休憩室から離れた承太郎はジョナサンの自室の前にたたずんでいた。 自室の中から声はしないものの人がいる気配は感じる。 しかし承太郎は無理に開けようとはせず ジョナサン自ら開けるように説得を試みる。 「・・・副院長いるんだろう?」 真面目な承太郎の様子にジョナサンも無視できず、素直に返事をする。 「・・・・・・うん。」 「あんたは俺やみんなの本当の気持ちが判っている 筈だろうから、いまさらごちゃごちゃいう気はねえ。 だから単刀直入にいうが、休憩室に来てくれ。 院長が来てる、ジョセフとジョルノがセクハラ 攻撃されて困っているぜ。」 「う・・・判った。すぐ行くよ。」 変にフォローするよりも、仲間思いの優しいジョナサンには この言い方が一番効くだろう。 卑怯な方法で申し訳ないと思いながらも承太郎は あえてジョナサンに「脅し」をかけたのだ。 案の定「脅し」は効いてジョナサンが部屋から出てくる。 二人は相槌を打つと、早速休憩室へと足早に向かっていった。 ふわムチジョナサンの憂鬱 後編 一方ジョセフとジョルノはDIOのセクハラ攻撃に 必死になって抵抗していた。 口が達者なジョセフではあるが、相手が相手なだけに かなりの苦戦を強いられていた。 「院長、男なんか抱いたって硬いだけだろ?」 「硬い?俺に硬いと言わせるものなどないに等しい。 ついでに俺に重いといわせる物もな。 俺に硬いと言わせたいならオリハルコンでももってこい。 俺に重いといわせたいのなら山の一つでも持って来い。 もう柔らかいばっかの女は飽きてな・・・ なんていうか抱き応えが足りないんだ。 もっとこう弾力のある体を思い切り 抱きしめて事に及びたいのだ。 だからジョナサンが最高なのだが あいつは今いないし・・・・、なあ?」 なあ?と言って自分を見るDIOに気まずさを感じるジョセフ。 ジョナサンに近い体型なのは、DIOを抜かせば自分だ。 承太郎も逞しいが、やはり自分の方が年上なだけあってムッチリしている。 「要するに溜まっているんですね、判ります。 でもそれとこれとは話は別だけど。」 「父さん、不埒ですよ。伴侶以外の人と あそびたいなんて。」 困り始めたジョセフを見かねたジョルノが父を咎める。 他の二人と違い、逞しいというほどでもないジョルノには 少し心に余裕ができたようだ。 完全に自分は蚊帳の外になったとでも思っているのだろうが DIOは別に逞しい男が好きだという訳ではない。 ジョースター一族が好きで、息子と妻が好きなだけなのだ。 肉付きのことなどおまけに過ぎないだろう。 「なら伴侶じゃないお前らの恋人との セックスも不埒な事になるのか。」 「恋人は伴侶も同じだよ!大人のくせに あげあし取る気かよ!」 「ほう?ジョルノ、お前もそう思うのか?」 「・・そ・・そうです!僕だって・・そう思います!」 まさか自分に急に話を振ってくるとは、 露程思っていなかったジョルノは完全に出鼻をくじかれる。 ジョセフとは違いなんとなく歯切れの悪い ジョルノの言葉にDIOの加虐心がヒートアップする。 ジョナサンもそうだがジョースター一族はみんなそうだ。 言動や行動はとても男らしいが、恋や色事に関しては まるで乙女のように純情で初々しい。 ジョナサンでさえDIOの物になった今でも まだしぶとく恥じらいを持っており、スムーズに エッチをさせてくれない要因の一つになっている。 「そうか、じゃ、お前らはセックスに関して熟知 しているのだな。丁度良かった、実は今研究している 内容は同性のセックスについて関係のある内容なんだ。 よし、参考までにお前らに聞こうとするか。 まずジョルノ、教えてみろ、お前はどうやって 抱かれるのだ?バックからせめられるのか? それとも・・・。」 耳元にねっとり囁きかけるように尋ねると、 顔を赤くしてジョルノが飛びのく。 元々素敵ボイスな持ち主のDIOに囁かれると たいていの人間は動揺してしまうだろう。 内容が内容であるし、その上相手が初心な人間なら尚更だ。 「最低です!!そんなこと聞くなんて!! そもそも僕は彼とはまだそんな関係では!!」 「やめろよ!子供にそんなことを聞くなんて 非常識だぞ!!」 「当たり前だ、今のはからかっただけだ。子供のくせに 大人びた言い方をするから懲らしめてやっただけだ。 いいか?ジョルノ。肉体関係を持つのは結婚してからだぞ? できちゃった婚なんて絶対許さんからな。」 「いや・・・頑張っても出来ないでしょ・・・。 男同士なんだから・・・。」 いつもの調子で突っ込みを入れるジョセフだが DIOの視線がジョルノから自分に映りドキンとする。 そして予定通りの質問が彼を待っていた。 「じゃ、次はジョセフだ。質問に答えてもらう。」 「俺っすか!?拒否します!! 個人情報(プライベート問題)なんで!!」 「答えないと質問が拷問に変わるぞ?」 「彼のセリフパクらないでください!!」 「DIO!!いい加減にするんだ! 大体研究はどうしたんだい!?」 この時遅く、かの時早くジョナサンが登場。 あたりに巻き起こる歓声。(でも二人。) 「神様来たーーー!!」 「うむ・・・実は行き詰ってしまってな ムシャクシャしたんで皆をセクハラして苛めて ストレス解消をしていた。それだけだ。」 「最低です!」 「全くその通りだよ!みんなごめんね。 僕とDIOが迷惑をかけて・・・。」 まるで悪い事をした子供を謝らすようにジョナサンは DIOの頭を力づくで下げさせる。 案の定彼は、てこでも動かす気はないようだが。 反省するどころか偉そうにふんぞり返る。 「反省しろよ。」 「あんたがだよ!!」 反省すべき人間が反省せず、何も悪くないジョナサンが謝る。 いつもの光景に呆れつつもジョセフ達はジョナサンにケーキを勧める。 「副院長、うまいぜ?食いなよ。」 「本当においしいんですよ?ここのケーキ。」 二人が差し出すケーキにごくりと唾を飲み込むも ジョナサンはいいよと拒否をする。 食べたい気持ちが儘ならないのだろうが、これを機会に断れなければ いつダイエットするのだろう。 明日明日で失敗するのはダイエットのお約束だ。 承太郎はそんなジョナサンの心情をくみ取っているのか 黙って成り行きを見守っている。 ジョセフもジョルノもジョナサンの我慢したいという気持ちもわかるが なんとか好物のケーキ位食べさせてやりたいようだ。 お互い顔を見合わせながら困っていると、意外にもDIOが 二人からケーキを取り上げ、ジョナサンの前に差し出す。 「くえ、ジョナサン、我慢するな。」 「DIO・・ぼ・・僕に勧めないでくれ。 皆から聞いてなんとなくわかっているんだろう?」 「別にいいではないか、太ったら夜の運動を ハードにするだけだから。」 「絶対食べない!!ぼ・・僕は仕事に戻るから!!じゃあ!」 幸か不幸か、今のDIOの言葉で消えかけていたジョナサンの 決意に火が付いたらしい。 気まずい雰囲気の中、DIOだけが首をかしげている。 「何か気に障ること言っただろうか。」 「まずみんなの前で「夜の運動」ッつたのがマズかったんじゃねーの?」 「俺は夜の運動をハードにするって言った所が 精神的に負担がかかったんだと思うぜ?」 「父さん、謝る・・・のは無理だとしても フォローし直すなら今ですよ?」 皆に責められDIOは仕方なくジョナサンを追いかける。 そして医務室にいるジョナサンにぐいと詰め寄る。一方ジョナサンは また自分をくじきに来たのかと思い、DIOにかみついた。 「DIO!!なんどいっても僕は意思を変えない! 僕はやせるんだ!!」 「そんなに痩せたいのか?」 「ああ!!絶対に痩せてみる!!」 DIOに負けないくらいの気迫でジョナサンは宣言する。 DIOとしては今の体型のジョナサンでもなんら問題はないので 別に痩せようが?せまいがどうでもいいのだが 夫として頑張る妻を何とか応援してやろうと、ジョナサンにエールを送る。 「よし!わかった!お前の好きにしろ!」 「DIO・・・わかってくれたのか?」 「それどころか協力してやろう。」 「ありが・・・って・・・さっき言った 夜の運動の強化ならいらないぞ!」 「いや・・・ダイエット中に夜の運動の強化は危険だ。 だからこう変更しようと思う。 お前がダイエットをなまけ、体重がまた戻るようだったら 有無を言わさず夜の運動の強化だ。どうだ?やれるか?それとも 自信がないからこの勝負避けるかな・・・?」 馬鹿にするようにDIOに口元を歪められ、 ジョナサンの闘争心に火がつく。 伊達にジョナサンと何年も過ごしてないだけあって、DIOには ジョナサンの扱いはお手の物だ。 「い・・いいだろう受けて立つ!!」 「よく言った、じゃ今この時からダイエットの始まりだ。」 DIOの挑発にまんまとのせられたジョナサンだったが 後々ダイエットの過酷さを思い知ることを全く予期できないでいた。 取り敢えず早速情報収集とばかりにジョナサンは ジョルノにいいダイエットはないか聞いてみた。 「どうしたら君みたいに細くなるだろう。」 「僕は、皆さんより筋肉がない分細いだけなんです。 それにしつこいようですが、母さんは太ってないですよ? 身長もありますし、筋肉もありますしそれ相応だと思います。」 「でも、承太郎は・・・・。」 そう言われてジョルノも考え込む。 確かに承太郎はジョナサンと同じ背丈だ。 ジョナサンには少し劣るが筋肉もついているし、腕も立つ。 でも彼は背こそ高いが自分と同じ少年だ。 成人男性のジョナサンと比べたら体重はどうしても少なくなる ものではないだろうか。 それに彼の食の好みも「さっぱり系」に偏っているし、 ジョナサンと違い彼は脂肪の少ない和食生活が長かった。 それが彼の身が細い事の所以だろう。 しかし同じ身長でもジョセフはどうだろう。 それに承太郎とは対照的にジョセフは脂っぽいものが好きだ。 でもジョナサンとは八キロの差がある。 しかし彼は面倒臭がりのようで意外に多動だし やはりまだ、育ち盛りだからという事でカロリーが成人男性より 飛びやすくできているのだろう。 無論ジョナサンもまだまだ若い、しかし成長期と大人では カロリーの消費量が違うのだろう。 年を取るほど太りやすくなり痩せにくくなる。 年より扱いしたくないが、自分たちとはまず、カロリー消費量が 違うという事を教えて安心させてあげたい。 「母さん、僕たちは育ちざかりなんです。だからいくら食べても 勝手にカロリーが飛んでいくんです。僕たちと比べるのは 間違いですよ?」 「お前二十一歳を年より扱いする気か?」 いきなり頭上から口出しされ、驚いて見上げると いつの間に来たのかDIOがジョナサンとジョルノを見下ろしていた。 「父さん!何しに来たんです!」 「勿論ジョナサンが間食してないか見に来たんだ。 俺もジョナサンに協力してやるといった手前 ただ傍観だけする訳にはいかんからな・・・。」 そう言って小脇に抱えた体重計をジョナサンに差し出す。 乗って見ろというのだろう。 ただ、ジョナサンもダイエットすると言い張った手前 断るわけにはいかない。昨日から間食はしていないので たとえ減っていなくても増えてはいないだろう。 おそるおそる足を乗っける、皆が固唾をのんで見守る中 針だけがカラカラと小さく音を立てる。 「・・・・・え?」 「・・・ニヤリ・・・・」 ジョナサンの顔が青ざめる、体重が昨日より増えているのだ。 と言ってもたかが一キロ程度だが、夕飯を減らし 大好きなケーキを我慢して何故こうなるのだろう。 ジョナサンは慌ててきている衣服を脱ぎだしていく。 「上着着ているから・・・あ・・シャツも脱ごう・・・。 べ・・・ベルトって結構重いんだよね・・・の・・・乗り方も 少しおかしいかな?」 「そうだな、パンツも脱いだ方がいいんじゃないか? その方が罰ゲームをするのにはてっとり早いからな・・・・。」 「そ・・・そんな・・あれほど空腹に耐えたのに・・。」 ジョナサンが泣き出しそうな顔をしてその場にしゃがみこむ。 余りにもその姿がいたたまれなくてジョルノがすかさずフォローに入る。 「待ってください!父さん!昨日の今日で体重を減らすなんて 容易な事じゃないんです!!」 「減らないのはまだいい・・・しかし増えているとはどういうことだ?」 「それはその・・・だって母さんがダイエットし始めたのは 昨日の夕方からじゃないですか!増えたのは朝と昼を 食べ過ぎてしまったせいかもしれません。 でも、それは宣言する前だから無効なはずです!」 「ふむ・・・確かにお前の言う通りだ、ジョナサン良かったな 今日はノーカンにしてやる。」 ジョナサンは二人の言葉も耳に届いていないのか うなだれたままピクリとも動かない。 DIOのエッチ強化よりも食べたい気持ちを我慢したのに 全く無駄だったことが余程こたえたようだ。 ジョルノが傍により落ち込んでいるジョナサンを慰める。 「母さん、ダイエットは頑張っても増えるときや 変わらない時って結構あるんです。気持ちが強ければ強いほど ショックが大きくて、みんなそこで挫折してしまうんです。 リバウンドだって怖いですからこうゆうのはゆっくりと 無理をせずやるのが一番なんです。」 「うん・・・有難う・・・。」 「僕も協力しますから・・・。」 「そういえばジョルノ、お前体重は? ちょっと計って見ろ。」 さっきからジョナサンとジョルノのやり取りを見ていたDIOは 何故かジョルノに体重計を勧める。 彼は痩せているので必要ないし、ジョナサンの手前で計るなんて 嫌味のようで嫌だったので一度は断った。 しかし体重計が正確か確認したいという事で 渋々乗ることになる。 ジョルノは勿論自分の体重は知っているので特段驚かないが 以前のジョルノの体重を知っていたDIOはわざと目を丸くする。 「お前も増えているな・・・。」 「ええ、だから僕もダイエットしようと思ってます。」 「しかしジョナサンと同じで少しだけだな、服を脱いでみろ。 無論パンツ込みだ。」 ※ただ今G・E炸裂中、しばらくお待ちください。 「全く、アイツは冗談の分からん奴だ、お前そっくりだ。」 頭に出来たデカいコブを擦りながらDIOはジョナサンにぼやく。 「彼がもし本当に脱いだらどうするんだい?冗談だで済ますのかい?」 「済ますわけないだろう?据え膳何とやらだ。」 「全く君って男は・・・。」 いつも通りのDIOにため息交じりで呆れるジョナサンだが それ以上はDIOを責めようとせず力なくトコトコと歩く。 攻撃する力も出てこないのだろう、そういえば今日の彼の朝食は 食パン一枚とコーヒーだけだ。 食の細い人間はそれだけで事足りるのだろうが、ジョナサンのような 大きい体の人間には間食ですらないだろう。 覇気のない背中を眺めながらDIOはジョナサンを医務室まで見送った。 ところ変わって休憩室では丁度昼食の時間という事で ジョセフと承太郎は昼食を食べていた。 いつもよりがつがつ食べているジョセフに承太郎はため息を漏らす。 「副院長がひもじい思いをしているのによく食えるな・・・。」 「馬鹿やろう!だから食うんだよ!」 口いっぱいに食べ物を放り込みながらジョセフが睨みつける。 どういう訳か聞くと、間食をしないように 今のうちたくさん食べておこうとしているのだという。 確かに菓子など置いておけばジョナサンの目の毒になるのは明らかだ。 「おめーにしては考えてんな・・しかしもっとゆっくり食えないのか? 早食いは太るぜ?」 「一言余計なんだよ!早く食わねーと それだけ匂いが残っちまうだろ?お前もちんたら食ってねーで とっとと食ったらどうだ?」 そいいながら最後の一口を放り込むとどこから持ってきたのか ファブ○―ズを手に取る。匂いを消してやりたいのだろう。 だが承太郎はまだ食事中だ、迷惑そうな顔でジョセフを睨む。 「おい!まだ飯食ってんだぜ?ちっ・・・すぐ食うから もうちょっと待てよ・・・。」 少し神経を使いすぎだが、ジョセフのいう事も一理ある。 承太郎は残りの食事をかきこむように食べるといそいそと後始末を始めた。 そしてその十分後青白い顔でジョナサンが入ってくる。 「みんな・・・お疲れ様・・・ご飯は?」 「も・・・もう食ったぜ?副院長はこれから?」 「ん?ぼく?もうだべたよ?ちょっと用事が あったから来たんだ。」 そういいながらフラフラした足取りでロッカーをゴソゴソと探る。 この調子では、食べたと言っても少量だけなのだろう。 食べるのが好きなジョセフはジョナサンの気持ちが痛いほどわかるのか 一生懸命にフォローを入れる。 「ふ・・・副院長?ダイエットは気楽に・・・な?」 「え・・・?何か言ったかい・・・?」 ジョセフは小さい声で言ったわけでもないのに ジョナサンには聞こえなかったようだ。 食べすぎも注意力散漫になるが、食べなすぎも集中できないものだ。 「あ・・・あったあった・・・。お邪魔したね?ごゆっくり・・。」 力の無い笑顔を二人に見せ、ジョナサンは休憩室から出ていく。 彼のいなくなった部屋には気まずい雰囲気だけが漂っていた。 そして夜・・・。 時間が空いたのでジョナサンは気晴らしにテレビでも見ていた。 しかしダイエットをしている時に限り、うまそうな料理の番組が多い。 しかしジョナサンはチャンネルを変えることもなく、 ただじっとモニターを見ていた。 「よくそんなもの見れるな。」 「見たからって体重は増えないだろう?」 背後から口出しするDIOに少しだけ口を尖らせながらも ジョナサンはなおも取りつかれたようにモニターを見続ける。 ジョナサンはうつろな表情のまま、勝手に自分の隣に移動した DIOに質問をする。 「ねえ・・DIO・・・エッチの強化って 具体的にどんなことをするの・・・?」 まさか堅物ジョナサンからそんな質問が出てくるとは意外だが DIOにはなんとなくその理由が分かっていた。 多分ジョナサンは限界なのだろう。 多少のエッチ強化なら我慢してでも何かを食べたいのだ。 「そうだな・・・取り合えず血管プレイでもしようかと・・。」 「け・・・血管プレイ!?なんか痛そうな響きだけど何それ!」 「心配しなくてもお前の血管をどうこうする訳ではない。 使うのは俺の血管だ。」 「・・・・?」 一生懸命考えるがジョナサンにはグロい光景しか浮かんでこない。 DIOはいつの間にやらジョナサンに近づいて肩を抱き ジェスチャー付きで細かく教える。 「何、深く考えることはない。おれの血管が自由自在に 動かせることは知っているだろう?その血管を使って お前の○○○に差し込んで○○○して・・・・。」 「ギャース!!嫌だよ!そんなことしたことないし! そんなとこにいれるなんて痛そうじゃないか!!」 「そんなことはない、それ用のバイブだって売っているんだぞ? 痛かったらそんなもの売らないだろう?気持ちいいから売るのだ・・。」 「う・・・・。」 「俺はお前に与えたいのは快感だけだ・・・痛みなどではない。」 悪魔のささやきがジョナサンを襲う。 今のジョナサンにとって一番苦痛なのは空腹だ。 羞恥に対してまだ抵抗は残っているものの ジョナサンとて快楽が嫌いという訳ではない。 揺らぐ心、かたむく天秤。 しかしそんな迷いを打ち消すような背後からの助言が ジョナサンの心の弱さを一蹴する。 「単にSM用かも?」 「俺の知り合いの爺さまが尿道カーテル入れたことが あると聞いたことがあるが、かなり痛いらしいぜ?」 「や・・・やっぱりさっきの話忘れてくれ!!」 いつから聞いていたのか知らないがジョセフと承太郎が 血管プレイにケチをつけたのだ。 聞かれていたことの恥ずかしさもあるが 「痛い」などと聞かされれば「M」でもなければ 誰だってやりたくないだろう。 ジョナサンは顔を赤くして医務室から飛び出す。 ジョセフと承太郎は走り去るジョナサンを心配そうに見ていたが 不意に感じる背後からの殺気に思わず振り向いた。 「・・・お前ら・・・よくも言ってくれたな? しかもただの憶測で・・・。」 「あ・・・あんただって憶測で気持ちいいなんて言ってるけど 本当は判らないんだろう!?」 かなりご立腹の様子のDIOの気迫に流石に気後れしたのか 二人は部屋から逃げようと後退を始める。 しかし案の定彼のスタンドが、逃がすまいと出口を塞ぐ。 「ああ・・・お前の言う通りだ、だから今から実験だ。 被験者はお前ら二人、 感想は言わなくてもいい・・・。 お前ら二人の悲鳴から俺が判断してやる・・・。」 DIOはそう言うや否や、自分の両腕あたりに深く切り込みを入れる。 その中からにゅわにゅわと血管が飛び出し 二人を包み込むかのように蠢く。 「マジですかい!?」 「だからこんなタイミングであんな口出しすんな って言ったんだ!」 ジョナサンを助けるために来た二人だったが 早々に他の助けを求めることになろうとは思わなかっただろう。 ジョルノに助けを求めるも、それだけでは足りなくて 結局ジョナサンも呼んで何とかDIOを撃退した。 「みんなごめん・・・・僕のせいで・・・。」 ハアハアと息を切らしながらジョナサンは申し訳なさそうに謝る。 当たりの壁を血まみれだ、血管で攻撃をされたのだ。 自分の血でなくても血まみれになるだろう。 「いや・・・俺たちが悪かったんだ。 まさか院長がここまでキレるとは・・・。」 ジョセフが頭をかきながら辺りを見回す。 まわりは血まみれなだけでなく、いろんなものが壊れ、拡散している。 DIOが大暴れして手当たり次第攻撃したのだ、 部屋が半壊しないだけでも奇跡だ。 それで当の本人はどうしたのかと言うと 床に大の字になってうつ伏せに寝そべっている。 正確に言えばきぜつしているだけなのだが、未だに目は覚めない様だ。 「皆さんは何も悪くないです、父さんだけが悪いんです。 人の気持ちも考えないで嫌がらせばっかりするんですから。 ここは僕が片付けます、みんなは現場に戻ってください。」 「ジョルノ!僕も片づける・・・だからみんなは・・・あれ?」 勢いよく立ち上がるジョナサンだったが突如ぐらりと体制を崩し DIOの体の上に崩れ落ちる。 幸運なことにまだDIOは気づかない様だ。 「副院長!大丈夫か!!」 「母さん!極端に量を減らすのはダメです! 体にも負担がかかりますし、精神だって参ってしまいます!」 ジョセフとジョルノが慌てて駆け寄る中、さっきから押し黙っていた 承太郎が重い口を開く。 「・・・副院長・・・。ダイエットはな・・目的によって やり方を考えなければならねーんだ。よく女優や俳優が 役を演じる上で無理やり痩せたりするが、あんたは違うだろ? 食いすぎからくる病気で緊急にやせなければならない場合は 無理なダイエットもしなけりゃならねえが、あんたは違うだろ? そもそも、誰かに痩せろと言われたのか?」 「え・・・?そ・・・それは・・・。」 「はっきり言うが、俺は別にあんたが無理に痩せようとする必要は 全くないと思うぜ?皆だってそう思っているはずだ。」 承太郎がジョナサンを責める。 彼の気遣いが窺い知れる優しい責め方でジョナサンを咎める。 もごもごと口ごもるジョナサンにジョルノやジョセフも 自分の思いを正直に彼にぶつける。 「・・・僕も承太郎さんと同じ意見です。 僕は今のかあさんで十分だと思います。 いいえ・・・いつもの通りの母さんが好きです。」 「そうだよな、俺もだよ。食いたいもんを堪える副院長は確かにスゲーよ。 俺なら絶対無理だわ。食うなって言われたって食っちゃうね。 でもよ、そんな副院長見て偉いと思うより、なんかスゲー 可哀想って思っちまう。ダイエットってさ、やってて楽しい奴が やればいいと思うんだよね。やってて苦しみしか感じないのなら 止めた方がいいと思う。」 ジョナサンは皆の言葉になにも言い返せない。 皆のいう事は全て的中しているし、 こんなにもみんなに心配をかけていたことがショックだった。 そしてみんながなによりも望むのは、今のままのジョナサンでいる事。 皆の気遣いを押し切ってまで痩せる必要があるのだろうか。 固い筈の意志が音を立てて壊れていく。 その時ジョナサンの下からくぐもった笑い声が聞こえてくる。 「ク・・・ククク・・・青臭い・・・ ホントに青臭い奴らだなお前らは。てゆーかお約束乙。」 DIOはゆ笑いながらゆっくり立ち上がると、まるで見下すように 周りにいる皆を眺める。 いつから目が覚めてたのか判らないが一部始終を聞いていたらしい。 「もう目覚めたのかよ!相変わらずライフゲージ半端ねーな!!」 「何か文句あるのか?俺たちは素直に自分の気持ちを 打ち明けただけだぜ・・・?」 「DIO・・・僕は・・・僕はどうしたら・・・。」 「フン・・・この根性なしめ・・・もう諦めるのか・・・。」 「く・・・・。」 きっと呆れられる、馬鹿にされる、ジョナサンはそれは覚悟していた。 あれだけ高々と宣言したのに、それを二日も 立たないうちに止めようというのだ。 馬鹿にされるだけでは済まない、何か新たな ペナルティが待っているだろう。 何を言われても、仕方ない事だ、何をされても我慢するべきだ。 ジョナサンは観念してグッと押し黙った。 しばらくしてDIOの鼻が鳴る。 ああ、呆れられたな・・・次は何を言われるだろう・・ そう思い、顔を上げると、さっきとは打って変わって、 まるでいたわるようなDIOの顔がそこにあった。 「全く仕方のない男だ・・だがな。俺は食い物をうまそうに食っている お前を眺めているのは結構好きだ。」 「え・・?」 「まるで抜け殻のように静かにしているお前より ガミガミと小うるさく、俺にしょっちゅう抵抗する お前の方が俺は好きだ。」 「DIO・・・。」 そう言いながらDIOはジョナサンの両手を握る。 見つめあう二人・・わだかまりが解ける瞬間。 よくあるお約束な展開にジョセフは承太郎に耳打ちをする。 (お約束なのは院長の方だよな!!) (いいんじゃねーか?こういうお約束ならよ。) どうやらジョナサンのダイエット計画はこれで正式に終わりを迎えたらしい。 ジョルノは心から安堵すると、ポケットからなにやらゴソゴソと取り出す。 「あの・・・これ二人で行ってきてください。」 ジョルノはそういうと二人に食事券を渡す。 高級ホテルの食事券だ。 どうしたのかと尋ねると、ブチャラティに 「両親にあげるといい」と言われプレゼントされたものだという。 その申し出にジョナサンは遠慮するが、代わりにDIOが快く受け取る。 「貰っておこう・・・さあ、食いに行くかジョナサン。 残したりしたら承知せんぞ?」 「う・・・うん!た・・食べるぞー!!」 ジョナサンはグスっと鼻をすすると着替えるために身支度を整える。 そして最後にジョセフ達に向かって「有難う」と囁いた。 「皆さん本当にありがとうございます。」 ジョルノは部屋を片付けながら、ジョセフ達に礼を言う。 承太郎はそれを手伝いながらジョルノに返事をする。 「ああ・・だが、俺たちは特別なことはしてないぜ。 自分の素直な気持ちを打ち明けただけだ。」 「カッコつけ、乙。お前のそういう所、院長にそっくり。」 「素直じゃないっていいてーのか?お前にそのまま返すぜ。」 「まあまあ、今日はめでたいですから、喧嘩は止めましょう。」 再び睨みあう二人をジョルノはなだめる。 折角穏やかな気持ちで一日を終えようとしているのだ。 一日のおわり位笑顔で過ごしたい。 その時忘れ物をしたのかDIOが途中で戻ってくる。 「いかんいかん、忘れものだ。ん?部屋を片しているのか? 感心だな、お前らにしちゃ。」 「さも俺たちが片付けるのが当たり前のように言わないでくれる? そもそも誰がこんなにしたか覚えていないのかね?」 DIOの偉そうな態度にカチンときたジョセフが憎まれ口をたたく。 それがきっかけになったかは知らないが DIOはもう一つの忘れ物を思い出す。 「おお、そうだったな。実験がまだだったな。 帰ったら再び実験するからお前ら二人は起きているように。」 「え・・・?Σ(゚д゚lll)」 「実験ってなんですか?」 途中から乱闘を止めに入ったジョルノには 何で父があんな状態だったか今でもよくわかっていない。 教育上悪いからという理由で、二人はあえて黙っていたのだ。 「お前にはまだ早い、色々体験していく過程で どうしても望むのなら今度参加させてやろう。 では、引き続き頼むぞ?」 闇スマイルをかましながらDIOは再びジョナサンの元へと戻る。 状況が呑み込めていないジョルノとは対照的に たったさっきまで被験者だった二人は、思い切り顔を青くする。 「よ・・余計な事いいやがって・・・!!」 「やっぱり院長、イイとこねーー!!」 静かな病院に二人の悲痛な叫び声が四方にこだまする。 その後うまく実験から逃げれたかどうかはまた別の機会に。 終 戻る |