ミ「・・・やばいぜ。何もねえ・・。」
ブ「くそ・・・いったい誰の仕業だというんだ?」 焦りながらブチャラティとアバッキオが 必至になって船上をくまなく探す。 ポルポの隠し財産を探すべく船に乗り 順調に旅を進めるジョルノたちだったが 予期せぬハプニングが彼等の身に待ち受けていた。 第五次全裸大戦 ポルポの隠し財産のことはブチャラティチームのみならず 全てのチームが知っていることだ。 理由や動機はともかくこれを狙わない連中はいないだろう。 元々荒くれ者の集まりだ、話し合って仲良く分け合うなんて まず考えられない、まさに早い者勝ちなのだ。 それこそ手段は問わず、場合によっては邪魔者は 迷いなく消しにかかってくるだろう。 勿論ブチャラティ達も財産の事で動き出した以上 ただで済むとは思っていない。 しかしこんなことになるなんて誰が予想したであろうか。 ぐるりと船上を見回ってきたミスタがアバッキオと ブチャラティに一旦下へ降りるように促す。 二人はミスタと顔を見合わせ頷くと船室へと足を運んで行った。 そのころ船室では。 ナ「ど畜生!いったい誰の仕業だよ!」 フ「知りませんよ、カリカリしたって仕方ないでしょう?」 壁に八つ当たりをしながら喚き散らすナランチャに 呆れながらフーゴが操縦室から顔をのぞかせる。 ジ「だめです。トイレも・・・。」 ジョルノがトイレから出て首を横に振る様子を見て 思わずため息が出るフーゴに対し ナランチャはますますヒートアップする。 ナ「マジで!?したくなったらどうするんだよ!」 フ「海でするしかないでしょう?それにしても ここまで徹底してなくなるとは・・・。」 チームの中でも頭のきれるフーゴにもなぜ こんな現象が起きたのかわからない。 一番考えられるのはスタンド使いがどこかに ひそんでいるのではないかという事だ。 しかし自分たち以外の気配は全く感じず これからどうしていいか判らず右往左往していた。 ナ「こんなことした奴、見つけ次第ぶっ飛ばす!」 フ「そりゃ僕だって同じ気持ちですよ・・。ところで ナランチャ・・いいんですか?そんな大胆に動いて。」 相変わらず怒りに任せてアクレッシブに動くナランチャを フーゴが冷めた目で見つめる。 ナ「ああ?なんだよ!こんな事態でじっとしてなんか いられないだろ!?フツーはよ!」 フ「・・・まあ別に同性だからいいんですけどね・・・ よくもまあ、そんなに恥じらいもなく隠しもせず・・。」 フーゴの視線が下半身に注がれ、ようやくナランチャは 自分の今の状態を思い出す。 ナ「・・え・・!あ・・!!わ・・忘れてた!! ば・・バカヤロー!!早く教えろよ!!」 そう、実はナランチャだけではない。 なぜかは知らないがブチャラティーチームは いつの間にか全裸にされていたのだ。 勿論本人たちはどうしてこうなったのかわからない。 まず真っ先に浮かんだのが追っ手のスタンド使いの 仕業ではないかということだが 探し回るにしても素っ裸のままではいろいろと不便だ。 だから代わりの布になるようなものを皆で探している 訳だが、布という布、紙という紙がすべて 船から消えていたのだ。 無論船の帆の事も頭に浮かんだがそれすらも外れて 見当たらない状況だ。 更に拍車をかけるように、皆一同にスタンドが使えなく なっていた、それもあって皆焦っているのだ。 ジ「・・とにかく一度みんなで話し合った方がいいと思います。」 フ「同感ですね、裸になってしまったものは仕方ないです。 皆でヌーディストビーチにでも行ったと思って 割り切るしかないでしょう。そんな事よりも脅威なのは 敵のスタンド使いがいるかもしれないという事です。 今のスタンドも使えない僕らは、少し喧嘩に自信があるだけの ただのチンピラの集まりです。もし追手が スタンド能力を使えるとしたら、 僕たちはいっかんの終わりです。 邪魔者は一人も生かしておきたくないでしょうしね。」 ナ「・・・・・・。」 ジョルノとフーゴが相談をしているさなか なぜかナランチャだけは黙って二人を見つめている。 その視線に気づいたフーゴが彼に声をかける。 フ「・・・・ナランチャ?どうしたんです? 僕たちを見くらべて・・・。」 ナ「・・・見せろよ。」 フ「えっ・・?」 ナ「俺のばっか見てずるいじゃねーか!お前らのも見せろ! さっきからずーっと隠しやがって!」 別にナランチャの意見に期待などはしていなかったとはいえ 余りにもどうでもいい発言にフーゴがブチ切れて 両腕をあげて殴りかかろうとする。 フ「こ、このスカタン!何を言い出すのかと思えば・・ それに見せてくれって頼んだわけじゃない!!」 彼のキレ方は尋常じゃないのは 初顔合わせの時にすでに知っている。 とにかくこのままではマズいので慌ててジョルノが フーゴの体をはかいじめにする。 ジ「フーゴさん!落ち着いてください!これが敵の 罠だとしたら僕たちはまんまと敵の思惑に はまるようなものですよ!」 ナ「・・・・うっ・・・負けた・・・。」 フ「はっ・・・?あ・・・・・。」 がっくりと肩を落とすナランチャを見てフーゴは理解する。 今自分はジョルノにはかいじめされているので下半身がもろ見えだ。 つまり彼が負けたというのは、男のシンボルの 大きさについてなのだろう。 ナ「ちくしょー・・俺の方が年上なのに・・。」 フ「・・・・・。」 ナランチャは恨めしそうに今度はフーゴの後ろにいる ジョルノを睨みつける。 ナ「うーーー・・ジョルノ!!」 ジ「嫌です。」 ナ「うるせーー!年下二人に負けたとあっちゃ 俺のメンツが立たないんだよ! 何が何でも見てやる!!」 男としてナランチャの気持ちも分からなくもないが 余りにも低俗な内容ににフーゴが再度半ギレを起こす。 フ「馬鹿かお前は!それに見なくても多分お前は負ける!」 ナ「なんでだよ!見ないでなんでわかるんだよ!」 フ「男のアレは身長や指の長さに比例すると言われている。 (例外もあるらしいが・・・。) 従って僕と体格、身長、指の長さなどが殆ど 変わらないジョルノにお前が勝てるはずがない。」 博識のフーゴの事だ、嘘は言っていないだろう。 だがあまりにもはっきり断言されるとそれはそれで 悔しいもので、ナランチャはいつまでも地団駄を 踏んでいた。 ナ「く・・・くそーーー!」 ジ「・・・いいじゃないですか。そんなことで 優らなくたって・・・。」 ミ「・・・・お前ら何を話し合ってんだ・・・。」 いつからそこにいたのかブチャラティ達が 階段の途中に座り込んで呆れながら こっちの様子を伺っていた。 そして今まで起きたこと、何か感じたことなどを メンバー全員で報告しあう。 フーゴは船上にいた三人に、船室内での出来事を事細かく話した。 フ「断っておきますがくだらない事を言い出したのはこいつです。 僕たちはただの巻き添えですよ。」 ナ「だってー・・・。」 チクリ魔のフーゴを恨めしそうに睨みながらも 否定はしない、嘘をついたってばれるのは判っているからだ。 アバッキオもブチャラティもあきれ顔をしている。 しかしミスタだけ神妙な面持ちでナランチャを見つめていた。 ミ「ナランチャ・・・お前・・・。」 ナ「なんだよ、ミスタ。神妙な顔をして。」 ミ「一応・・・ついてたんだな。」 ナ「ぶっ飛ばすぞ!!!」 とりあえず下品な話は終わり、気を取り直して今度は本題に入る。 身に着けるものがないと分かった今、これからどうするかだ。 一番厄介なのが敵の存在だ、もし今敵が襲ってきたらどうする? しかも更に厄介な事に一同スタンドが使えなくなっているのだ。 何の進展のない事態にブチャラティもため息をおとす。 ブ「そうか・・・原因となるものは見つからなかったのか。」 ナ「一生懸命さがしたんだよ?本当だぜ?」 フ「こいつはほぼ暴れていただけですけどね。 少なくとも僕とジョルノは働きましたよ。」 懸命に訴えるナランチャと冷たい目でそれを見つめるフーゴ。 この二人の言い分に偽りはないと確信したブチャラティは それ以上は追及せず、何故かさっきからずっと 視線をテーブルに落としているジョルノに声をかける。 ブ「そうか・・・ジョルノ、お前は何か感じたか?」 ジ「え・・・?そ・・その・・何も感じませんでした 役に立てなくてすいません。」 ア「最初から期待してねーよ。」 ブ「アバッキオ!」 ア「へいへい、すいませんでしたっと。」 ブチャラティが睨むと、アバッキオが大袈裟に肩をすくめる。 いまだアバッキオだけジョルノに対し風当たりが冷たい。 他のメンバーたちも決してジョルノに親身ではないが 嫌味を言うほどは嫌ってはいない。 それにこのままではブチャラティとアバッキオが 本気でもめることになりそうだ。 ここは三番目に年上の俺が何とかするしかないと ミスタが二人の間に割って入り提案する。 ミ「ところで船上に誰かいた方がいいぜ? 一応見張り役としてな。 誰が行く?出来れば今まで下にいたやつが 船上に行くべきだと思うがな。」 ア「俺も賛成だ、ミスタ。だがこういうのは やっぱ一番下っ端が行くべきだよな?」 ちらりとアバッキオがジョルノの方に視線をむける。 こうなることは判っていたが、ジョルノと アバッキオの距離はなるべく遠ざけた方がいいと ミスタはそう考え、提案したのだった。 ジ「・・・分かりました。僕が行きましょう。」 ジョルノが素直に席から立つと、なぜかブチャラティも それに続いて席を立つ。 そして席にどっかり座っているアバッキオを軽く睨んだ。 ブ「・・・俺も行こう。俺はこのチームのリーダーだからな。 文句はないよな?アバッキオ・・・。」 ア「は・・・!ガキのお守りは大変だね、好きにしな。」 ミ「二人で手に負えないような事が おきたら遠慮なく呼べよな。」 やってられねーと言わんばかりのアバッキオを 横目に、ミスタが愛想よく手を振る。 ジョルノは表情こそ変えないものの素直に礼を言う。 ジ「ありがとうございます。」 ブ「ああ、なるべくそうならないといいがな。 行くぞ・・・ジョルノ。」 ジ「は・・はい・・。」 ミ「・・・・?」 そう言いながら船上へあがっていく二人を なぜかミスタだけは不思議そうに眺めていた。 二人が船上へ登るも、何ら変化は見受けられないようだ。 相変わらず辺りは静かなもので、 聞こえるのは波の音と、ウミネコの鳴き声。 海風に体を弄られながらふたりは会話を交わす。 ブ「すまなかったな、あいつも本当は悪い奴じゃないんだ。」 ジ「も・・・勿論わかっています。あ・・あの・・。」 ジョルノのらしくない歯切れの悪さにブチャラティは 首をかしげる。 一体どうしたというのだろう、やはり不安なのだろうか。 思ってもいない事態に遭遇したのだから平常心で いられないのは当然なのだが。 ブ「どうした?」 ジ「ぼ・・僕はこっち側でブチャラティはあっち側を み・・見張るのはどうでしょう・・・。勿論 場所が逆でもいいんですけど・・」 ブ「うーん・・・そうだな、そうしよう。 何かあったら叫ぶんだぞ?」 ジ「わ・・判りました。」 何か様子が変だとは思いながらもジョルノの意見に ブチャラティは同意し、二人はそれぞれ左右に分かれる。 それから二人は言葉を交わすこともなくただ 周りを監視していた。 相変わらず静かな船上に対し 打って変わって船室では、またもやどうでもいいことを 蒸し返しては皆で騒いでいた。 ア「お前ら・・・俺らが寒さと羞恥に震えながら 探索していたのに何アホなことやってんだよ。」 フ「だから僕らは違います。アホなのはナランチャだけです。」 ナ「またアホって言ったー!!」 ミ「それでどうだった?その・・ナニ・・とか・・。」 最初は馬鹿馬鹿しいと聞き流していたミスタも だんだん面白くなり、ついに悪乗りして 下品なことを聞き始める。 フ「ミスタまでそんなくだらないこと聞くんですか? ナランチャの完敗ですよ、見ればわかるでしょ?」 ナ「ジョ・・ジョルノとはまだ比べてねえ! フーゴは自分と同じって言ったけど もしかしたら俺より小さいかもしれないじゃんか!」 ア「ふうん、あいつ見せなかったのか・・・。 はっ、本当に自信がなかったんじゃねーの?」 皆で会話していた時もジョルノは股間を隠していた。 礼儀で隠しているのか、恥ずかしくて隠しているのか 判らないが、彼の性格から言って前者のほうだろう。 因みにミスタやアバッキオ、ブチャラティは もう割り切ったのか隠さずに曝け出している。 ミ「俺はあいつのサイズより毛の色が気になるな。 ほら、金髪の奴って下も金色だったりするんだろ?」 ア「知るか、だがひょっとしたら生えてすら ないかもしれないぜ。生えててもひな鳥レベルとかな。」 最後のアバッキオの言葉に突然好奇心が沸き出し 堪らなく見たい衝動に駆られる。 金の陰毛なんてそもそもあまり見たことないし それが更に薄いものだとなるとどんな見た目になるんだろう。 どうせやることもないんだし捜索がてらに見てみるかと ミスタはおもむろに立ちあがる。 ミ「よし見にいこ!」 ア「アホ仲間が増えたな・・・。」 アバッキオは下らない理由で船上へ登っていくミスタと 今だフーゴと言い合っているナランチャを見比べ 呆れながらぼそりと呟いた。 一方ミスタは船上にたたずむ二人を早速見つけると 迷わずジョルノの方へと歩み寄る。 しかし残念ながらジョルノは片手で股間を隠しており 自然に覗き見るのは不可能のようだ。 ミ「おい、ジョルノ。」 ジ「えっ!!・・・びっくりさせないでください・・。」 肩に手を置いただけなのに過剰に驚くジョルノに 思わず面を食らう。 普段の彼からは想像もできない驚きっぷりだ。 ミ「なんだよ、そんなビビりで船上の警護なんか出来んのか?」 ジ「・・・ビビったわけじゃありません。 ブチャラティかと思って。」 ミ「ブチャラティに警戒してどうするんだよ。」 ジ「け・・警戒とかじゃなくて・・。」 そういうと彼らしくもなく、顔を伏せ口ごもる。 しかしすぐ気を取り直し、ミスタに当たり前の質問をする。 ジ「・・・・・・ここへなにしに・・?」 ミ「えっ・・?いや・・ちょっと気分転換に 船上に上がっただけだよ、いいだろ?」 ジ「それは構いませんよ、あの・・ミスタ・・。」 ミ「ん?」 ジ「僕の顔の方を見て話してくれませんか? 僕の顔が見たくないのなら仕方ないですけど。 あるいは違う方向を見るとか・・・。」 ミ「あ・・・悪い悪いつい気になって・・・。」 ミスタは無意識だったようだが、さっきから ジョルノの股間辺りをずっと見つめていたらしい。 元々毛の色を調べるために上へ やってきたので仕方はないのだが あからさまな視線にジョルノに思い切り呆れられてしまう。 ジ「・・・あなたもナランチャと同じですか? 心配しないでください、あなたの方が大きいです。」 ミ「え?お・・おうサンキュ・・・って、いやいやいや。 そ・・・そうじゃなくてな・・・、ま・・いいか。 そんじゃ聞くけどよ、ブチャラティとどっちが上?」 ニヤニヤと悪戯っぽく笑ってミスタが尋ねる。 真面目なジョルノの事だ、そんなことを言ったら また呆れられるかもしれない。 しかしジョルノの反応はミスタが 予想していたものとは大きく違っていた。 ほんの一瞬だったが彼の目が大きく見開く。 間違いない、確実にミスタの言葉に「動揺」したのだ。 ジ「し・・知りません!第一失礼です!」 ミ(こいつ、ブチャラティの事になると動揺するな。 だが以前はちゃんとブチャラティと会話していたよな。 様子が変になったのはみんな仲良くヌードになった時だ。 でも下では連中と普通に会話してたみたいだし、 俺とも普通に会話している。 まるでブチャラティだけ意識しているみたいだ。) ジョルノと言えばまた下を向いて俯いてしまっている。 気のせいか少し顔が赤いようだ。 そこでミスタはやっと気づく。 初心な女性がたくましい男性の裸を見て過剰に 意識して顔を赤らめることがあるが、 今のジョルノはまさにそれじゃないだろうか。 しかし裸なのは皆変わらないしどうしてブチャラティ だけに意識する必要があるのだろう。 男は他にもいるというのに、少年の体そのものの フーゴやナランチャならともかく 男らしい体つきの者は他にもいるのに。 途端にミスタの心の中に訳の分からない対抗心が沸く。 ミスタは咳ばらいを一つするとキメ顔をしながら ジョルノに尋ねてみる。 ミ「あーーー、なあジョルノ。」 ジ「はい?」 ミ「俺・・どう?」 ジ「ごめんなさい・・・どう・・とは?」 ミ「えっ・・?いやその・・・お・・ 俺の体とかで気になる所とかない?」 ミスタの質問に頭に「?」を浮かべながらも 律儀に彼の体を隅から隅まで眺める。 ただ異変がないかを調べているだけのジョルノの行動に ミスタのテンションがぐんぐん下がっていく。 ジ「?いえ・・・別に・・強いて言えば、 その頭の帽子(?)だけ消えてない所が不思議です。」 ミ「あ・・・そ・・そっちね・・。」 ハハハと乾いた笑いをしながらあからさまに 肩を落としてしょんぼりするミスタを ジョルノは相変わらず不思議そうに眺める。 しかしブチャラティが近づいて来るのが分かると 途端に気まずそうに視線を外す。 ブ「ミスタか、どうした?何かあったのか?」 ミ「あ・・いや・・ちょっと上の様子を見に・・。」 ブ「そうかこっちは異常はない、 下で何も起きてないならいいんだ。 何かあったら遠慮せず呼んでくれ。」 じゃあなと、ミスタとジョルノにひと声かけると ブチャラティは再び自分のいた場所へ戻る。 何気なくジョルノの方をみると彼はまた顔を 赤くして緊張しているようだった。 とにかくこのままいても何も変わらないし 自分が惨めになってきそうなので取りあえず ミスタは下に戻ることをジョルノに伝える。 ミ「じゃ・・俺下行くわ。(なんで? 俺の体とブチャラティの体の何が違うっていうんだ? いや俺の方が胸厚いし、腕も太いのに・・・。 釈然としねーーーー・・・。)」 結局当初の目的「毛の色確認」もせずに げんなりしながらミスタが船室へと降りていく。 そのあまりの元気の無さに三人が一斉に彼に注目する。 ミ「ああ、俺・・男としての自信なくしそう・・。」 フ「・・・なにがあったんですか?」 ナ「まさかジョルノに負けたんか!アレの大きさで!? そっか・・・気にすんなよ。」 その落ち込みように、ナランチャが勝手に解釈をして 同情してきたのでミスタが慌てて誤解を解く。 ミ「ば・・バカヤロ!大きさでは俺の方が上って 言ってくれたよ。」 ア「ふーん、で・・・どうだったんだ?」 ミ「何が?」 ミスタが余りにも素でアバッキオに尋ねるので 半ば呆れながらも、彼の「当初の目的」を思い出させる。 ア「・・・・・毛だろ?毛の色。」 ミ「あ・・・ショックでかすぎて忘れてた!」 フ「なにがあったんですか・・。」 ミスタの思わぬ無駄行動に突っ込みの嵐を入れまくる 三人だったが、突然聞こえた異音に一同押し黙る。 ミ「・・・なんだ・・?今の音・・。」 フ「僕も聞こえました・・・カシャって音が・・。」 ア「・・・ちょっとブチャラティに報告してくるか。」 アバッキオは三人に警戒注意するよう促し 一人階段を昇っていく。 そして船上につくとミスタとは対照的に ジョルノに見向きもせず ブチャラティの方へまっすぐに向かっていった。 ア「・・・おい、ブチャラティ。」 ブ「なんだ?何かあったのか?」 ア「大したことじゃないと思うがな、 あの部屋で変な音が聞こえた。 ちょっと下に行って見に来てくれないか? 代わりにここは俺が見ているからよ。」 ブ「・・・分かった、見てこよう。」 ブチャラティはジョルノをちらりと見ると 船室へと降りていく。 残されたジョルノはただ黙ってひたすら 自分の目の前に広がる海と空を監視していた。 ジ「・・・・。」 ア「てっきりブチャラティのそばにぴったり 寄り添っているかと思ったぜ。」 自分がいるのは判っているのにも関わらず 何の反応もないジョルノにアバッキオが近づく。 いつもそうだ。 アバッキオがジョルノをよく思っていないように ジョルノだってアバッキオをよく思っていないはずだ。 それなのに彼が近づいても、ジョルノは 距離も取らず、まゆ一つ動かさない。 お世辞もご機嫌取りもなく、自分から嫌味を言うことも 嫌悪を露わにすることもしない。 必要なこと以外はほとんど口を開かないので 余りにも何を考えているかわからない。 他のメンバーは皆「素」を曝け出しているのに このジョルノだけは出そうとしない。 それがアバッキオにとってジョルノに対する不信感を 一層あおっていってしまうのだ。 だからつい引き出してみたくなる、彼を「怒らせ」 本性を暴いてみたくなる。 ア「また俺は、二人きりでしっぽりヤッてんのかと思ったぜ? それとも、もう終わったのか?」 ジ「嫌味を言いに来たので?」 ア「そう思っても一向にかまわないぜ・・・。 お前も盗み聞ぎしていて判ったと思うが 下で敵の気配を感じた・・・・。 確証はないが、敵が潜んでる可能性が大いにある。 だがな・・今俺たちはスタンドが使えない・・・。 敵がもしスタンドが使えるのなら奇襲でも かけないことには勝機はねえ。」 ジ「・・・そうでしょうね。」 それは誰しもが考えていることだ。 今の自分たちにはスタンド使いに比べれば とても非力な存在だ。 死にたくなければ、たとえ卑怯な戦法になったとしても 絶対に勝たなければならない。 再びジョルノが黙り込むと、 すかさずアバッキオがつつくように茶々を入れる。 ア「・・・そこでいいことを思いついたんだ。 お前さっき役に立たなくて申し訳ないといっただろ? だったらお前がこの船上で囮になるっていうのはどうだ? なに、簡単だ、そうやって一人でさっきみたいに海を 見つめて突っ立っていりゃあいい。相手が男でもイケる 野郎ならそのケツにブッ込まずにいられないだろうからよ。 お前が襲われている間に俺たちが飛び掛るっていうのはどうだ?」 いきなり何の前触れもなく、わざと下品で挑発的な 言い方をするアバッキオにジョルノは怒りはしないものの、 まゆを顰め、少しだけ不快感を表す。 ジ「ジョークにしては笑えないですね。」 ア「ジョークは笑わせるためだけに あるもんじゃねーぜ?」 ジ「なら僕もジョークをいいます。 男でもいいのなら僕じゃなくてもいいはずです。 貴方が囮になったらいかがです?」 ア「成程・・笑えないねェ・・・。やるじゃねーか。」 初めて彼の口から出る嫌味。 そろそろキレるだろうか?しかしジョルノはそれ以上は 何も言葉に出そうとはせず再び押し黙ってしまう。 喧嘩をしたくないのか、相手をしたくないのか判らない。 どっちにしろ、何処までも自分を押し殺した反応に アバッキオは少しずつ苛立ちを感じ始める。 この小僧はどこまで真面目で冷静な人間を演じたいのだろうか。 ジ「・・・・・・。」 ア「は・・おすましか?つきあってられませんってか。 お高くとまってんじゃねーぞ?コラ。」 ジ「・・・そんなことをしている場合なので?」 ア「説教すんじゃねーよ、そういやお前、 俺たちの裸を見てもそうやって平然としているのに ブチャラティの時だけは落ち着かなくなるらしいじゃ ねーか・・・。なんでかねェ?」 ブチャラティと共に船室に登っていった時から ジョルノの異変にアバッキオはすでに気づいていた。 だがミスタとは違い、どうしておかしくなったかは すでにアバッキオにはわかっていたのだ。 ア「なァ?どうしてだ?奴を見てると 奴に抱かれる妄想でも頭に浮かんじまうのか? あまり傍にいるとおっ勃ちまうのか?」 わざと厭らしいねっとりとした口調でジョルノの耳に囁き、 首筋を撫でるように触ると、まるで虫でも払うかのように 首を激しく左右にふり、アバッキオを軽く睨みけん制する。 ジ「・・・それ以上言わないでください。 仲間を軽蔑したくないんです・・・。」 ア「軽蔑?結構だぜ?下種で下品な野郎で結構だ。 だからちょっと見せろや、 変形してないか調べてやるよ。」 ジ「いい加減にしてください、僕もいつまでも おとなしくはしていませんよ?」 だんだん言い方を荒げてくるジョルノに手応えを感じながら 最後の締めとばかりに、股間を隠している方の手首をつかむ。 そのままぎりぎりと締め上げ、引きはがそうと力を入れる。 ジョルノもそう簡単に引き離したりはしないだろうが、 スタンドが使えない今、力の差は大人の アバッキオの方に分があるようだ。 くわえてアバッキオは過去に警察を生業としていたくらいで 格闘に関してもそこそこの腕を持ち、体だって鍛えている。 少しづつだがジョルノの顔色に焦りが見え始める。 ア「ふん、力比べか?スタンドが使えない今、 大人の男とガキのどっちが力があるかなんて やらなくても判るだろ?お前みたいに 今まで暴力とは無縁の世界にいた お坊ちゃんに何ができるって・・・・。」 カシャ。 ジョルノの手を引きはがせたと同時に、いきなり さっき聞いた例の音が聞こえ、慌てて二人は警戒態勢に入る。 そして必死になって辺りを見回している二人を 馬鹿にしたような声があたりに響く。 ???「見たぜー聞いたぜーとったぜー!お前らの スクープ写真!!そうそう・・・下にいる メンバーのゲイジュツ写真も とっておいといたがなー。」 ア「なにっ?てめー・・・姿を現しやがれ!!」 アバッキオが敵の挑発に乗って大きな声で叫ぶ。 騒ぎを聞きつけブチャラティと皆が船上へ登ってくる。 ブ「どうした!今の声は何だ!!」 ???「間男参上!ってか!いや?アバッキオの方が 間男かなァ?よォ!ブチャラティ! いい写真といいスクープ提供ありがとさん! そんでさァ、六億円の事なんだけどーーー、 言わなくても判ってると思うけど教えてくれるよな? 本当は人質取ろうと思ったんだけどさ、あんまり 殺し合いとか、俺したくないんだわ!疲れるしさ! だから早く教えてくれよー、「ブチャラティ一味 アブナイ乱交パーティー」とかいうネタを写真付きで 周りにばら撒かれたくなかったらさ!」 何処から聞こえてくるかわからない声に 「どこだ」「出てこい」とまくしたて ブチャラティ達は一斉に散らばり、船上をくまなく捜索する。 ???「無駄なことすんじゃねーよ。 こっから見ると超滑稽だぜ? 早く教えねーと一人ずつ恥ずかしいアングルで 撮っていくぜ?いいのか? 恥ずかしい写真を町中にベタベタ張られてもよ。」 ア「野郎・・・調子に乗りやがって・・・。」 意味のない行動だと馬鹿にしたような敵の煽りを 含んだ挑発に、ぎりぎりと歯ぎしりをする 仲間たちの顔に焦りが見え始める。 ブチャラティも迅速にいい解決策を出そうと必死だ。 そんな時、今まで押し黙っていたジョルノが 見えない敵に向かって声を張り上げる。 ジ「貴方が誰だかわかりませんが 僕は貴方を逃す気はありません! この事が世間に知れ渡ってしまったら、 ブチャラティが誤解(※重要)されてしまう! それだけは絶対に避けなければならないんです! そのことに関しては僕たちは必死だ!!」 ナ「その通りだ!てめー!! 生きて帰れるなんて思うなよ!! 」 勇ましいジョルノの言葉に続くようにナランチャも 敵に向かって怒鳴りたてる。 しかし所詮ただの強がりだと、敵は見くびったように 嘲笑ってふたりを罵った。 ???「馬鹿じゃねーのか?てめーら! 捕まえられるもんなら捕まえて貰おうじゃねーか。 ほれ来いよ。早く来てみろや!あーー? 逆にふんじばって、裸のままゲイどもの集まる店に 投げ込んでやるよ!みんな喜ぶぜー! タダで美少年ちゃん達とヤリまくれるんだからな!! 挿れまくり快感パーティーだってなー!!ヒャッハー!」 敵の声が響き渡る中、フーゴがブチャラティに かけよりぼそぼそと耳打ちをする。 ブチャラティはその言葉に頷くと船上の皆に声をかける。 ブ「皆、突然だが海に飛び込むぞ。大事なものは 各自用意するように。」 突然のブチャラティの命令に少し戸惑うも 皆は言われた通りに大事なものだけをトランクに詰め 船べりへと移動する。 突然の行動に一番戸惑っているのは敵の方だろう。 「何やってんだ!」と慌てて止める敵に向かって ミスタがブチャラティの代わりに簡単に説明する。 ミ「んーー、あのな?このままじゃ埒が空かないから もうこの船をドカンして お前ともどもバイバイしようと思って!」 フ「判りやすく言えばこの船を今から爆破しようと いうんですよ。判りましたか?判ったら 船と仲良く心中してください。」 抽象的な言い方をするミスタの説明に フーゴが後から丁寧に補足をする。 それを合図にしたように各自海の中に飛び込み ある程度距離を取って爆破ボタンのスイッチを押した。 その途端、大きな爆音とともに津波が発生し ブチャラティ達を飲み込む。 すると何の奇跡が起きたのか判らないが 一同は服を着たままの姿にもどっていた。 しばらくあっけに取られていた一同だったが、 ふと遠方から聞こえてくる遠吠えに一斉に振り向く。 そこには息も絶え絶えの敵が ブチャラティ達に向かって抗議をしていた。 ???「バカヤローー!!てめーら気は確かか!!」 まくしたてる男の顔に見覚えはないが 先ほど自分たちを貶めようとした「敵」に間違いないだろう。 それが分かるや否やナランチャが敵に向かって まるで魚雷のように突進する。 ナ「てめーーー!!逃がさねーっていっただろ!!」 ???「・・けっ!!服を着たところでスタンドが使えねーのは 変わんねーんだろ!!こいや!てめーみたいなガキ 一捻りで・・・・。」 ナ「うてーー!!エアロスミス!!」 ナランチャの声と共に小型の戦闘機が現れ 敵に向かって弾を打つ。 敵は弾の代わりに面を食らった様子で 慌てて泳いで逃げていく。 ???「うそーーん!!スタンド使えるのかよ!!」 ナランチャの行動に皆も後に続けとばかりに 敵を追いかけていく。 のちにブチャラティ達に捕まりボコボコにされたのは 言うまでもないが、肝心のカメラはどっかにいってしまい そのまま海の底に沈んで、浮かび上がってこないでほしいと 皆はただ切実に願うばかりだった。 終 戻る |