「ファ・・・・」
不意に耳に響くジョナサンの目覚めを知らす声。 寝癖のついた頭をかきながらムニャムニャと 辺りを見回す。 そして寝起きの第一声が「ここはどこ?」だ。 全く・・・お前は迷子か。 「まずおはよう、ダーリンとかいったらどうだ?」 「ダー・・・なんだって?朝っぱらからきついジョークは 言わないでくれ・・・確かに目は冷めるけど・・・。」 確かに半分ジョークで言ったが、ダーリンと言わないまでも 「おはよう、DIO」といいながらキスの一つでも してくれればいいものを・・・ツンデレめ。 とにかくジョナサンが疑問に思うことを 全部教えてやらねばならんようだな。 俺はジョナサンにかいつまんで説明する。 ここは病院で、新しい俺たちの仕事場だという事。 しかも警備員のようなガードマン的な役割ではなく 医師兼警備員だという事。 反応は思った通りだ、信じられないというような 顔で俺を見つめている。 「正気か!?医師免許は?医療知識は? そりゃあ、エリナに少しは医療の事を 教えてもらった事があったけど、僕何も出来ないよ? それとも今から勉強して・・・。」 「少し落ち着け、医師免許など必要ない。 医療知識も最低限あればいい。 お前・・確か回復の波紋が使えたよな?」 「そ・・・そりゃ使えるけど・・・・。 それで全ての病気が治せるなんて 思わないだろうね?」 「お前の子孫達も、治癒だの、精神安定だのの 能力を使いこなせるらしい。 それにこの俺も・・・そうだな承太郎も 悪い菌等を消滅させたり体内の異物を 取り除いたりする事ができる。 ・・・どうだ?完璧ではないか?」 「そんなうまいこといくかい?それに どうやって医師免許も持たないような医師のいる 病院をはやらせるんだい?下手すれば 法律とかに引っかかって・・・・。」 ジョナサンが不安そうな顔で俺を見る。 やはりすんなりと話が通るわけないか、まあ無理もない。 面倒くさいがもう少し説明するか。 「そこは問題ない、俺が政府と話をつけておいた。」 「君が政府と!?脅したんじゃないだろうね!? いつ話したの?それに幾らなんでも短時間で 話が進みすぎじゃない?」 「俺が過去を移動できる事を忘れたのか?」 「そ・・・そういえば・・・。」 ジョナサンにとってはたかが半日なのだろうが 過去を移動できる俺にとっては一週間くらいかけての事だ。 その一週間で全ての下調べと準備を終わらせておいたのだ。 流石俺とほめてやりたいところだ。 本当ならジョナサンが褒美をくれてもいいのだが こいつはそういうところは気が回らないからな。 まあそこもいい所なのだが。 それとジョナサンが言った「はやらせる」のことだが それは全然心配ない。 何故ならば俺たちが請け負う患者は「警察病院でも 手が余る極悪人共」だ。 そりゃ政府も喜んで協力してくれるだろう。 この病院もタダで貰い、患者は勝手に送られてくる。 医療器具も薬品も全てタダだ。 まあしいて言えばここのスタッフ集めだが、 一般のか弱い人間など役に立たない。 だからこそ、俺の息子やジョナサンの子孫たちの手を 借りたいというのだ。 俺の考えをすべてジョナサンに伝えると、 ジョナサンも渋々ながらも納得する。 まあ、納得できなくてもこの計画を押し通すつもりだがな。 早く全てを終わらしてお前とイチャイチャしたいのだ。 こんなくだらない言い合いをいつまでも続けていたくない。 俺たちは朝食を食いに行く前に息子たちに 会いに行くべく、支度を整えた。 {始まりのお話 後編} そうそう言い忘れていたがこの世界には ジョルノも、ジョセフも承太郎も 年の差はあまり変わらない親戚同士として 存在しているパラレルワールドで それぞれ過酷な運命に翻弄され強敵と戦い 生き延びることができた強者たちだ。 だがジョルノは俺とジョナサンの息子だし 承太郎とジョセフはジョナサンの子孫であることは変わりない。 一つだけ違うのはこの世界に俺たちは本当は存在しない事だ。 ジョナサンは俺と共に生き、俺と共に死んだのだから その事実は変わりない。 ふっ・・俺たちはなんというロマンチックな運命なのだ。 当の本人はうまそうにサンドイッチを頬張っていて ロマンのかけらもないがな。 でもおまえはそこが魅力的なのだ、気にしなくていい。 まず最初は俺の息子に会いに行こう。 俺たちは朝飯をすませると息子のいるイタリアへ飛ぶ。 息子は町でかなりの有名人で、居場所はすぐに見つかった。 息子は誰かの墓参りに決まった時間に現れるという。 その時間帯を狙い、俺とジョナサンは墓地へと向かう。 町はずれにある綺麗な墓地でコートに身をくるんだ 金色の髪をもつ少年が俺の息子だ。 息子は墓地をじっと見つめている。 それを見てふと思い出す、俺も親父の墓を見つめていたことを。 しかしその時の感情は悲しみなどではなく 憎悪しかもっていなかったがな。 「DIO・・・あの子きっと悲しいんだと思う。 無表情のように見えるけれど、僕は感じるんだ。 あれは誰か大事な人のお墓なんだよ・・。」 ジョナサンがいつまでも黙ったまま立ち尽くしている 俺の肩を揺さぶる。 そしていてもたってもいられなくなったのか 声をかけるため息子の傍による。 まったくあのお節介めが、面識のないあいつが 会いに行ったところで怪しまれるだけだと言うのに。 「・・・・それは誰のお墓だい?君の親しい人かい?」 ジョナサンは静かに近寄り息子の背後から声をかける。 幾ら人当たりがいいジョナサンが相手でも 見ず知らずの男に話しかけられれば 当然怪しむだろう、息子は少し警戒しているようだ。 「・・・・え・・・・貴方は・・・?」 (・・・ホラ見ろ、どうこたえる気だ。) 「僕の名前はジョナサン・ジョースター。 君と同じ、体に「星」を持つものだよ。」 ジョナサンは優しく微笑むと自分の肩に手を置く。 その仕草でどうやら「星」の意味が息子にも 伝わったらしい、つられるように自分の肩に手を当てている。 「星・・・?まさか・・・いえ・・・貴方は 写真とはまるで違う・・・でも・・・。 あの・・・貴方はディオ・ブランドーと言う人を しっていますか・・・?」 そういって懐から写真を出す。 ジョナサンはそれを受け取るとにっこりと微笑んだ。 「もちろん、だって彼は僕の・・・。」 「・・・亭主だからな。」 「DIO!!えーーーと、今のは彼のギャグなんだ。 気にしないでね!はははは。」 ジョナサンが思い切り苦笑いをしながら いきなりわって入って来た俺を小突く。 しかし息子はそんなジョナサンのフォローも 耳に入っていないのかただひたすら俺を凝視する。 ジョナサンの瞳の色と同じ青い目が、 俺を余すとこなく見つめる。 「・・・ジョルノ・ジョバァーナ・・・だな。」 「・・・あなたは・・ディオ・ブランドー・・・ 僕の父で・・・間違いないんですね。」 「ああ。」 「・・・DIO・・僕向こうへ行っていようか?」 ジョナサンが空気を読んだのかその場を離れようと したので俺はすかさず腕をつかんで引き止める。 「行く必要はない、お前も親だ・・・。そうだろう?」 「・・・それは・・どうゆうことですか・・?」 ジョルノがいぶかしげに俺を見る。 確かにそんなこと言われても普通は意味が判らないだろう。 だから俺は出来るだけ細かく真実を息子に伝える。 俺がジョナサンの体を貰いその体で息子を作った事。 俺が息子の元へ今まで戻ってやれなかった本当のわけを。 一通り話し終わると息子は黙って俯いていた。 後はこいつの心しだいだ。 信じるか信じないか、俺達についてくるか来ないか。 「・・・ジョルノ・・・いままで、ゴメン。 でも・・・彼を許してあげてくれないか? 彼もお父さんからの愛を知らないんだ。 それに元から不器用な人でね・・・・。 勿論そんなの言い訳にならないって判っているよ? でもね、彼これからは君を愛したいって言ってる。 虫のいい話かもしれないけど・・・信じてくれないか?」 俺が何も言わないのにやきもきしたのか ジョナサンが勝手に息子を説得する。 そして労わるように優しく抱きしめると その背中をぽんぽんと叩いた。 息子は暫くジョナサンになすがままにされていたが ようやく顔を上げその重い口を開く。 「判りました・・・本当は僕を捨てた父さんのこと 正直許せないって思っていたんですが・・・ もういいです・・・。でも・・・僕はここを離れる 訳には行かないんです・・・。」 そういい息子は再び墓前に向きなおす。 そしてまた無表情になり、その墓を見つめだした。 「友達かい・・・?」 「・・・それ以上の存在でした・・・。」 「・・・恋人か・・・?」 「・・・はい。」 「・・・どんな「女」だ・・・?」 俺の問いかけに息子は再び口を閉ざす。 そして俺達を見比べ質問をする。 「・・・その前に・・・父さん達はどういう 関係なのですか・・・?その・・・ 僕の父親同士と言うだけの 関係には見えないのですが。」 「え?い・・いや・・・それはその・・ なんてゆうか・・・。」 なんでそこで動揺するのだ。 はっきり言えばいいではないか夫婦だと。 もういいわ、俺が説明する。 「ジョルノ・・・「父親同士」は誤りだ。 父親は俺だが、母親はこいつだ。 つまり俺達はそう言う関係・・・。」 「わーーーー!!うそ!嘘だよ! DIO!息子の前でそんな生々しい真実・・ じゃなくて・・・!!えーと・・えーと!!。」 「同性愛者同士・・・ということですか?」 「それも少し違うな、たまたま好きな奴が 同性だったというだけのことだ。 何か問題でもあるのか?」 後ろでひたすら見えない汗を飛ばしている ジョナサンを無視して俺は話を進める。 同性だろうが何だろうが惚れている物は惚れているんだ。 それが分からない奴に無理に理解して貰おうと思わない。 たとえそれが息子でも。 しかし息子はその返事に対し、意外にも少し表情を和らげる。 「いいえ。何もありません・・・・。 そうですか・・・ならいいます。 僕も好きな人がたまたま同性でした。」 「え・・・じゃあ君・・・。」 「でも・・・もう彼いないんです。 ここに眠っていますから・・・。 だから・・・僕はここから離れたくないんです。 僕がここにいたって何も変わらないのは判っています。 でも・・・どうしてもいたいんです。 ここにいるだけで一緒にいるような気がして・・・。」 息子はそういうと墓の前に跪き、目の前の墓標を撫でる。 不意に腕を引っ張る感じがしたので振り返ると ジョナサンが俺の腕をしきりに引っ張っていた。 「・・・・DIOちょっと・・・。」 「・・・どうした?こんな木陰に連れてきて。 エッチしたいなら後にしろ。」 「いい加減に空気を読んでくれ! あの子の・・・恋人・・・何とかしてあげられない? 親として・・・・何とか救ってあげたいんだ!」 「俺にあいつの恋人をお前のように救えと言うのか? まあ・・・出来なくもないが・・・。 過去に遡り死に際に連れてくればいいのだからな。」 上目遣いで俺を見るジョナサンに 少しムラっとしながら俺は考える。 しかし息子はどう思うだろう、アイツはそれを願うだろうか? するといつの間に近づいていたのか息子が 俺の背後から声をかける 「・・・本当に・・・?」 「ん?」 「本当にそんなことが出来るのですか?」 「僕はそうして貰ったんだけど・・・。」 「お願いです、それが出来るのなら・・・ 本当に出来るのなら・・・僕はどんな事でもします。 父さん・・・・お願いです。」 初めて無表情な表情が切実なものに変わっていく。 前に二人でこいつの写真を見たときに ジョナサンは俺の方に似ているかもと言っていたが 俺はジョナサンの方が似ていると思う。 自分で言うのもなんだが、俺とは違い息子の目は澄んでいる。 ジョナサンの目と同じ様に青い空のように澄んでいるのだ。 大きめの瞳には優しさが宿り、どこかジョナサンを思わせる。 やばいな、ジョナサンに似ていると思うと どうしてこうもムラムラしてしまうのだろう。 「どんな事でも?(ニヤリ)」 「DIO!何でそこでニヤつくんだ!許さないぞ!」 「おっとすまんすまん、まあそう妬くな。 可愛いやつめ。」 「ご・・誤解するな!息子に手を出すのは許さないって いったんだぞ!」 「はいはい。判った判った。で・・・そいつが 死にそうになったのはいつだ?過去に遡って 助けてきてやる、本当はこんな事しては いけないのだが・・・お前をほったらかしにした 罪滅ぼしだ・・・。特別に許そう。」 「有難うございます。あの・・・ついでといっては 何ですが・・・・他にも死んだ友達がいて・・ 彼らも・・・駄目でしょうか・・・。」 「お前結構真面目そうに見えて図々しいな・・・。 ジョナサンそっくりだ。」 「一言余計だよ。さ、早くいってきてあげて。」 そう言って半ば急かされる形で俺は過去に飛ばされる。 なんとか恋人と友達とやらを救い出し 感動の再開を果たさせる。 そして今、目の前に恋人と共に俺達の前にいる。 二人ともとても幸せそうな晴れ晴れとした顔をして。 なぜだろう・・・、なんかもやもやするのだが・・。 ジョナサンは慣れていない善行をしたからだと かわいげのないことを言ったが・・違う気がする。 なんか大事なものを取られたようなこの複雑な 気持ちは一体・・・。 「父さん、母さん有難うございます・・・。」 「義父さん、義母さん・・・貴方たちのお陰です。 俺の仲間達も助けてもらって・・・ お礼の言葉もありません。」 「よかった。本当に良かった。な、DIO。」 礼儀正しく仲むつまじくお礼をいう二人を見て 少し涙ぐみ、いつもってきたか判らない ハンカチで目頭を押さえるジョナサン。 なんか・・・こういう場面みたことあるのだが・・・。 「全く俺のお陰だぞ。ん?義父さん・・義母さん・?」 「ジョルノ、また逢えるか?」 「勿論です。いつでも連絡をください。 駆けつけますから。」 言う事をいったらもう俺達の入る余地などないと 言わんばかりに二人の世界を作る。 それを見たジョナサンが慌てて俺の背中を押す。 「ほらほらDIO、無粋だな、二人きりにしてあげようよ。」 「ちょっとまて、あいつ恋人だって言ったよな。 なんかいきなり息子のダンナみたいなこと 言ってなかったか?」 「そうかい?別にいいじゃないか。 僕は息子が幸せならそれでかまわない。」 「まて、俺はかまうぞ。」 俺達でさえ正式に結婚していないのに・・・ いやいやそうではなく・・・・。 ジョナサンが邪魔で二人がどういうことをしているのが 見えないのが気になって仕方ないが そんなことより次にいきたいと ジョナサンにやたらに急かされる。 「はいはい。さて次はだれだい?早く逢いたいな。 僕の子孫達なんだろう?」 「俺に指図するな、全く・・・次は・・・ ジョセフだな・・・。俺があった次元では 爺だったが・・・・。この時代では19歳か。 結構結構、やはり仲間は若く美形でなくては。 何の楽しみもない。」 「何を楽しむ気だい!?」 鋭いツッコミを入れるジョナサンを無視し 占い師から貰った占い道具でジョセフの居場所を探す。 どうやら寂しい遺跡にあいつはいるらしい。 俺はジョルノに病院の場所のメモを渡すと ジョナサンを連れてジョセフのいる場所へと移動した。 「しかし寂しい所だな。」 「そうだね・・・あ・・・彼・・・。」 俺達のずっと目先に青年が一人たたずんでいる。 青年は目の前の大きな岩の塊に手を当てて 何かを考えているかのようだった。 その顔は俯いて手にはなにか花のようなものを持っている。 (・・・畜生・・・またここに来ちまった・・・。 こんな所にもうお前はいるわけないのに・・・。 だってそうだろ?お前は本当は死んでないもんな? 憎まれっ子世にはばかるって言うし簡単に死なないよな? この下には実は穴が開いていて・・・上手く脱出 出来たんだよな・・・?でも記憶が無くなって・・ 俺のこととか覚えてないから会いに来ないだけだよな? ・・・ははは、じゃあ何で花なんか持ってきたんだよ ・・・俺・・・馬鹿じゃねーの・・・。) 青年はいきなり岩を叩くとその花を岩の下へ 投げ捨てるように落とした。 その姿を見て俺は確信する。 「また友でも死んだのか・・・。嫌な予感がする。」 「DIO・・・。人助けだよ。」 「ふーーーーーー。おい、そこの。」 「えっ!?な・・・何だよ!いきなり ・・・あんた誰?」 おれが何の前触れもなく話しかけたので 怪しいと思ったのだろう、いぶかしげな顔で俺を見る。 その顔はどことなくジョナサンに似ているが、 ジョナサンより数倍気の強そうな顔をしている。 それに態度もかなりでかくジョナサンとは違い ずけずけとものをいうタイプだろう。 だがこいつを見てると爺の時のジョセフに何があったのかと 思うほどの変わりようだな。 俺がそんなことを考えながら見つめていると 睨みあいでもしてると思ったのか慌てたジョナサンが 俺たちに駆け寄ってくる。 「DIO!いきなりそんな・・・。」 「ちょ・・・あんたも・・・って・・あれ?」 ジョナサンの顔を見るや否や、ジョセフの顔の剣がとれ ひょうきんなオーバーリアクションを披露し始める。 うむ・・ここら辺は爺の時と同じようだ。 「あれ?あれ?あれ?いや・・そんな訳ないよな。 あのさ・・・あんたジョナサンジョースターって ひと・・・しっている?」 「知っているはずだ、何せ本人だしな。」 「えっ・・・?あの・・・ジョナサンって・・ あ・・・ちょっとまって・・頭整理するから・・・。 えーと、エリナばあちゃんの旦那さんであり 俺のじいちゃんでもあるのが、ジョナサンジョースター。 うん・・・昔見せてくれたエリナばあちゃんとの ツーショット写真に、写ってたじいちゃんの顔 覚えてる・・・・。そっくりと言うか似すぎ。 そういえばエリナばあちゃんが波紋戦士は 老けにくいって言ってたけど・・・幾らなんでも 老けなさ過ぎだし・・それどころか 俺とあんましかわんないよな?」 ジョナサンが返事をする暇も与えないくらい 次から次へとリアクションをするので代わりに俺が 目の前の落ち着かない小僧に説明してやることにする。 その都度その都度突っ込みを入れてくるので 説明に時間がかかってしまったが何とか判ってくれたようだ。 しかし、これからが本番だ。 何とかこいつを言いくるめ、看護スタッフにしなければ。 「という訳だ、だから俺たちと共に働け。」 「え?・・おれ・・考古学者になりたいんだけど・・。」 「なんだと?そんなのキャラの無駄遣いだぞ?」 「それあんたが決めることか!?」 「DIO!彼の言う通りだよ!彼に夢があるんなら それを応援するべきだよ!」 「いや、俺はどうしてもお前たちの手が借りたいんだ。 ・・・条件を付けよう。俺達と共に働いてくれれば お前の友を生き返らせよう。」 すると今までガミガミ騒いでいた奴が急に静かになる。 真剣な面持ちで俺を見つめ・・いや睨みつけているのだろう。 まあ、こいつの言いたいことは判る。 冗談のように友の死について語られるのは不快なのだろうな。 「俺は本気だ、ふざけているのではない。 お前も聞いただろう?生き返ったジョナサンの事。 俺の息子と生き返ったその友達の事を。」 「・・・・・・・。」 「本当だよ?できれば僕は生き返らせてあげたい。 仲間を失う悲しみは僕も知っているからよく判るんだ。 君は彼にとても会いたがっていた・・・そうだよね? 君にとっては最高の友達なんだろ? でも結局はそれを決めるのは君だ・・・。 僕たちじゃあない。だから・・・。」 「・・・じいちゃんがそういうならその話に乗ってもいい。 でも、かついでるんならたとえ爺ちゃんでも・・。」 中々口を開かないジョセフだったが、祖父のジョナサンの 真意が伝わったのだろう。 素直な返事ではないが承諾したようだ。 さすがジョナサンだ、俺ではこうはいかなかった。 これで契約は成立だ、しかし生き返らせるのは もう一仕事してもらってからだ。 奴に協力してもらいたいことはただ一つ 俺を倒した承太郎の説得だ。 多分新たにできる仲間の三人の中では一番手ごわいからな。 「ありがとう・・・。じゃあDIO早速・・。」 「・・・いや・・もう一つだけ俺に協力してもらう。 それさえ済めば、お前の友は救ってやる。 約束だ、俺の命を懸けよう。」 「DIO!」 どうして?と言わんばかりのジョナサンを無視して 俺はジョセフと交渉を続ける。 「俺はもう一人のジョナサンの血筋である小僧の力も 借りたいと考えている。しかし俺とジョナサンだけでは そいつの説得に骨が折れそうなのでな。」 「いいぜ。そいつを仲間にするのを手伝えっていうんだな? 任せな、例えそいつと死闘になろうとも仲間に 引きずり込んでやる。これでいいんだろ?オーケー? じゃ・・・早速行こうぜ?俺は速く確かめたいんだ。」 生意気な小僧だが何とも頼もしいものだ。 そして俺たち三人は承太郎のいる最後の砦へと向かっていった。 承太郎がいるのは日本だ、アイツの事は大体わかる。 判らないはずがない、つい最近まで 死闘を繰り広げたのだからな。 訪れたのは静かで開けた岬の崖っぷち。 承太郎は無表情に海を見つめている。 この世界の出来事が俺たちの世界と同じであれば、 承太郎の仲間は俺たちの手で奪われ、 俺はアイツの最も憎まれるべき存在だ。 俺が再び現れれば問答無用で再戦することになるだろう。 「仲間を助ける」の切り札を出してもあいつが俺の 要求を素直に飲むと思えない。 さて・・・ここまで来たはいいがどう話を切り出すべきか。 俺が考え込んでいると、そんな俺の態度に業を煮やしたのか ジョセフがずかずかと承太郎に進み寄って 見たことも会ったこともない奴にいきなり声をかける。 ジョセフも承太郎もお互いの存在を知らないようだが 上手くいくのだろうか? とにかく成り行きを見守るしかない。 「おい!お前が承太郎か?」 「・・・ああ?誰だてめー・・・。」 「お前にちょっと話があんだ、来てもらうぜ?」 「俺の返事も聞かずにか?図々しいにも 程があると思わねーのか?誰だか知らねーが あんまりしつこくすると痛い目を見るぜ? 判ったならとっとと消えな、俺は機嫌が よくねーんだ。」 「冗談じゃないぜ?お前の機嫌が良くなるのを 待ってろっていうのか!?俺は急いでいるんだよ!」 似たような性格からか年も近いという事もあってか 今にも喧嘩が起こりそうな雰囲気だ。 しかしさすがはジョナサンだ、二人の元へ 素早く駆け寄り、間に割って入った。 「だめだよ!ジョセフ!・・・・ごめんね。 承太郎君・・・。不快な思いをさせたね。 僕が彼に変わって謝るよ、許してほしい。」 「・・・・・・フン。」 「ちぇ・・・・。」 ジョナサンの謝罪で取りあえず争う気はなくなったようだ。 あいつは本当に鎮静効果のある男だと再度感心する。 だてに紳士道を貫いて生きているわけじゃないな。 しかしその血を受け継いでいるはずの ジョセフはヤンキーもどきだし承太郎はヤンキーだし。 ジョルノなんかマフィアのボスだと言っているし お前らの血筋は一体どうなっているんだと 俺は思わず突っ込まずにいられなくなる。 「まず、自己紹介をするね?僕はジョナサン・ジョースター。 そして彼はジョセフ・ジョースターだ。 彼は君の従兄にあたるんだ、初顔合わせみたいだけど。」 「・・・成程な・・。それで同じ名字のあんたも 兄弟か親戚・・・つまり俺たちは同じ一族ってわけだ。」 「親戚・・まあそんな所かな・・。それでね君と少し 話がしたいんだ・・・。でも、君の気持ちも尊重したい。 君が僕らと話せるようになったらで構わない。 時間を作ってくれると嬉しいんだけど。」 「しつこいようだが、急ぐんでな!早めに その気になってくれねーと困るぜ!」 「・・・・仕方ねーな、わがままなそいつに せかされているあんたが可哀想なんでな。 今聞いてやるよ、おい、てめー感謝しろよな。」 どうやらかたはついたみたいだな、 ジョナサンとジョセフが承太郎を連れてくる。 だが問題はこれからだ。 アイツが俺と平和的に話をすることができるかどうかだが。 「・・・・・・・・!!!」 案の定、承太郎は俺を見つけるや否やスタンドを出す。 やはりな、さて・・・念のために俺もスタンドを出すか。 ジョセフやジョナサンにはスタンドは見えないが 俺たちの間に走る殺気には気づいたのだろう。 慌てて俺たちの中に割って入る。 「DIO!!どうゆうことだ!?喧嘩するために 彼を呼んだんじゃないんだろう!?」 ジョナサンが俺の前に立ちふさがり、ジョセフが 承太郎の前に立ちふさがる。 俺はもとより打ち込む気はないが、承太郎がどう出るかに 全てがかかってくる。 「てめーら・・・どうゆう事だ?そいつが どんな奴だか判っているのか・・?」 今まで決して愛想のいい表情を見せてなかった顔が 更に険しくなり俺だけでなくジョセフ達も容赦なく睨みつける。 しかしジョセフは全く怯まず説得を続ける。 「詳しくは知らねーけど・・おめーの敵だったんだろ? でも、こいつは違う次元から来たやつだ! 正確にいやァ、お前のダチを殺った奴じゃない! それにこいつはお前の仲間の命を救うって言ってんだ! ごちゃごちゃ言わねーで話を聞け!」 「その話を信じろと?一体どんな宗教詐欺だ? 生き返らせてやるからいう事を聞けと? 今時そんなの信じるやつなんかいねェ!」 「俺だって初めて会うやつの言葉なんて 素直に信じねーよ!でもこのジョナサンて人は・・ 俺の大好きなエリナばあちゃんが尊敬する 旦那だったんだ!!だから俺は信じる! じいちゃんと共にいるこの男の事を!!」 「てめえ・・・。」 「俺は・・・俺はあいつを生き返らせなきゃいけねーんだ! たとえ自分がどんな目にあってもな! てめーに一生恨まれようが、殺されかけようが 俺は・・・・!」 直前まで大声で勇ましく叫んでいたジョセフだったが 感情が高ぶりすぎたせいか、言葉に詰まり、 溢れそうになる涙を服の裾で拭う。 しかしすぐ気を取り直し、目の前の承太郎を睨みつける。 「・・・・ったくよ・・。直情型タイプって奴は 本当に面倒臭いぜ・・・。 あいつみてーだな・・・・。どうせ断っても 受け入れてくれねーんだろ?信じてやるよ。 面倒臭ぇからな。ただしDIO以外はな。」 ジョセフの想いにすっかり毒気を抜かれたのか 承太郎が俺たちに背を向けながらも承諾をする。 素直ではない言い方だが交渉は成功したようだ。 まあ、こいつが素直に受け入れるのも変だしこれでいい。 取りあえずその場が落ち着いたところを見計らって 各自自己紹介をする。 しかし承太郎は生意気にも俺の紹介はいいと言ってきた。 本当に小憎らしいガキだ。 「よし、約束は約束だ、生き返らせてやる。 で?お前らの大事な奴は友達か?それとも恋人か?」 「・・・・てめーにそれを聞かれるとはな・・。 男しか殺してねーだろ?」 「え?それ・・申告しなきゃダメ?」 二人の口ぶりで俺は理解する。 成程、ジョセフは俺や息子と同じで恋人。 承太郎はただの親友か。 「判った、ジョセフは恋人、承太郎は親友だな。」 「い・・いや・・その・・・な・・ なんだよてめー!文句あんのか!? 相手が男で何が悪いんだよ!」 何も言っていない承太郎にいきなり食ってかかるジョセフ。 器用だか不器用なんだか判らん奴だな。 承太郎も流石にあきれ顔はしているが嫌悪感は表してはいない。 「何も言ってねーよ。ただそっち趣味とは知らなかったぜ。 別に誰がそっち趣味でも構わねーが 俺は違うからな。その道に引きずり込まないでくれよ?」 承太郎はなかなかいい容姿をしているが 女にガツガツしているタイプではないので てっきりそっちの趣味かと思ったのだが・・・。 要するに天然のストイックというやつなのだろう。 いかんな・・・こういうストイックな奴を見ると どうしても苛めたくなる。 「ほう・・・承太郎はそっちには興味ないと? おかしいな・・・ダービーはお前の事を 手に入れたいといつもぼやいていたぞ?」 「・・・・あいつは俺の魂に興味があっただけだろ? 確かにしつこかったけど・・・。」 「・・・どうだかな・・・。男という生き物は たまに強いものに魅せられ、そいつを支配したい 心境に駆られる時がある。勿論そう思う男は ごくわずかだが・・・・ま・・俺もその ごくわずかな一人だとだけ言っておこう・・・。」 流石に俺の言っている意味が分かったのか 嫌悪感をあらわに俺を睨み始める。 こういっては何だが、威嚇して人を近づけない奴ほど 征服する時の楽しさが増すものだ。 「・・・なんで俺を見て言うんだよ。」 「さあな?ああ・・心配するな。 俺は心を入れ替えて、ジョースター一族を 愛することに決めたんだ。 それはもう、ねっとりと優しくな・・・。」 「全力で遠慮するぜ。」 「俺もいいです。」 意味深に言う俺に、二人が全力で俺を拒否する。 拒否をすればするほど楽しくなってくるというのに・・・。 おっといかんいかん、取りあえず楽しみは 後々ということで・・・とっとと助けに行ってくるか・・。 俺は奴らとの会話の内容が詳しくわかってないであろう 愛妻に一言声をかける。 「俺は奥ゆかしい奴は大好きでな。 社交辞令としてとらえておこう。 じゃあ、行ってくるぞジョナサン。」 「?行ってらっしゃい。」 「ちょっと待て!なんかする気なら 俺はてめーの条件をのまねーぞ!!」 「な・・・なんかちょっと早まった感が・・。」 二人の遠吠えを聞きながら俺は過去に戻る。 シーザーという奴は簡単だったが、 承太郎の仲間たちは多少手こずるだろう。 なんせオレの顔を覚えているのだからな。 俺は取りあえずジョセフにシーザーだけを返すことにする。 いくら俺でも次元の違う人間を一気に 連れてくるのは無理だからな。 シーザーは、ケガは負っているもの今すぐ死ぬような 事にはならないようだ。 ふらふらしながら懸命に立ち上がりあたりを伺う。 「う・・・・、ここは・・・?」 「シ・・・・。」 「・・・・ジョジョ!?お前なんで・・・。」 「シーザー!!この馬鹿野郎が!!」 あった瞬間いきなりジョセフが相手に怒声をぶつける。 傍目で見ていたジョナサンがハラハラしていたが、 ここから先は俺たちが口を出す権利はない。 俺は飛び出しそうになるジョナサンを引き寄せる。 「なんだと!!いきなり貴様・・・!」 「でも・・・もっと馬鹿野郎は・・俺だ。」 「え・・・?」 「俺・・・悪かったよ、俺が浅はかだった。 だからもう、あんな無茶しないでくれ。」 そのままシーザーに縋りつく感じでジョセフが ぼそぼそと小さい声で何か訴えていたが、 あえて盗み聞きはしないでおいてやろう。 ジョナサン達も空気を読んだらしい。 静かにあの二人から距離を取っていく。 「承太郎・・・ちょっとそっとしておいてあげよう。」 「ああ・・・。「二人の世界」とやらを邪魔しちゃ 悪いもんな・・・。」 「承太郎、君はDIOの事を仲間に何て言うんだい?」 「・・・それが一番問題だぜ・・。とにかくアンタの 連れのDIOは別モンで、もう世界征服は 企んでないって言っておく・・・。」 「ご免ね。気を使わせて。」 「よしてくれ、あんたが悪い訳じゃない。」 ジョナサンが何やら承太郎と話しているが あえて聞く必要はないだろう。 俺は次に承太郎の仲間を助けに行こうとするが その時誰かが俺を呼び止める。 「あの・・・!あなたが誰だか判らないが・・ 助けてくれてどうもありがとう・・・。」 後ろを振り向くとジョセフに寄りかかるようにして 近づいてきたシーザーとやらが俺に礼を言う。 フン、ジョセフや承太郎より礼儀正しいではないか。 「ジョセフ、お前は俺になんか言うことはないのか?」 「・・・まあ、その・・アリガト・・。 でもこれからあんたの元で働くんだから おあいこだろ・・?」 「コラッ!なんだ、その言い方は!」 仲良くなったかと思えば、 また喧嘩をし始めた二人を無視し、俺は過去へと遡る。 そして俺は承太郎の仲間をそのまま病院に連れていき 手術を施させた。 全員回復に向かっているとのことで、承太郎にその旨を伝える。 「礼は言わねーぞ、だが約束は守る。 あいつらに会いにいきてーんだが、そんくらいいいよな。」 「ちょっとさ・・・いろいろ二人で語りたいんだけど すぐ仕事に入らなきゃいけねーの?」 訴える二人を見て、 ジョナサンが心配そうに俺の出方を伺う。 「一か月間はお前らの好きにしろ・・・。 だが約束は守るようにな。逃げても捕まえに行くからな。」 「DIO・・。」 安心したような感心したようなジョナサンの顔が俺を見つめる。 「ふ・・・俺は優しいだろ?ほれ直したか?」 「「惚れ」は余計だけど少し見直した・・・。」 「素直じゃない奴め、だがそこもいい。」 取りあえず、これからは俺とジョナサンと息子で 家族というものを存分に味わってみたい。 病院はおまけで口実みたいなものだが ジョナサンの為にもやりこなしてほれ直させて みせようじゃないか。 終 |