからだ。 一方DIOは、内心ニヤニヤしながら悩んでいるジョナサンを 横目で見ながら話を続けていた。 色々な質問を受け答えしながら時間は過ぎていき、 ジョナサンの反応が段々鈍くなっていくのを 感じたDIOは今回の放送をこれで終わらせる事にした。 久しぶりの酒に酔ったせいで、生首のジョナサンの意識が 朦朧としてきたからだ。ホントだったらこの後 生首のジョナサンの意識が続いているうちに 「ウサギ発言」のことでお仕置きでもしてやろうと 思っていたのだが、今回は実行できなくなってしまったようだ。 それに昔のジョナサンを攫ってきたままなので 返さなくてはならない。あまり長い時間攫ってしまうと 今の自分にどう悪影響してしまうかも判らない。 もし攫って永遠に手元に置くとしたらしたら、 彼が絶命する間際に攫うのが ベストなのだが今の段階ではそのタイミングを 図るのはまだ難しいのだ。 (楽しかったぞ。また語り合おうではないか。) 今までの短い体験を思い出しながら、意識の戻らない 昔の友の体を担ぎ上げ過去へと遡って行った。 その頃、承太郎達はDIOの下僕達の支配する 町に赴き、偶然とはいえ下僕達の会話から新事実を 聞かされる事になる。 「あれきいた?DIO様のラジオの・・・」 「ああ!聞いた聞いた!いやー今回のは特に面白かった!」 「またやってくれないかな。それに意外だったのは DIO様のライバルの男がプレリードッグ似だってこと! いやーちょっと見てみたいなー。」 「ジョナサン・ジョースターだっけ?たしかそのライバルの名。」 和気あいあいと話している会話を聞きながら顔を顰めている 承太郎とジョセフを横目に、花京院達がヒソヒソ話をする。 「プレリードックって・・あのリスのぽっちゃりした やつだよな(ちょっと見てみたいなーその人。)」 「・・・少なくとも僕はそのプレリードッグしか 知りませんが・・・(見てみたいですね、少し・・。)」 「俺がイメージしていた人とは大分違うようだ・・ (確かに見てみたい・・・。)」 嫌でも聞こえてくるその会話に承太郎が不機嫌そうに ジョセフに尋ねる。 「おい・・・じじい。てめーのじい様・・・つまりおれの 先祖は、そんなにあの愛嬌者に似ているのかよ。 そう言えば、じじいの若い頃は先祖にそっくりだって 自慢してたよな・・・。」 冷たい目で睨んでくる孫に対し、半ギレしながらもヒソヒソ声で ジョセフは反論する。 「なんちゅうことを言うんじゃ!あんなのDIOが我らの一族を 貶める為に言ったに決まっておる!あ・・・因みにわし、 そんなにじい様にそっくりだといったかの?」 余りにもいたたまれない空気の中に置き去りにされている 承太郎とジョセフがいる現代から遡り、 過去のジョナサンはどうなったかと言えば・・・・。 「ジョジョよ・・・いままでどこに隠れていたのかは知らないが 随分小奇麗になって戻ってきたな・・・。」 ジョジョことジョナサンが目覚めたのが皮肉にもディオの 寝室で、(DIOが変に気を回したらしく)それだけでも びっくりしたのに、さらに運悪くディオが戻ってきて、 いろんな意味での人生最大のピンチに陥っていた。 「それから、貴様から酒の匂いがするんだが・・俺の部屋の 酒を飲んだのか?・・・まあ・・それ位許すとしよう。 それよりも気になるんだが、慌てて体制を整えようとしたとき 一瞬腰を抑えて顔を歪めたな。腰を痛めているのだな。 どうだ図星だろう?因みに俺はお前の腰に攻撃は当てていない。」 じりじりとディオが近づいてくるが、何故か足がふらつき 腰に痛みが走り機敏に動くことができない。いつ飲まされたか 知らないが酒が相当残っているようだ。 「酒、腰の痛み、風呂!まるで、酒に酔わされて貞操を 奪われ、何事もなかったかのように体を洗われて、証拠を 隠滅された事後のような状態だな!皮肉にも俺以外の誰かに やられたみたいだが・・・。まあ先を越されてしまったもの は仕方ないとしよう・・・だが!」 「ちょっと待て!!勝手に話を進めているようだが 僕には何の記憶も無いんだ!てゆうか、「先を越される」 ってどういう意味だ!?待てってば、近い近い!!」 辛うじてまともに動く両腕を絡ませての力比べのような 取っ組み合いが始まるが、怒りが凄まじい分ディオの方に 分があるようだ。 「貴様、俺と目が合った途端「あっ!ウサギ!」と言ったな。 アレは間違いなく俺への挑発の言葉と受け取ったぞ・・。 確かにあの発言はどんな言葉の暴力よりも俺の心に響いたぞ。 勿論・・悪い意味でな。」 確かに何故か判らないが 最初に口から出た言葉が「ウサギ」だった。 別に挑発しようと意図して発言したわけではない。 何故か頭の中に「ウサギ」というキーワードが残っていたのだ。 本当に偶然出てしまった言葉だが、酔いのせいとか、 寝ぼけたからなどと言い訳も通じるはずもない。 凄い気迫で迫るディオがジョナサンに詰め寄る。 「だがな・・少し当たっているところもある・・。 貴様知っているか?オスのウサギは「性欲」が とても強いんだ。貴様が俺をオスのウサギと言うなら さしずめ今の貴様の立場はメスウサギと言うところだな・・。 俺のいってることの意味が判るよな? この・・・草食系「顔」男子が!!」 「ど・・どさくさに紛れて君こそひどい事 いってないか!?そりゃ・・今更だけど! わーーー!!父さん!僕に力をー!!」 それからどうなったのか誰にも判らないが 昔のディオやジョナサンだけでなく、現代の 承太郎やジョセフに変なトラウマが植えついたのは 確かだと言う。 一方トラウマの原因を作ったDIOは 本日の放送に対する、アンコールを求めた 沢山のファンレターに夜通し目を通していたという。 終 |