大人のきのこのおはなし
ジョナサンの家は豪邸で、今まで「衣食住」になんの
不自由もなかったが、大火事で家が焼けてしまった今 財産は残っているものの、贅沢など出来ない状況に なってしまった。 しかも今は旅の真っ最中だ、仲間も増え食べ物も 好きなときに好きなだけ食べられるわけではない。 よく食べるジョナサンにとって食べ物を制限するのは 少し辛い事だが、それは皆だって同じこと。 貧しい人は普段でさえ、ろくに食事ができないのだ。 これも勉強だ、自分にそういい聞かせ空腹に耐えていた。 だがそんな時に仲間というものは有難いもので 皆でカンパしたお金で何か買って分けてくれたり 自然の恵みを取って持ってきてくれたりしたので 特にひもじい思いもせず何とか今までやってこれている。 なんて優しく頼もしい仲間達なんだろう、 そしてそんな仲間がいる自分は幸せ者だ。 この幸福感こそが ジョナサンの空腹を和らげていたのかもしれない。 「ここだぜ、穴場中の穴場!!」 今日はスピードワゴンとその弟分達と共に食料である キノコ狩りに来ていた。スピードワゴンの案内で 深まった森の中まで連れて来られたそのあたりには キノコが一杯生えていた。 「凄いな・・・とっても取りきれないほどだ。 よく知っていたね・・!」 「俺達こういうところ探し当てるの得意なんす!」 驚いて目を見張るジョナサンを見て スピードワゴンの弟分達が得意げに自慢する。 「そんなことで自慢すんじゃねぇ!あ・・すんません こいつら褒められなれてないから・・・。」 はしゃぐ自分の弟分の幼稚な態度に、スピードワゴンが 慌ててジョナサンに謝る。 「そんな・・・自慢していいことだよ?少なくとも 僕は凄いと思うな。見習いたいよ。」 「有難うございます!判らないキノコはなんでも 聞いてください!・・あ・・いえ、兄貴に・・。」 更に褒められたのが嬉しくて、弟分は一瞬喜ぶが スピードワゴンの厳しい目線に気づき 慌てて自重し始める。 他の弟分もこれ以上睨まれない様にせっせと キノコ狩りをし始めた。 「さ、長々とお喋りしていると、ツェぺリの 旦那に怒られちまう。さっさとやってしまおうぜ。」 スピードワゴンがそう言うのも、ジョナサンの 修行の猛特訓中の合間に無理やり このキノコ狩りに誘ったからだ。 ジョナサンは皆の役に立てるならと 喜んで承諾したが、ツェぺリはなかなか承諾を してくれなかった。 そんな場合じゃないのは判るが、少しでも息抜きを させてやりたい一心でスピードワゴンがしつこく ツェぺリを説得をしたのだ。 仕方がないので数時間だけならという条件で ツェぺリはしぶしぶ承諾をした。 ジョナサンは黙々と先ほどスピードワゴン達から 教わった安全なキノコの選び方を思い出しながら 探していく。丁度傍にスピードワゴンがいるので この辺のはどうかと聞いてみる。 「あ、そこらへんのは大丈夫だ。心配しないで がつがついっちゃってくれ!」 「よーし・・とるぞ!!」 初めてのようにはりきるジョナサンだが 実はキノコ狩りは初めてではない。以前 大学でディオを含む仲間達とキノコ狩りにいった経験があるので そのとき培わった知識をさっそくいかしてみようと気合を入れる。 ジョナサンはキノコをしげしげ見つめ、それをおもむろに掴むと いきなり優しく撫でたり、揉み解したりし始めた。 「!!!!????」 心配だったのか横で見ていたスピードワゴンが そんなジョナサンの奇行に驚いて目を見張る。 自分の横の異様な気配に気づきジョナサンが驚いて スピードワゴンを見つめる。 「ど・・どうしたんだい?このキノコ 触れちゃいけないキノコだったとか?」 驚愕した表情のスピードワゴンに ジョナサンは疑問を抱きながら思わず尋ねる。 「・・・い・・いや大丈夫だけど・・ 一体・・何を・・・?」 プルプルと震えるスピードワゴンの 指先はジョナサンのキノコを捕らえている。 さっきキノコを撫でたり揉んだりしていた事を 言っているのだろうか。 「え?これ?知らないのかい? ちょっとサイズの足りないキノコは 優しく揉んだり撫でたりする事で そのストレスがいい感じで刺激になり 大きく太くなるんだって。」 どうやらこの裏技をスピードワゴンは 知らないようだ。ジョナサンは少し得意げになって 彼に自分の知っている裏技をおしえてやる。 「えっ!?」 「でも、どんな状態のキノコでも よい訳じゃないんだ。小さいキノコは 少しの摩擦でも傷がついてしまうし、 傘の開いたキノコは、もう成長しきっているから これをやっても駄目なんだ。太さは丁度 指のわっかにはまるくらいの太さがいいんだって。」 そういうと指でわっかをつくってスピードワゴンに 見せる。スピードワゴンは相変わらず困惑したままだ。 気のせいかもしれないが顔が少し赤い気がする。 「ええっ!?そ・・それ誰から聞いたんだ?」 「ディ・・いや・・・いくら敵になったからって 約束は約束だよな・・・。ごめんいえない。」 「すまねェ・・・。誰だか良く判っちまった。」 「あ・・・・・。敵なんて言っちゃったから ばれちゃったか・・。」 (いや・・・「ディ」でもうすでに・・・。) 「悔しいけど彼の知識だよ、彼は知識の宝庫だから。 彼には本当に色々と教えられるんだよ。 いいことも悪い事も・・・。」 そう言うとジョナサンは大学での初のキノコ取りに ディオたちと共に行ったことを思い出す。 偽りとはいえまだ仲の良かったあの頃を。 三年前 大学の野外レクリエーションにて。 ディオ『ジョナサンこれ見てごらんよ。』 ジョナサン『うわーーキノコだらけ!これ皆食べられる奴かい?』 ディオ『食いしん坊だな君は、勿論全部ではないよ。』 ジョナサン『そうか、毒キノコには気をつけないとね。』 ディオ『とりあえずあとで見てくれるって言うし、俺も多少は 判るから聞いてみて?』 ジョナサン『へー、すごいね・・・君詳しいんだ。』 ディオ『詳しいって言うか貧しかったからね、そういうものを 調べて売って、お金に替えたことあるから・・。』 ジョナサン『あ・・・ごめん。そんなつもりじゃ。』 ディオ『判ってるよ、でも今は君達の恩恵でこんなに 不自由なく暮らせているんだ。君が謝る事はないよ。 さ、しんみりしてないで一杯とろうよ。家の皆を 驚かすんだろう?』 ジョナサン『う・・うん。君の言うとおりだ、さーて・・どれにしようかな。』 ディオ『あ・・ジョジョ、これおいしいよ?』 ジョナサン『あ、本当だ、なんかおいしそう。食べ応えもありそうだ。』 ディオ『ふふ・・・君だけにいい事教えてあげる。俺が教えたって 内緒にしてくれるんなら教えてあげる。これも 貧しい者ならではの工夫さ。』 ジョナサン『ほんとうかい?約束するよ、おしえて。』 ディオ『あのね・・これは裏技なんだけど実はキノコの六割が ある刺激を与えると大きく太くなるんだよ。』 ジョナサン『ええっ!?本当かい?すごいな・・・じゃ・・早速・・。』 ディオ『あ・・まって、ちょっとしたコツがいるんだ。まずキノコに 与える刺激なんだけど、強すぎた刺激は傷がついてしまう。 だからある程度の大きさと太さがある奴を優しく撫でたり 揉んだりするといいんだ、うん、そうだなサイズは丁度 指のわっかに入るくらいのね。それと傘は閉じたもの 選ぶんだ、開いている奴は成長しきっているから 何にも起きないよ、オーケー?』 ジョナサン『そうか!わかったよ。よしさっそくいいのめっけ! なでなで・・・こんな感じ?』 ディオ『君は力があるからね、女性の手を撫でる感じだよ。』 ジョナサン『女性の手って・・・へ・・へんなこと言わないでくれよ。』 ディオ『いやだなぁ照れることではないだろ?じゃあ赤ん坊の 体を撫でる感じっていえばいい?』 ジョナサン『あ・・それなら何となく判る、いいこだ、いいこだ。』 ディオ『ついでだから「おっきくたくましくなあれ」って 思えばいいんじゃないかな?自分の赤ん坊のように。』 ジョナサン『あはは、そうだね、女の子の場合はそう言うわけには いかないけど。』 ディオ『やだなあ、キノコは全部雄のものにきまってるじゃないか。』 ジョナサン『えっ?なんかいったかい?』 ディオ『それともう一つ裏技、ちょっと舐めてみてピリッと来たら 食べられない事が多いよ。全てが当てはまるわけじゃないけど 試す価値はありだよ。ほらこれなんかどうだい?』 ジョナサン『やっぱり傘が閉じているけどそのほうがいいの?』 ディオ『全てがじゃないけど、成長しきってないやつの方が毒性も 弱かったりするからね。』 ジョナサン『そうか・・ん・・よく判らないな。』 ディオ『おっかなびっくりになるよねどうしても、でもこれは大丈夫 俺も食べた事がある奴だから。』 ジョナサン『やだなあ、最初に言ってくれよ。うん・・普通のキノコの 味がする・・・。』 ディオ『これで君もキノコ通だね。でも・・他の人にこのこと 教えちゃ駄目だよ、絶対だからね、約束だよ。』 ジョナサン『わかってるさ、約束だ。』 そう・・そして僕が取ったキノコの何割かが確かに にいつの間にか大きく太いものになってたんだ・・。 ジョナサンが昔話を語り終わると同時に スピードワゴンの弟分達がざわざわと騒ぎ立てる。 「え・・俺、キノコ詳しい方だけどそれ知らない・・。」 「かつがれたんじゃないのか?」 「でもよ・・、確かにキノコに変化はあったんだろ?」 「俺・・・すりかえられたんだと思う・・。それに そのキノコって・・アレに例えているように 聞こえてならないんだけど・・・。」 仲間達の意外な反応にジョナサンが慌て始める。 確かにディオとの友情は偽りだった。 彼が嘘を教えたことは十分に考えられる。 しかしそれを信じた自分の立場はどうなるのだろう。 仲間達の言葉も信じたいが、 ディオを信じた自分も信じたい。つい同意を求めたくて スピードワゴンを見つめると、彼も困った顔をしていた。 だがジョナサンの気まずそうにしている顔を見て スピードワゴンは慌てて弟分達を叱咤する。 「ば・・・ばかやろう!!おめーら勝手な事騒ぐんじゃ ねぇ!どっちが正しいかなんて判るもんか! ひ・・ひょっとしたらジョースターさんの 信じた事の方が正しいかもしれねーじゃねーか! てゆうか、細かいこたぁどーでもいいんだよ! 早く採取しろ!」 兄貴の叱咤に慌てて弟分たちはキノコ採りに専念する。 「すまねェ・・・弟分たちが勝手な事を・・・。」 「そうか・・?弟分とやらの方が正しいと思うぞ?」 スピードワゴンが謝るといきなりそれをさえぎる ように辺りから声が木霊する。 ジョナサンは即座に嫌な気配を感じ仲間達の方を 見ると既に彼らは地面に倒れていた。 そして木の上から良く知った影がおりたち、 ジョナサンの目の前にたちはだかった。 「・・・おまえは・・ディオ!!彼らを・・よくも!」 ジョナサンは仲間がやられたと思い、カッとなって その拳をディオめがけて打ち込むが、あっけなく 受け止められてしまう。ディオはジョナサンの拳を 掴みながらその口をゆっくり開いた。 「あせるな、お前の仲間は気絶してるだけだ。 なーに、すぐ目を覚ますさ。もう一人の親友は 俺の部下が丁重に束縛しているがな。」 あわてて後ろを見ると小男がスピードワゴンの口を 布で塞ぎ、両腕と両足を己の体でがっちりと 固定をしている。一生懸命もがいているが 小男の力が余程強力なのかびくともしないようだ。 「彼らに手を出したら許さない!」 「心配するなといったろ?今日はお前だけに用があるんだ。 お前の仲間など何の興味もない。」 いきりたつジョナサンに対しディオはいたって 冷静だ。それにしても自分だけに用とは なんだろう。ジョナサンはとりあえず警戒は しながらもディオの「用」とやらを尋ねる。 「なんだよ・・・用って!」 「まあ、たわいない話よ。実はお前に 謝ろうと思ってな。」 「謝るだって・・・?何を今更・・。」 ディオがした悪行の数など、まさにジョナサンも 覚えてられないほどだ。それに今更謝られても 許せないものも数多くある。 「さっきお前が仲間に教えていたキノコの事だ。」 「・・・やっぱりガセだったんだな!」 信じたくはなかったが、やはり嘘を教えられていたのだ。 しかしジョナサンはディオの嘘よりそれを信じた 自分に怒りを覚えた。 「それもあるが・・・それだけではない。 そのときお前が受けた誤解について 謝ろうと思ってな・・・。」 「ご・・・ごかいってなんだよ?」 「いや・・じつはな、お前、俺とのキノコ取り の話をしてただろう?」 「・・・聞いてたのか。ああ、そうだよ。」 「あの後、お前はすっかり俺の話を信用して 一人で頑張ってキノコとってたよな?」 ジョナサンはそういわれて思い出す。 確かに彼の言うとおりだ。 慣れてきたから自分ひとりの力で どれだけ取れるか試してみたいと思っのだ。 「そ・・それは、その時は君を信じていたからね。」 「撫でたり揉んだりキスしたり。」 「・・・う・・だ・・だから?」 確かにディオを信じていたので、実際に そう言うことをしていたと思う。そんなことは うそだとは知らずに。 だがキノコは彼の言うとおり立派になっていた。 でも良く考えると収穫したキノコが 大きくなったのは、きっと知らない間に ディオがすりかえたのだろう。 しかしそれがどうしたというのだろうか。 「あれ、他の連中にも見られていたぞ?」 他の連中、つまり大学の友人達だ。 一応廻りに人がいないか確認した上で 揉んだりしたのだが見られてしまっていたようだ。 「うそ!!恥ずかしい!!何で教えてくれなかったんだ!」 もう過去の事だから気にする事はないのだが 昨日の事のようにその姿を思い出すと ジョナサンは茹蛸のように赤面した。 そんなジョナサンを見てディオが鼻を鳴らす。 「お前は今、何を恥ずかしいと思ったんだ?」 「だって、キノコ相手にそんなことして・・ へんな奴だって思われて・・・。」 「やれやれ、相変わらず超鈍いというか 超ウブいというか・・・。」 ニヤニヤと自分を見つめながら勿体ぶったような 言い回しをしてくるディオにジョナサンは 苛立ちを覚える。 「なんだよ!もったいつけることないだろ! どういうことだよ!!」 「キノコや蛇に通づる体の一部があるが、 それはどこだと思う?ヒント、男にしか ないものだ。」 いきなりなぞなぞをふっかけられ ジョナサンは必死で考える。 蛇・・・キノコ・・・男にしかないもの・・・? そして一分経過。 「うーーーーーーーーん。あ・・・・!」 「遅いぞ。因みに舐めたり揉んだりキスしたり ぜーーーんぶ自慰やセックスと関係ある・・・。」 「うわーーーーーーーー!!」 ディオが全部説明し終わるまえに 突然頭の中にリアルな映像が映りこみジョナサンは 思わず悲鳴を上げる。揉んだり撫でたり 確かに自慰でもすることだ。つまり自分は それの擬似行為をキノコでやっていたわけなのだ。 「普通はキノコにそう言うことをすれば 男達はすぐそっちを連想するがな。 子供とお前はちがうみたいだが?」 さらに追い討ちの一言にジョナサンの頭は 爆発寸前状態になってとてもたっていられなくなり しゃがみこんで悲鳴を上げる。 「ぎゃーーーーーーっ!!!」 「仲間の何人かがそれを見たと 焦燥して俺に相談してきてな、俺なりに お前をフォローしておいたぞ?」 「なんて!?」 顔を赤くし涙目になりながらジョナサンは ディオに一縷の望みをたくし尋ねる。 ちゃんと上手くフォローしてくれたのだろうかと。 「人にはそれぞれ秘密にしている性癖がある。 だから責めたり批難したりはしないでくれって。」 「それって僕がそう言う性癖の持ち主だって 言ってるもんじゃないかーーー!!」 判りやすく言えば仲間の数人に 変態と勘違いされてしまったという事だ。 「それだけですめばいいが多分、何人かに 男との経験があると思われているぞ。 いや・・・誰か男とのセックスなしでは 生きられなくなったんじゃないかって いってた奴がいたな。」 これ以上はないだろうという追い討ちと トドメにとうとうジョナサンは泣き崩れる。 一方ディオのほうはそんなジョナサンをみて とても満足そうにしていた。 「うそだうそだ うそだーーー!!(号泣)」 「安心しろ絶対他に漏らさないでくれってお願いも してやったぞ?お前の為にこの俺がだ!」 「流石ディオ様!お優しい!」 あてつけがましいディオの台詞に小男が褒め称える。 「当たり前だ。このニブチンはまだ判らんみたいだがな。」 ディオは皮肉っぽく笑うとジョナサンを小ばかにしたように 見下ろす。一方ジョナサンは怒りと悲しみと羞恥で 体を震わせ力の限りディオに抗議する。 「永久にわからないよ!!!ああ・・・帰ったら 彼らとは顔を合わすことが出来ない・・・・。 どうしよう・・・。」 「なんだお前帰れる気でいたのか。多分それは無理だ。 俺に目をつけられたからな。(←プロポーズ) せいぜいキノコで男を喜ばすテクでも磨いているといい。 (この俺のためにな。)ははははは!!」 ディオはひとしきり高笑いをすると、小男に合図をする。 それを合図に小男はスピードワゴンを解放し ディオと共に森の奥へと飛び去っていった。 「何がハハハだ!!ディオのばかやろうー!!」 怒りに肩で息を切らすジョナサンの周りから哀れむ溜息が 聞こえてくる。仲間達が目を覚まし一部始終聞いて いたようだ。なんでことだろう、自分のはすかしい 醜態を聞かれてしまった。 ジョナサンはいてもたってもいられなくなり 思わずその場からかけ去ろうとした。 「まってくれ!!ジョースターさん!!」 スピードワゴンが慌ててジョナサンの腕を掴むので ジョナサンが必死でそれを振りほどこうとする。 「離してくれ!スピードワゴン!!僕は無知で 最低な奴だ!キノコにへんな事をする変態だ!! こんなやつ、ほっといてくれ!!バラもコスモスも 皆枯れてしまえばいいんだ!」 終始わけの判らない事を言って暴れるジョナサンに スピードワゴンが思わず怒鳴り声をあげる。 「ばかやろう!!!」 「え・・?」 初めて自分が叱咤されたことにジョナサンは唖然とする。 弟分達も尊敬しているジョナサンにまさか罵声を 浴びせるなんて思ってなかったのだろう、誰もが 口を出せず固まっていた。 「なんてことを言うんだ!ほっといてくれだなんて! それにジョースターさんの悪口は聞き捨てならねェ! つまり俺はあんたに自虐して欲しくねーんだ!! ・・・仕方ねーじゃねーか、何も知らなかったんだから。 あんたは直ぐ何でも信じてしまう所を悔いてるようだが 俺はあんたのその人を疑わない真っ直ぐな所が大好きなんだよ。 確かにそれが心配な所でもあるが、俺の生きがいは仲間と そんなあんたを守れる範囲でも守ってやる事なんだ!それなのに あんたにどっか行かれちゃ、俺の生きがいはどうなるんだよ! 俺はあんたが逃げたってどこまでも付いて行くぜ! 例え周りからどう思われようと、俺だけはあんたを信じる。」 自称クールな男の熱弁の後、暫くして辺りから弟分達の 歓声が湧き上がる。 「兄貴カッコいい!!!」 「そんな二人に俺らはしびれる憧れる!!」 「俺らもついていきますぜー!!」 周りからの拍手交じりの歓声の中、スピードワゴンは黙って ジョナサンの前に手を出す。ジョナサンはそれに黙って 熱い握手で返す。そして今までのことを謝罪した。 「ごめん。スピードワゴン、ごめん皆。そして バラもコスモスも、勝手なこといってごめん。 こんな僕だけど付き合ってくれるかい?」 「勿論だ。嫌だって言ってもついていくって言ったろ?」 仲直りの握手を済ませジョナサンとスピードワゴンたちは 沢山のきのこを土産にツェぺリの元へと戻っていった。 そして時は過ぎていき百年後・・・・。 今はディオはDIOと名乗り、別次元の過去を遡り 死に際のジョナサンを現代へと 攫い、ともに豪邸で暮らしている。 因みにDIOはこの状態を結婚したと言い張り ジョナサンの方は同棲だと言い張っていた。 「DIO!僕の話聞いてただろうね!!」 どう見ても聞き流している態度のDIOの 近くのテーブルをジョナサンは思い切り叩く。 「聞いてたとも、俺と別れてからの三流の お茶の間お笑い劇場みたいのは聞いてなかったが。」 言いながらDIOは小指で耳をほじくっていた。 完全に馬鹿にした態度にジョナサンはヒートアップする。 「僕達の感動の友情物語をお茶の間お笑い劇場とは なんだよ!そんなことだろうと思ったけどさ! それより僕に言う事はないのか!?」 「お前への変わらぬ愛か?俺は言葉より 体で語るタイプでな、何なら今夜・・・。」 女ならすぐ墜ちてしまいそうな 男の渋い色気を漂わせジョナサンを誘うが、 流石といおうかやはりといおうか、ジョナサンには 全く無駄なようだ。 この二人は実はもう出来ているのだが ジョナサンが性行為に超消極的なため 仕方なくDIOは、時には騙したり 時には力づくでジョナサンを抱いていた。 感度は良好で感じやすいようなので 嵌ればのめり込みそうな素質はあるのだが 彼の強固な理性とクソ真面目な性格が行為自体を どうしても受け入れたがらない原因を作っているようだ。 (早くお前から俺を欲しがるようになれ!バカが!) 性行為に後ろ向きなジョナサンに不満を覚えるDIOだが 不満があるのはジョナサンとて同じ事だ。 「謝罪だよ!謝罪!!何とか乗り越えたとはいえ キノコを見るたびあのことを思い出して・・・ いてもたってもいられなかったんだよ!?」 たった一言の「ごめん」「すまなかった」「悪い」でもいい。 それを言って欲しいのにDIOは元より謝罪する 気はないらしい。その上さらに自分の犯した「罪」を 悪びれもなく打ち明ける。 「そういえば俺も思い出した。」 「何を!?」 「お前俺とキノコ取した後、家に持ち帰り皆で 美味しく頂いただろう?そのときキノコの クリーム添えやシチューが痛く気に入ってたよな。 そしてそのことを仲間に話していただろ。 そのとき例のあれを見た連中が複雑な顔をしていたのを 思い出したんだ。」 謝って欲しいのにいきなりキノコの事で蒸し返すなんて・・ と、思いながらもジョナサンは律儀にもあの時の事を 思い出す。たしかにキノコのクリーム系の料理は 美味しかった。それを仲間に話したのもなんとなく 覚えている。でもそれがどうしたというのだろう。 「え・・・それってどういう・・・。」 「キノコに・・しろい・・クリーム状の・・・。」 「????」 普通の男ならこれだけですぐ連想が出来るのだが 21歳にもなってこの男の心は本当に白いクリーム のように真っ白なのだなとDIOは ほとほと呆れ・・・いや、感心した。仕方ないので ダイレクトにヒントを出す。 「アソコに・・しろい・・クリーム状の」 「ギャース!!」 顔を赤くしてジョナサンが叫ぶ。 やっと脳裏に描く事ができたのだろう。 DIOは呆れながらも内心ニヤニヤしながら ジョナサンをからかった。あいかわらず ジョナサンへのセクハラはやめられないらしい。 「スケベが。多分やつらもそう思っていたぞ。」 「みんなDIOのせいじゃないか!!うう・・・ 折角立ち直りかけたのに・・・。」 再び落ち込むジョナサンを後目に DIOは雑誌を開く。開きながら 視線だけをジョナサンに向けさりげなく嫌味を言う。 「無知なお前が悪い。仕方ないだろ?俺と早く くっついていればあんな恥はかかずにすんだのに。」 「どういうことだよ!」 「好きな奴は苛めたい法則という奴だ。 どうも俺はお前に三日一回はセクハラしなければ 調子が悪いらしくてな・・・たまにしか会えないから その鬱憤が堪って過去の話のようなことをしてしまうのだ。 つまりお前が傍にいれば、尻を撫でたり、軽く卑猥な事を 言ったりで済むんだ。だから俺は何も悪くない。 悪いのはお前だ。」 言いたいことを言うと、もうすっきりしたのか、 このことで言い合う気がないのかDIOはジョナサンを 無視し雑誌に集中し始める。 勿論ジョナサンはそんなDIOの態度に静かに 怒りを貯めていた。 「!(怒怒怒)・・・・。そうかい・・・判った。それはそうと DIO、君のキノコの話なんだけど、さっき新聞で見たら 椎茸ってキノコは雷の衝撃で大きくなるんだって。」 引きつりながらジョナサンはDIOに対してかろうじて 平常心を保ちながら話を持ちかける。相変わらず当の本人は 雑誌をみながら返事だけジョナサンに返す。 「ほう・・・。お前にキノコ事件を思い出さすきっかけを 作ったあの記事か・・・・。」 「僕、試してみたいんだけど、君のキノコで。」 ジョナサンの態度からして仕返しに、 何か可愛げのないことでも言ってくるだろうと 睨んでいたDIOは、お返しに再度セクハラ攻撃を お見舞いする。 「何だと?試されてみたいだと?またいきなり 濃厚なプレイを望むのだな、手加減レベルの 1ラウンドで死にそうな悲鳴を上げ 2ラウンド目には必ず気絶する奴が。」 「君はどこまで僕に羞恥プレイをかませば 気が済むんだい!?僕思い出したんだけど 君は僕と同じサイズのキノコに不満を抱いてたよね。 「はー貧弱貧弱」って・・。どう? 電気で大きくするっていうのは。さーて・・・でんき 電気・・・。あ・・いいのめっけ。さー電気ためるぞ!」 今日何度目になるか判らないセクハラにとうとう 堪忍袋の緒が切れたのか、ジョナサンはどかどかと 足音を立て辺りをさがす、そしていいものを 見つけたのかゴソゴソと何かをやり始めた。 それをみたDIOも、少し面倒な事になりそうだと 睨んで、言い訳をして席を外す。 「おっと、SMなら俺はSしかやらんぞ。ん? 誰かに呼ばれたようだ。じゃあな。」 「おいこら!誰も呼んでないぞ!逃げるな 卑怯者!!・・って・・DIOも意気地がないなあ。」 言いながらジョナサンは静電気をためた下敷きの 使い道をのがし、仕方ないので一人 ベこべこと音を鳴らしながら遊んでいた。 終わり |