「・・・・お願い!あの男を・・倒して!」

共に戦っていたトリッシュは無念にも力尽き、
その姿は光に包まれ消えていく。
未だ残る二人の敵はボスの風格をまとった男たち、
ジョルノたちの最後の敵であり、トリッシュの父でもあるディアボロと
承太郎たちの最後の敵でありジョナサンの永遠のライバルでもあり、
ジョルノの父でもあるDIOだ。

ジョルノに仲間はもういない、だが彼には誰よりも
長い間共に戦ってきたスタンドがいる。
ジョルノはぎゅっと口を真一文字に結ぶと
戦い半ばで倒れてしまったトリッシュに誓いを立てる。

「判りました・・君の無念は僕が晴らします・・!」

【第五次(?)全裸対戦 DIOプラス】

「ふん!取りあえず第一の障害は取り除いたようだな。
 残るは・・・。忌々しいあのガキだ。あのガキは
 何回殺しても飽き足らないくらいだからな。
 せいぜいいたぶってじわじわ苦しめてやるか。」

彼に無限地獄を味あわされたディアボロにとっては
ジョルノはただの障害物ではない。
それこそあっさり倒したところで奈落よりも
深い恨みは少しも晴れないだろう。
出来れば自分と同じ苦しみを、いやそれ以上の苦しみを
味合わせてやりたい。
さっきから何故か突っ立ったまま動こうとしないDIOを無視して
ジョルノにじわじわとにじり寄る。
一方、DIOはジョルノをじっと見つめ何やら考え事をしていた。

(・・・・あの小僧・・・やはり・・・。)

ディアボロとは違い、あの二人を倒すことに執着の無いDIOは
さっきからずっと手を出さずに戦いの様子を伺っていた。
二人とも「ボス」の座についていたプライドもあってか
ディアボロも特にDIOの手は借りようとせず
DIOも特にディアボロに協力を求めることもしなかった。
元々世界支配を企む悪党同志ではあるが
DIOとディアボロには何のつながりもない。
それこそ「邪魔にならなければいてもいい」というレベルなのだろう。

逆にジョースター一族と共についてきた仲間たちには
お互い関係がなくても「同じ志」を持った固い絆で結ばれている。
しかもジョルノとトリッシュは今まで一緒に戦っていた
大事な仲間であり友達だ。
憎むべき敵も一緒、倒すべき敵も一緒。
目の前に「それ」がいれば当然優先して倒しに行くだろう。
ただしトリッシュが敗れた今、残ったジョルノが「それ」を
倒さなくてはならなくなった訳だが。
DIOも気にはなるし、いずれは倒さなくてはならないだろうが
やはり仲間の無念を先に晴らしたい。
ジョルノはディアボロをじっと睨みつけると
再び拳を交えるべく戦闘態勢に入る。
その時「死神」が横切り両者の視線を遮った。

そして「死神」が過ぎ去った後、とんでもない光景が繰り広げられる。

「!?」

そこには風景こそ何も変わっていないものの、
全裸になった「敵」が仁王立ちになっていた。
お互い幻でも見ているのかと、眼をこすり、何度も瞬きをする。
いや、正確に言うと焦っているのはジョルノとティアボロだけで
DIOはそのまま微動だにせず腕を組んで考え事をしている。
勿論自分の状態に気付いていないわけではない。
実はDIOにとっていきなり全裸になる現象はこれで三回目だ。
その現象は今だ全くの謎ではあるが、かと言って
自分が不利になることはいままで一度もなかった。
だからこそ平然としていられるのかもしれない。

(またか・・・・。)

「おい!若造!お前ずいぶん落ち着いているようだが
 どういうことか知っているのか!!」

ディアボロが突然若造と叫んだので、他にも誰かいるのかと思い
DIOは辺りをを見回すがそれらしき者は一人もいない。
するとイラついた様子のディアボロがDIOを指さし、再度怒鳴りつける。

「何処見てるうっ!お前だっ!お前に言っているんだ!!」

DIOは柱の男たちを除けば老ジョセフよりも
年上なのだが吸血鬼になったのが二十一歳の時で、
その時から時間は止まっている。
彼を知らない人間には若造に見えても仕方がない。
「俺が若造なら貴様は小僧だろ。」と言うツッコミをしたいのを
抑えつつ、自分が落ち着いている訳を二人に言って聞かせた。
DIOの言葉に驚きを隠せない二人。
全裸になったのは異常事態だが、スタンドが使えないのは非常事態だ。
ディアボロはまだ信じられないといった感じでDIOを問い詰める。

「なんだと!?スタンドも使えなくなっているだと!?
 嘘だ!それが本当なら、なぜお前は落ち着いていられる!?」

「悪いが俺はお前らのような非力な人間とは違う。
 スタンドが使えなくても俺には人間離れした
 スピードと破壊力があるのでな。」

そういうとDIOはそこら辺にある鉄でできた表示板を
まるで紙でも引きちぎるようにして、ディアボロの目の前に投げ捨てる。
未だDIOの言葉に半信半疑のディアボロは、確かめるように
投げつけられた鉄の表示板に触れてみるが確かに人間の力では
折ることもできない頑丈な表示板のようだ。
鉄の表示板を持ったまま、ディアボロはしばらく黙り込む。
そしてうつむいたままの状態で、クククと不気味に含み笑いをこぼす。

「ふん・・・まあいい。お前が俺の敵でないなら問題ない。
 どうやらあのガキも俺と同じようにスタンドを使えないようだしな。
 ふ・・・ふふふ。ならスタンドが使えなくても問題ない。
 俺の手であのガキを嬲り殺せばいいだけだ。」

しばらく訳が判らず呆然と立ち尽くしていたジョルノだったが
ディアボロの殺意と狂気を含んだその視線に気づき思わず後ずさる。
そうなのだ、不利になったのはディアボロだけではない。
ジョルノも不利なのには変わらない。
それどころか一番不利になったのはきっとジョルノの方だろう。
DIOには遠く及ばないが、ディアボロの肉体もなかなかのもので
少年の体のjジョルノとの体格差がどうしても出てきてしまう。
おまけに相手は長年の修羅場を潜り抜けてきた経験と実力がある。
そこら辺にいるただの大人の男とは訳が違うのだ。
たとえ卑怯になろうとも武器でも使わない限り勝ち目はない。
ただ裸のままでは不安なので、何か巻き付けようと布製の物に
手を伸ばしてみるが何故か霧のように消えてしまう。

(・・・え・・・?)

他にも手を伸ばしてみるも結果はどれも同じだ。
明らかに焦り始めているジョルノを、いい気味だと言わんばかりに
ディアボロがあざけ笑う。

「ふん、神にも見放されたらしいな、これから散りゆくお前に
 身に着ける布などないとでも言っているようだな。
 ははははは!ガキなんか全裸で十分だ!・・・って俺もか!!」

偉そうに言いながら自分だけはちゃっかり何かを巻き付けようと
のぼりの旗に手を伸ばすがジョルノが手にした時と
同じように霧のように消えてしまう。
恥をかいたディアボロは「何故教えてくれない!」
とばかりにDIOを睨むが、これに関しては彼も知らなかったようだ。

「それは知らなかったんだ、だがそれがどうした?
 ないものは仕方ないだろう?服がなければ勝てないのか?」

「ち・・・悔しいがお前の言う通りだ。このディアボロが
 あんなガキに負けるはずがないっ!例え全裸だろうがな!」

そういきり立つとディアボロは、DIOが先程引きちぎった
鉄の表示板をふりかざすと、猛然とジョルノに向かっていく。
ジョルノも負けていられないとばかりに
身を守るものはないかと辺りを見回す。
その時DIOの目にちらりと見覚えのある星が目に入った。

「あれは・・・・。」

ほんの一瞬だったが肩に見える小さな星。
ジョースター一族の証でもある小さな星。
そしてジョナサンの体を奪った自分にもある小さな星。
自分そっくりの金の髪に、自分に似た金のスタンドを持つ少年。

「やはり・・・俺の息子か・・・。」

あの少年を初めて見た時、うすうす感じていた自分に似た何か。
しかし自分に近いようで何故か遠い感じがしたのは
きっとジョナサンから受け継いだ遺伝のせいなのだろう。

「俺とジョナサンの遺伝を併せ持つ・・・なんと興味深い。」

もっと近くで見てみたい、そんな好奇心から自然にDIOの体が動く。
しかし肝心のジョルノはディアボロの攻撃を防ぐため
看板の様なもので自分の体を守っているのでよく見えない。

(・・・はっきりいってあの男が邪魔だ・・。
 かと言って譲ってくれと言っても断られそうだし・・・。
 裏切るのは構わんが、後で恨まれるのもめんどくさいな。
 何とかナチュラルにあの男に引っ込んでもらう方法は・・。)

自分以外であの男に攻撃できるものは何だろう。
さっきからうろついている死神なら可能だろうか。
元は部下だった者だ、命令が効くかもしれない。
だがその死神はDIOの知っている死神ではなかったようだ。
DIOと目が合うと容赦なくそのカマを振り下ろす。
いくらDIOが素で強くても、スタンドなしでは
太刀打ちは出来ない相手だ。
素早く攻撃をよけると仕方なく提案を持ちかける。

「まて、死神。お前も死神らしく目が合ったものではなく
 隙だらけの奴を狙ったらどうだ?例えばあそこの男とか。
 その方が相手に、より大きな屈辱を味合わせられる。」

「ふむ、お前の言う通りだな・・そうしよう。」

意外にもあっさりとDIOに言いくるめられ
死神は素直にディアボロの所へと向かっていく。

(あの程度で納得されるとは予想外だが結果オーライか。)

一方ディアボロはジョルノをいたぶることだけに
一生懸命になっていたので死神が静かに近づいているのに
気づく余裕がなかった。

「・・・なかなか粘るじゃないか、ガキのくせに。
 気に入らんな・・・ガキのくせに!!」

「例えスタンドが使えなくても、お前だけは絶対倒す!!」

「娘の為か、仲間の為か、正義の為か!俺は自分を
 正義の為に犠牲にする奴とは理解しあえなくてな・・・。
 俺と話の合わない奴は基本的に消すようにしているんだ!」

ジョルノの正義がディアボロの怒りに火をつけたようだ。
ディアボロがそのまま激情に身を任せ、
ジョルノの髪を乱暴につかみ、地面に叩きつける。
あえて顔面強打はまのがれるが、
全身を地面に打ち付けられ一瞬息が止まる。

「ぐ・・・!」

そのまま手を後ろに捻りあげられ、さらに短い悲鳴を上げる。
見えなくても判る、自分は今背中をディアボロに踏みつけられている。
そのせいで上体を反らすことはできないが地面に映る影は見える。
自分に覆いかぶさる黒い大きな影。
ディアボロの物だろうか、しかしそれにしては大きすぎる。
それにこの影は何かマントの様なものを羽織っているようだ。

「このまま、腕を捻りあげて折ってやろうか?指折りでもいい。
 指の爪を一枚づつはがすのもいいかもな。
 それとも何も知らないこの体を・・いいや・・心を汚して
 一生消えない傷をつけてやろうか?
 おあつらえむきに貴様も俺も裸になっているしな。
 穢れた体のまま仲間の元へ戻って、
 情けなく泣いて、奴らに慰めて貰え。
 それとも・・・そこにいるお前の親父とやらに慰めてもらうか・・・?
 どんな「慰め方」をされるか俺は責任は持てんがな・・・。」

ジョルノが何もできないと思い込み、調子に乗ったディアボロが
何気にDIOの様子を伺おうと後ろを振り向いたその瞬間、
目の前でおおきなカマが振り落とされる。

「な・・・・ば・・・馬鹿な!!」

スタンドがない状態での生身の体だったせいか、
気を抜いていたせいか、意外にもその一撃だけでディアボロは倒れ、
娘のトリッシュと同じように光に包まれる。

「くそが・・・く・・屈辱を味合わせてやりたかったのに!
 つ・・・次は・・・覚えていろ!」

捨て台詞を残し消えていくディアボロにDIOは「計画通り」
とでも言わんばかりににやりと(内心で)笑う。
因みに申し訳ないと思う気持ちは微塵もない所が彼らしい。

一方死神が自分らに近づいていた事に気づいていたジョルノは
素早く身を翻し、死神との距離を取る。
死神はチッと舌打ちをすると次なるチャンスが訪れるのを待つ為か
その身をスッと霞みのように消していった。
ジョルノは様子を見ながらDIOとの距離も取る。
後ろのおさげ(三つ編み)はディアボロに掴まれてめちゃくちゃに
乱れていて、結び直す時間が勿体ないとばかりにゴムひもを解く。
その姿を見てDIOはますます確信と興味を深める。

(俺の髪の長さとほぼ同じではないか・・何という奇遇!
 そしてあの巻いた前髪もきっと・・・。)

吹き出る好奇心を抑えきれずDIOがジョルノに迫っていく。
一方ジョルノは蛇口の並んだ手洗い場で何かを探していた。

(あると思ったんだ!!)

そしてジョルノがその「何か」を見つけ手を伸ばそうとしたとき
同じく背後から大きな手が伸び、ジョルノの頭を掴む。

(しまっ・・・・!)

マズい、このままでは頭蓋骨を割られるかもしれない。
しかしその手は力を入れるどころか、そのまま頭をくしゃくしゃと撫でる。
いや、撫でられるというより髪をかき乱されたといった感じだろう。
前髪の巻きは完全に崩れ、長く乱れた前髪をDIOの前にさらす。
巻きをしていたせいもあってか、その髪はウェーブがかかっており
まっすぐに伸ばせばきっとDIOと同じくらいの長さだろう。

「俺と・・・同じ・・・。」

「!!」

DIOが何に気を取られているかよく判らないが
明らかに気が緩んでいるようだ。
ジョルノはその隙を見逃さず、勢いよく蛇口から出した水を
DIOにひっかける。
無論何のダメージもないが、やられた方はつい
条件反射で目に手を当ててしまう。
その隙を見てジョルノは猛ダッシュでDIOとの距離をとる。
DIOは顔についた水気をふき取りながらその口元を歪ませる。

「こざかしい所は・・・ジョナサンに似たらしい・・・。
 だが・・・知りたい・・・もっと知りたいぞ・・・!」

ジョルノがどんなに距離をとっても人間離れした脚力で
すぐ追いつかれ、寸でのところまで距離を縮められてしまう。
DIOはジョルノの腕を掴んで止めようと引っ張るが、
何故かつるりと滑って抜けてしまう。
不思議に思い、立ち止まり掴んだ掌を見ると
何やらぬるぬるしていて泡のようなものがついている。
ふわりと鼻をくすぐる匂いは判らないはずがない、石鹸の香りだ。

「ふん、なかなか知恵が回るな、掴まれないようにするためか。
 しかしなんと細い腕だ、体の線も細いようだし・・・。
 そこら辺は俺達には似ていないようだな・・・・・。
 さて・・息子をあまり走らせるのも可哀想だ、そろそろ
 休ませてやるか・・・・。」

そう思い顔を上げるといつの間にやらジョルノの姿が消えている。
どうやら相手も走り続けるのには限界がきたようだ、
どこかに身でも潜めているのだろう。
一方ジョルノはDIOと死神の両方の存在に気をつけながら
建物の隙間の中に隠れていた。
その隙間はちょうどジョルノくらいの幅の人間がが入れる隙間で
DIOには入れそうもなさそうだ、そこを狙ったのだった。

(・・・あの男は・・ディアボロとは違う・・・・。
 捕まったらもう最後だ・・・。かといって
 僕の今の力ではどうすることもできない。
 しかし・・・逃げ続けるわけにはいかないんだ。)

さっき目の当たりにした、あの怪力。
自分やディアボロとはまるで違う、太い腕に逞しい体。
端麗な顔立ちではあるが、
どこか凶暴性を秘めた肉食獣の様な顔つき。
腕を掴まれたときに感じた、得体のしれない恐怖。
「この男にはかなわない。」普通の人間なら彼を見ただけで
誰しもそう思うことだろう。

今まで自分も色々な悪党とあってきたが、彼だけは別格だ。
本能が危険を知らせる、この男には近づくなと。
それでも立ち向かおうという気が起きるのは
自分とこの男は「血のつながりがある」からなのだろう。

乱れる息を何とか整え、自分を落ち着かせるために
小さな深呼吸を繰り返す。
あの男は間違いなく写真で見た父だろう。
本当なら聞き出したい、自分を捨てたその理由などを。
だが残念ながら今は敵として立ちはだかっていてそれどころではない。
しかしディアボロが倒れた今でさえも攻撃らしい攻撃を
しかけてこない、未だあの男はジョルノの観察をしているだけ。
スタンドも使えない、ただの人間だからと侮っているのだろうか。
なめられるのは悔しいが、事実何もできない自分がここにいる。
こうやって一生懸命身を潜めているので精いっぱいだ。

(どうすればいい?あの男の弱点は・・・。)

通り過ぎる何かにいちいち警戒しながら懸命に考える。
こんな所に長くいてもいずれはバレる。
しかもあの男はかなりの怪力の持ち主だ、
壁など壊して入ってくるかもしれない。
そしてその予感は当たってしまう。
壁を壊して伸びる二つの手。
だがその手が壊したものは、入口の壁ではなく
自分の背後からの壁だった。

「な・・・!」

ジョルノの体の両脇の壁を貫通した両手はそのまま彼を掴み
建物の中へと引きずり込む。
そしてそのまま体を捉えられ、押し倒される。
重たい両腕と重たい両足で体を固定され逃げることもままならない。
これから自分はどうされるのだろう。
この男のさっきからの奇妙な行動の意図が読めない分、
得体のしれない恐怖が体を支配する。
思わず叫び出したいのをぐっとこらえ、
震えそうになる体に気合を入れる。
一方DIOはジョルノの顔をひとしきり眺めると
ぼそぼそと何かを呟き始める。

「目は・・・俺似のようにも見えるが・・・よく見ると
 ジョナサンの方だな・・俺の様な三白眼ではなく青目がちだ。
 表情も俺の様な鋭さはない・・きりりとしているが
 どこか柔らかいというか、優しさを帯びた顔だ・・。
 面白い・・・ホントに俺とジョナサンの遺伝を併せ持っているのだな。」

「な・・・何を・・・。」

ジョルノには勿論DIOの体がジョナサンの体だという事を知らない。
確か「星を持つ者たち」の先祖が「ジョナサン」と言っていた気がする。
そしてその人は自分達と共に戦っているという事も判っている。
そう言えばこの男にも「星」がついているがまさか
先祖のジョナサンの血が繋がっているのだろうか。
聞いてはいけないのかもしれないが、聞かずにはいられない。

「あ・・・・あんたは・・・。」

「お前・・・耳は・・・?」

「耳・・・?耳って何だ!」

DIOは自分の耳のほくろと同じものはないか確認したいようだ。
ジョルノの承諾も聞かずに勝手にピアスを外して投げ捨て、確かめる。
別に宝物ではないが、勝手なふるまいに自然に怒りがこみ上げる。

「何をするんだ!!」

「流石にこれは一緒ではないか・・・。」

「アンタがさっきから言ってる意味が分からない!」

「別に理解して貰おうと思わん、俺が確認したいだけだ。」

いきり立つジョルノにDIOは淡々と言いきかせると、
今度はその唇に指をあてる。
勿論そこは他人に滅多に触らせることのない部分だ。
なぞられる感覚に、思わず体中が粟立つ。

「止めろ!」

「ちょっと歯を見せてみろ。」

「いい加減にしろ!!さっきから何なんだ、あんたは!!
 人の話も聞かないで・・・一方的に・・!」

怒りで体を震わすが、例え火事場の馬鹿力を出したとしても
DIOには到底かなわない。
結局勝手に指を入れられ前歯から奥歯までなぞられる。
いっそこのままかんでやろうかとも思ったが、
どうせ彼にとっては蚊が刺すようなものだろう。
余計に馬鹿にされると思い、じっと我慢し様子を伺う。
DIOはひとしきりなぞると、
またもや一人で何かを納得し、ぼそぼそと呟く。

「別に噛みついてもよかったのに、その方が牙があるか
 どうか判ったのだが・・・しかし結局お前に牙はなかったな。
 俺と同じ吸血鬼ではない・・・と・・・。」

「きゅ・・・吸血鬼・・・?ど・・どういう・・・。」

彼の言う事が冗談でなければ、自分は人間と
吸血鬼のハーフという事になる。
しかし自分は十字架も、ニンニクも太陽の光も苦手ではないし
血を見てうまそうだなどと思ったことは一度もないし
トマトジュースも別に好物と言うほどでもない。
余りの衝撃の事実に怒りを忘れ、ついでに我も忘れる。

「え・・・僕は・・・確かに赤いのは嫌いじゃないけど
 ・・・あ・・・でもピアスは赤だし・・・天道虫は
 赤だし・・・・え・・・あれ・・?」

「吸血鬼=「赤が好き」という考え方は少し短絡的だぞ?
 俺はゴールドが一番好きだし、緑や青も好きだ。
 よし、決めた、お前は今日から吸血鬼になれ。
 その方がより俺の息子らしい。」

いきなり恐ろしい事を言われ思わず我に返る。
つまり今から吸血鬼映画でよくあるシーンのように
噛まれて同類にされるという事だろう。
噛まれるのは勿論嫌だが、
それ以上に、普通人間をやめたくないだろう。

「・・・・・え?・・・絶対嫌だ!!」

「痛くないから心配するな、・・・多分。
 あ、そういえば聞いたことがある。
 俺たち吸血鬼に噛まれても人間には
「痛い」どころか「性的快感」を感じるそうだ。
 勿論噛んでいる俺には判らないことだが・・・。」

「尚更嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!!」

問題はそこじゃない、その心配はズレていると
思わずツッコミを入れたくなる。
この父親はどうも人の話を聞かないうえに、
自分勝手な解釈をする男らしい。

「反抗期か、お前はその位の年頃だったな。
 だが俺も親として、面倒臭がらずに向き合わないといけないな。
 さて・・・・首筋でいいよな?他に望みがあれば聞く・・・
 ん・・・・?」

不意に背後に何かいる気配を感じDIOが後ろを振り向く。
夢中になっていたので気づかなかったがいつの間にか
DIOの背中に死神が回っていて、カマを振り下ろしていた。
気づいたときはもう遅しで、DIOの体が暗い光に包まれる。
実感は薄いがDIOの出番はここまでらしい。
卑怯な手ではあるが、一撃で自分に幕を下ろさせたこの男には
敬意を表さねばならないと、DIOは消え際に死神を褒める。

「・・・・マジでお前に気づかなかったぞ・・・。
 しかし一撃でこのDIOを倒すとはなかなかやるな。」

「いや・・・何度も攻撃していたんだが・・・。」

ばつが悪そうに言う死神にジョルノも「確かに」と同調する。
しかしDIOにはまだ、襲われたという実感が沸かないらしい。
腕を組んで不思議そうに首をかしげる。

「そうなのか?やはり痛みの感じにくい体はこういう所が不便だな。
 だが痛みを感じにくいと言うのは素晴らしいぞ?
 でも心配することはない、快感だけは感じることができる。
 どうだ息子よ、気は変わらんか?」

「絶対変わらない!!」

「頑固者め、そう言えばジョナサンも頑固だったな。
 確か奴は牡羊座だと言ってたが・・・・。
 牡羊座はどうも頑固者が多いらしいからな・・・。」

「悪かったな、僕も同じだ!」

「何だと?まさか星座まで一緒とは・・・・。
 ジョナサンの遺伝の強さ・・恐るべし。←(※関係なし)
 息子よ・・・なかなか有意義な時間だったぞ。
 あ・・・そうだお前に一つ謝ることがある・・・。
 さっきは子供扱いして悪かったな・・・。」

「え・・?」

いきなり謝られ、思わずジョルノは耳を疑う。
DIOは決してジョルノと拳を交えようとはしなかったが
そのことについて謝罪をしたのだろうか。
この男はふざけているように見えるが、
戦士としての誇りがあるのだろう。
ジョルノも戦士であることをようやく認めてくれたのだろうか。
しかしそこはさすがDIOと言おうか、期待を裏切らなかった。

「ほら、指で歯をなぞった時があったろ?
 普通、ああいう場面では舌で歯をなぞるべきだったよな?
 まだ子供だと思って、配慮したんだが・・・・。
 やはり子供扱いはされたくないよな?」

「こ、子供扱いで結構だ!少しだけ見直したのに損した!
 だいたいさっきから消えそうになりながら
 いつまで粘っているんだ!!とっとと仲間の元へ帰ってくれ!」

「ふふふ、説教か、どこまでもジョナサンにそっくりな奴め。
 まあいい、また会える日を楽しみに待っているぞ。」

ようやく(しぶとく居座っていた)DIOは完全に光に飲み込まれ
姿を消し、辺りがシンと静まる。
そして辺りから「YOU WIN!」と言う声が響き
ジョルノの勝利を知らせた。
そのご褒美だと言わんばかりに何故か体に衣服が戻る。
ジョルノは疲れた(主に精神的に)体を引きずりながら
ようやく仲間の元へ戻った。
そして早速ジョナサン達にこの不思議な出来事を報告すると
なんとジョナサン達も同じ目に遭ったという事を知る。
その時のディオ(DIO)の恐ろしさを体験した
ジョナサンや承太郎に「汚されなくてよかったね。」とか
「ケツは無事だったか?」などと心配され、
今になってようやくジョルノは真の恐怖で体が震えたという。









後書き

何故、第五全裸対戦が二つも?ということなんですが
元祖の第五次全裸対戦の書き直しがどうしても不可能だった・・
それがたった一つのシンプルな理由です。
ピクシブさんで見てくれている方は知っていると思いますが
第一次から第三次までは書き直して、すでに出しています。
でもどうしても第五次だけは書き直しが出来ませんでした。
(てゆうか、どこから手を付けていいのやら本人にもよくわかりません。)
しかしこのまま出してしまうと、やたら長い、やたらくどい、まとまりが悪い
という欠点だらけが目立ってしまいそうなので、それなら全く新しい
話にした方が早い、と思って新バージョンを書きました。

元々はディアボロとジョルノの全裸対戦をかきたかったのですが
ディアボロの他人への執着心の無さの為、
ジョルノとくっつけられず保留となっていました。

何がきっかけがあればと思った所に、アイズオブへブンでの
「親対子供」ネタを見つけ、しかもディアボロはジョルノに
ひどい目に遭っていて、仕返しをしたいという「執着」もある。
これならいけるかなと思って書いてみました。

でも結局はまだ慣れていないので、
DIOジョルが多めになってしまいましたが、
そこは勘弁してやってください。
(親子、好きなんで・・・つい・・・。)




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