放課後ジョナサンは保健室での用を済ますため
保険医のストレイツォしかいないのを確認し、
中にはいる。
そして十分後・・・なにやら湿った音と
ボソボソと話す声が聞こえてくる。

「気持ちいい・・ぬめぬめしてるけど。」

「ん・・・どうした?少し困った顔をしているな。
 ぬめぬめしているのはしかたない。
 構造上どうしてもそうなるのでな・・。
 ふふ、そんなに絡み付いて・・余程好きらしいな。」

「そんな・・・僕だけじゃないはずだよ。」

「そうか?お前は特にお気に入りだぞ?」

「そう言ってくれると嬉しいな。」

「ならお前も態度で示せ。」


{僕らとタコと先生と}


保健室のカーテンの中、その更に奥へ行くと
とても大きな水槽がある。ジョナサン達一人
くらいなら入ってしまいそうなほどの水槽だ。
ジョナサンは愛おしそうにそのぬめぬめとした
物をなでる。

「大好きだよ・・・えーと・・。」

「もう忘れたのか?ブラッティ・ゴドウィン・テイスター
 ・フォー・ロンバッハだ。」

「いつも思うんだけど・・本当に長い名だね、このタコ。」

言いながらジョナサンは自分のふくらはぎ辺りに
しがみついたタコを撫でる。
冷たくて柔らかくて、ぬめぬめしているのにも拘らず
つい何度も撫でてしまう。
このタコは別にジョナサンのペットではない。
保健室でかっている学校のペット、正確には生徒の
情操教育の為に保健室へおいたカーズのペットだ。

本来なら飼い主のカーズか、場所を提供している
ストレイツォが面倒を見るべきはずなのだが、
あえて、教育の一環として生徒達に面倒を
見させているのだ。
誰にさせるかはランダムだが、大体がクラスの
委員長の仕事となっているのだ。
たまたま今日はジョナサンが世話係になっていた。

ただ世話と言っても、難しい事はなく
水槽などの清掃が主だ。
手順としてはまずタコを退かし壷に入れ
その隙に水槽をあらい、海水を張るだけの簡単な仕事だ。

ただ一つの難点といえば、とても大きいタコで
その上ふにゃふにゃと柔らかく持ち辛い事である。
下手に足だけを引っ張ったりすると千切れてしまうので
細心の注意が必要だ。
ただしこのタコは普通のタコとは違い頑丈に
出来ているらしく今までにそんな惨劇は
一度も起きた事がないのだが。

「ホラホラはなして、いい子だから。」

ジョナサンは太ももまで這い上がってきたタコの
吸盤を離そうと優しく引っ張る。
しかしたこの吸盤というものはなかなか強力なもので
大きな魚のうろこでさえも剥ぎ取ってしまうことがある。

「ブラッティ・ゴドウィン・テイスター
 ・フォー・ロンバッハ、離してやれ、さ、水槽にもどれ。」

いつまでも離れないタコに向かってストレイツォが
短く命令すると、そのまま水槽にへばりつき自ら中へ
戻っていった。

「おりこうさん、君は頭がいいんだね。」

「タコは元々頭がいいからな、こいつは更に
 利口のようだが。」

ジョナサンは感心しながら水槽の外側のぬめりを取る。

「ふう・・・完了・・・かな?」

「ごくろうさん、ほら、このタオルを使え。」

「どうも。」

ジョナサンは真新しいタオルを受け取ると
タコが絡んできた体のぬめりの部分をふき取る。
今日は足くらいですんだが酷いときは上半身や
顔までぬめぬめになってしまう。
今のジョナサンは袖なしのシャツに短パンだ。
タコの面倒を見るときは誰でもその格好で行っている。
そうしないと衣服にもぬめりと生臭さが
染み付いてしまうからだ。
だが露出部が多い分タコの吸盤のあとも残ってしまうが。

「太ももに結構ついているな。絆創膏でもはるか?」

「血が出てる訳じゃないし大丈夫。」

ストレイツォに言われて改めて足を見ると確かに
赤いうっ血した所がある。
しかし特に痛いわけでもないしほっとけば治るし
帰るときには制服にも着替えるので問題はない。

「それでは、先生さようなら。」

「ああ、気をつけてな。」

ジョナサンはぺこりと挨拶をすると
後ろ手で扉を閉める。
そしてそのまま更衣室へ行こうとするが
いきなり現れた目の前の人物にそれを阻まれる。

「随分と話し込んでいたようだな。」

不意に耳に入る聞きなれた険を含んだ声。
そこには偶然なのか待ち構えていたのか
担任のディオが腕を組んでジョナサンを睨んでいた。

「何で怒ってるんだ?たこの世話をしてたのは
 判ってるんだろ?」

まるで保健室で遊んでたかのような口ぶりに
ジョナサンもディオを睨み返す。
しかし、ディオの視線はそんなジョナサンの
怒り顔のほうではなく、下半身を見ていた。

「・・・なんだ?その赤い跡は。」

「あ・・・。これはタコだよ。」

「ほう・・・タコプレイしていてついたのか。」

「タコプレイ??なにそれ。」

大人びた言い回しが判らないジョナサンは
ディオの言葉に素で頭をひねる。
そんなジョナサンの反応に少しイラつきながら
ディオはいきなりジョナサンのズボンを引っ張る。

「ついているのは太ももだけかな?」

ズボンだけならまだしもパンツの中まで
覗こうとするディオの手をジョナサンは
慌てて払いのける。

「なにすんだ!そんなところ覗くなんて
 失礼じゃないか!!第一紳士というものは・・・。」

「黙れ!お前の紳士論なんてどうでもいいわ!
 俺に贈呈する白ハムに傷なんてつけやがって・・。」

「白ハム・・・?」

自分は今何も持っていないし、今の時期は
お歳暮やお中元シーズンでもない、なのに何を言って
いるんだろうかとジョナサンは思わずディオを見つめる。
ディオはそんなジョナサンの太ももをビシッと指差し
バシッと言い放った。

お前の太ももの事に決まっているだろう!?

それ暴言だよね!?褒め言葉じゃないよね!?

「暴言?それは違うな、暴言ならもっと酷い事を
 言うつもりだからな。」

白ハム発言だけでも十分暴言だと思うのだが
それより上があるのだろうか。
ひどい言い草にジョナサンが怒る。

それでも教師か!!大体何か用があるのか?
 なきゃ、僕は帰るよ!別にいいだろ!?」

「あればいいんだな?」

不適に笑うディオになんか企んでいると
踏んだジョナサンがけん制する。

「今考えたって言うのは無しだよ!」

「何と生意気な・・・タコとのプレイには
 時間をさけるが俺とのプレイには一秒も
 時間を避けないというわけか!」

「意味がわからないよ!」

「ちょっとまて!お前胸の両端が
 赤いじゃないか!」

ディオが自分の胸辺りを指差すので
驚いてジョナサンは自分の胸を見回す。
今日はタコに上半身は触れられていない。
だから胴体に跡などつくはずがない。
つまりディオは「跡のようなもの」のことを
指しているのだとジョナサンは理解した。
胸の両端についているもの、つまりそれは・・・。

え・・・?だって、こ・・これはちく・・。
 わーー!変態だ!ディオは変態だ!!

白いシャツが水にぬれていたので
乳首が透けて見えていたのにジョナサンは気づく。
そして明らかにそれを指摘されたのがわかったのか
真っ赤な顔をしてディオを罵りながら更衣室へと
逃げていった。
ディオはその言葉に聞き捨てならないとばかりに
その後を追いかけていく。

「まて!シャツを脱げ!!くまなく調べてやる!!」

思い切り下品な会話をしながらディオとジョナサンの
追いかけっこが始まる。こんな下品な会話が
学校の廊下の中で平然と繰り広げられるのも
誰もいないからであるのはゆうまでもない。


それから数日後

「オイ、ブラッティ(以下略)しがみつかねーでくれ。
 足が重いぜ。」

水槽を一生懸命洗いながら承太郎は足元に
絡み付いているタコに対して少し愚痴をもらす。

今日は承太郎のクラスが「タコ当番」だった。
そして承太郎がタコの世話をしているのも
当然彼に白羽の矢がたったからである。
承太郎の本音としては別にやりたくないのだが
命令しているのがあのDIOなので断るほうが
面倒くさいので、しぶしぶながらやっているのだ。

「承太郎はなれたもんだな。タコは好きか?」

「好きでも嫌いでもねーけど・・・。まあ食うと
 うめーよな。」

もともとつまみ系が好きな承太郎は
頭の中にいろんなタコの料理を思い浮かべる。
刺身や酢だこ、乾き物のようなつまみなど。

「日本人はタコや烏賊が好きなようだからな。
 お前も日本人の血が入っているしな・・。」

「うまみ成分が豊富だからな。・・イテ・・
 おい、ブラッティ(以下略)そんなに締め付けんなよ。
 お前を食うなんて誰も言ってねーだろ。
 だが・・悪かったな、謝るぜ。」

いきなり足に絡みつく力を強めてきたブラッティに
思わず眉をひそめる。力加減はしてくれているだろうが
正直「全然痛くない」とは言えない力加減で
締め付けられる。
だがもしこのタコが人間の会話を理解するのだとすれば
タコの機嫌を損ねるような事を言った自分が悪いのだと
承太郎は素直に謝罪をする。
そしてその言葉が判ったのかタコは力を緩めてくれた。

「ははは、そいつ怒ったか?」

「タコは頭いいって聞くけど、こいつ本当に頭いいな。
 うちのジョセフより利口なんじゃねーの?」

「ジョセフだってなかなか知恵が回るぞ。」

「回るのは悪知恵ばかりだがな、第一こいつの方が
 聞き分けがいいぜ。」

承太郎は溜息をつきながらタコの頭を優しく
ピタピタと叩く。
タコはそれに応えるように腿のところまで
はいずり上がってくる。

「・・・重い・・・。」

水分を沢山含んだ体はお世辞にも軽いとはいえない。
それを片足だけで支えつつ作業をするのは
結構骨が折れるのだ。
床にはちゃんと住処のつぼが置いてあるのだが
何故かそこに入ろうとはせず、いつも清掃中は
誰かの足にしがみついているのだ。
無理やり引き剥がそうとするとますます
しがみつくので大体の生徒達はそのまま
作業を続行する。

「そいつは今15キロあるからな。
 おっと・・・なんだ?内線か?もしもし・・
 え・・はい、了解しました。承太郎すまん用が入った。
 俺はいなくなるが、終わったら俺を待たずに
 帰ってくれ。」

「ああ。」

そういうとストレイツォは何枚かの書類を持って
部屋を後にする。
残された承太郎は喋る相手もいなくなったので
黙って、清掃に専念する。
だが不意にズボンに入り込んできた足に気づき
清掃の手を止め、それをはがしにかかる。

「おいおい、DIOじゃあるまいしそんな所に
 足を突っ込むんじゃねーよ・・・。
 ん・・・?おまえ・・ここだけ吸盤ねーけど・・
 元からだっけか・・・?」

そういいながら吸盤がなくつるつるとしたそこを
じっと見つめながら弄ってみる。
自分の清掃中に事故でもあったのか、
または元々なのか、悩んでいると後ろから
予想もしていない声が飛んでくる。

その吸盤のないところは生殖器だ。
 余り弄ってやるな。

なっ!?

聞きなれた笑いを少し含んだ言い草に
慌てて振返るとそこにはDIOがいつの間にか
椅子に腰掛けて承太郎を見ていた。

何しにきやがった!!

「何でお前に怒られなきゃいかんのだ?
 用があるから来たに決まっているだろう?」

「ストレイツォならどっか行ったぜ!
 あんたも行ったらどうだ。」

憎まれ口を叩きながらまるで虫でも払うように
しっしっと手を払うが、DIOは
何を言われようが全く動く気がないのか
ドカッと椅子に座ったまま承太郎をからかう。

「ほう?で・・・どこに?」

「・・・そ・・それはしらねーけど。」

「なら、闇雲に探すよりもここで待っていたほうが
 いいな。異存はないよな?」

「く・・・。けっ、好きにしやがれ。
 だが邪魔すんじゃねーぞ。」

「何をだ?タコとお前のプレイをか?」

そーゆーよけーなこといって
 邪魔をすんじゃねーって言ってんだよ!

一瞬カッとなるも、このままでは
DIOのいつものパターンに陥ってしまう。
承太郎は何とか気を落ち着かせながら
タコの水槽の清掃に専念する。
その姿を見ながらDIOはいつもの調子で
いらないフォローを入れてくる。

判った判った、秘密にしといてやる。

・・いい加減にしねーとこのタコ、あんたの頭に
 かぶせるからな。

承太郎は額に青筋を浮かばせながらも
タコの重さとDIOの重圧に耐えながら
ひたすら手を動かした。
しかし承太郎とは対照的に暇なDIOは
頼んでもいないのに口を動かす。

「大丈夫か?お前の太いソーセージに
 タコの吸盤の跡がついているのではないのか?」

「・・・下品なこというんじゃねーよ。
 何を言い出すかと思えば・・・・。」

いきなりのシモネタ発言に承太郎の手が止まる。
よくそこまで変態的な妄想を膨らませるものだと
冷たい目でDIOを睨んだ

「下品?お前の太ももの事を言ったのに
 何が下品なのだ?」

「は?太もも?」

「・・・・お前まさか・・・俺が言った
「太いソーセージ」の意味を勘違いしては
 いないよな・・?」

「・・・・・。」

「まさかと思うが・・・お前らの一口大
 ポリポリウインナーの事を太いソーセージ
 などと勘違いした訳ではあるまいな?」

わざと驚いたように目を見開くDIOに
図星をつかれたのにか、からかわれた事に腹が立ったのか
承太郎は顔を真っ赤にしながら怒りを露にする。

く・・食い物にたとえんじゃねー!
 気色悪い!!大体太ももをソーセージに
 例える奴なんか聞いたことねーぞ!

「そうか?ジョナサンなんか白ハムって
 言われているぞ。だがお前やジョセフは
 ジョナサンよりも足が細い方だから
 太いソーセージと表現しているだけだ。」

「ジョナ兄を苛めんなよ・・。
 気にしてんだから・・。」

「美味そうだという意味も含めて言ってるんだ。
 何も気にする事はない。」

余計に気になるんだがよ・・・。

結局望まないお喋りをしながらの清掃は続く。
そして折角DIOのセクハラ攻撃が止まったと思ったら
今度はタコが再度ズボンの中に足を入れてくる。
勿論タコのこの行動は嫌がらせではないとは判っているが
DIOに見られるとセクハラ攻撃のきっかけを
作ってしまう。
承太郎は速やかにタコの足をその部分だけはがす。
しかし流石と言おうかDIOはそれを見逃さなかった。

「おい承太郎、タコの生殖器がまたお前の
 下半身を狙っているぞ。」

無垢な生き物に変な疑惑着せんじゃねーよ!

「変な疑惑とは何だ?無垢な生き物の繁殖行動を
 変な疑惑よわばりするのは、繁殖行動=卑猥
 と思っいるからだ。スケベめ。」

てめーが言うなー!!

それから清掃が終わったと同時にストレイツォが
帰ってくるが、その頃には既に承太郎の精神力と
体力は限界まで磨り減っていた。

それから数日後

放課後下校のチャイムがなり生徒達がぞろぞろと
帰っていく。
ジョセフの友達のシュトロハイムたちも
いそいそと帰り支度を始める。
だが、シュトロハイムのカバンを持つほうの手を
いきなりジョセフが掴む。

「・・・シュトロハイム、俺たち最高の仲間だよな?」

「勿論だぜ?それは否定しねぇ。」

ジョセフが余りにも真剣に聞いてくるので
シュトロハイムも真剣に応える。
引きつづき何かを訴えるようにジョセフが
更に真顔をする。

「仲間は助け合うもんだよな?」

「その通りだ。・・・だがな男たるもの
 試練には一人で立ち向かわなきゃならない時がある。
 今がその時だ。俺はお前の為に泣く泣く突き放すぜ。」

まるで自分から別れようとしない女を突き放すように
ジョセフの手を無情にも振りほどき
シュトロハイムが「あばよ」ときびすを返す。

ノーーーーーっ!!

「なにやってるんだよ・・・。もう・・皆笑ってるよ・・。」

ジョセフとシュトロハイムのオーバーリアクションに
教室に残っている皆がくすくすと笑う。
一緒にいる友達のスモーキーも呆れながら
くずるジョセフを説得する。

「ジョセフもう、諦めなよ、君の兄弟だって
 一人でやっているって言ってたよ?」

お前はあのタコと俺の相性の悪さを知らないから
 そんなこといえんだ!

そんなこと知るか、とばかりにシュトロハイムと
スモーキーは目で会話する。

「お前動物は牛意外はオッケーなんだろ?なんで
 タコは駄目なんだよ。」

俺がタコを駄目なんじゃなくてタコが俺を駄目なの!

「意味わかんねー、悪いけどタコの件に関しては
 俺らはお前の代わりをすることは出来ねーぞ。
 カーズに釘刺されてっからな・・・。」

タコ当番は担任からじかに指名されるので、それを断るのは
余程の理由があるときだけだ。
無論、嫌いだからとか、嫌われているからなどを
理由に断れるはずもない。
しかも当番があのジョセフなので、誰かに押し付けないように
カーズが先に生徒達に手を回したのだ。

「チクショー先に手を回しやがって・・・。」

「君の兄弟に頼んでみたら?手伝ってもらうとか。」

「うーん、そうだな、承太郎はつめてーから駄目だろうが
 にーちゃんなら手伝ってくれるかも。」

そう言ってジョセフはジョナサンのいる3−Aの教室まで
いそいそと向かっていった。

その少し前3−Aの廊下にてスピードワゴンと
弟分たちが何やら熱心に話しこんでいた。

「今日は俺たちの良き記念日っすよね?」

「え?記念日?お前ら誕生日だっけ?」

「違いますよー。俺たちの兄貴が誕生した・・。」

「え?そんなことが記念日なのか?」

確かにこの三人の弟分たちとは
小学校に入ってからの長い付き合いだ。
だが何月の何日に仲間になったかは
詳しくは覚えていない。

「そんなこととはひどいッス!
 俺たちにとっては記念日なんすよ?」

「・・・そ、そうか。ならお前らになんか
 奢らなきゃかな・・。あんまり金がないから
 たいしたもんは・・・。」

スピードワゴンが不安げな顔をして
ポケットの財布を取り出したので
弟分たちが慌ててそれを制止する。

「何言ってるんですか!俺たちが兄貴に
 プレゼントをするんですよ!」

「なに?バカ言うな!そんなもの貰えるか!」

「貰ってくれなきゃ困るッス!
 もう用意してるんだから!」

そういうと弟分たちは何かのチケットを渡す。
それはここの学生達もよく利用するお好み焼き屋の
タダ件だった。
一枚につき二枚タダと書いてあり弟分たちは
それを二枚スピードワゴンに渡す。

「一枚につき二枚か・・それが二枚ってことは
 四枚のお好み焼きが食えるな、俺を含めて
 丁度四人だな・・・。
 じゃあ・・今からいくか?」

弟分思いのスピードワゴンは
自分だけいい思いをするのは嫌なので
皆を一緒に誘おうとする。
しかし弟分たちはニコニコと顔を見合わせながら
それを断った。

「ちがうっす!それは一枚は兄貴の分ですが
 もう一枚はジョースターさんの分です!」

「え・・・?だ・・だが・・、
 これには期限が今日までって」

ジョースターさんとはもちろんジョナサンの事だ。
スピードワゴンはジョナサンを慕っているのを
弟分たちは良く知っているので、気を利かして
兄貴の為にお節介を焼いてやったのだ。
だがスピードワゴンがよくてもジョナサンにも
都合というものがある。
スピードワゴンは確かに内心喜んだがそれ以上に
ジョナサンの都合がとても気になっていた。

「ジョースターさんの都合なら大丈夫ッス。」

「兄貴が付き合って欲しいって言ったら快く
 了解してくれました!」

「それに俺ら最近お好み焼きとかたこ焼きは
 食べ過ぎて・・当分食いたくないんです。
 という訳で二人で食ってください!」

「兄貴頑張れ!!いいトコ見せて友情度
 アップしてください!それでは!」

は?え?ちょ・・おま・・・。

伝える事を伝えると、邪魔者は退散だとばかりに
弟分たちは早足で去っていく。
それと同時にジョナサンがスピードワゴンに
近づいてきた。

「スピードワゴン、付き合って欲しいって言ってたけど
 どこに行くんだい?」

「わ・・・ジョースターさん!えーと・・それはつまり!」

心の準備をしていないスピードワゴンはしどろもどろに
なりながらジョナサンにこれからのことを説明した。

そんな初々しい出来事があった更に数分後・・・。

「やべー・・兄ちゃんいないじゃん・・」

折角3−Aまできたのにジョナサンの姿はどこにもなく
ジョセフの顔に焦りが見え始める。
丁度その時スピードワゴンの弟分たちが教室へ
戻ってきたので、ジョセフはすかさず彼らに声をかける。

「あ!おい皆!うちのにーちゃん知らない?」

「兄ちゃん?ああ、ジョースターさんのことか。
 えーとそれなら・・・。」

少しドン臭そうな弟分の一人がうっかり
本当のことを言いそうになったので
すかさず他の弟分が途中で口をはさむ。

「ジョースターさんなら兄貴と二十分位前に
 どっかいったぜ?どこかは聞いてねーけど
 少なくとも学校にはいないぜ。」

ジーザス!!なんてこったい!心当たりはないのか?

「全然わかんね。悪いな。」

本当は心当たりはあるし、まだ学校にいるかもしれない。
だが弟分たちは二人の仲を誰にも邪魔をして欲しくなかったので
ジョセフには気の毒だったが大嘘をついたのだ。

「おい、放課後に騒いでいる奴は誰だ。特に用のないものは
 速やかに下校しろ。」

騒ぎを聞きつけたまたま近くを通ったカーズが生徒達を叱る。

「へーい、先生さよなら、ジョセフもじゃあな。」

「さいなら・・・そんじゃあ先生もさよなら。」

「帰るなタコ当番。お前はタコの相手をしてから帰れ。
 サービスだ俺が保健室まで連れて行ってやろう。」

いらねーーー!!

さりげなく自分も帰ろうとするジョセフの襟首を
カーズはぐいっと引っ張ると保健室まで強制連行した。
そして半ば放り投げるようにジョセフを保健室に
押し込めると無情にもその扉を閉めた。

幸い保健室には誰もいない、そして誰もいないことに
ジョセフは胸をなでおろした。

(ストレイツォがいねーのは正直助かる・・・。)

実はジョセフはストレイツォが苦手だった。
否、ストレイツォが苦手というよりもいきなり豹変する
ストレイツォが苦手なのだ。
ジョセフに言わせるとストレイツォは
どうも二重人格らしいのだ。
だが承太郎もジョナサンも他の誰もがもう一つの
人格とやらを見たことがない。
だがストレイツォがジョセフを特に嫌ってる
というわけではない。
それが証拠にたまにだが、普通の保険医として
丁寧に接してくれるときもあるからだ。
そのお陰でますます豹変するストレイツォのことを
誰に話しても信用してくれないわけなのだが。

ちらっと外を見るとシーザーが外で部活動の
生徒達の指導をしている。
本音で言えばシーザーにも手伝ってもらいたかったが
自分ばっかリ特別扱いしてもらう訳にはいかないと
ジョセフなりに遠慮していた。
シーザーは友達ではなく先生だ、仲はいいが相手は
年上でしかも教師だ。
更に血の繋がりも何もないし近所のお兄さんでもない。
加えて昔からの知り合いでもないので
頼める正当性のある口実が何もないのだ。

(タメだったらな・・・。)

着替えながらハァと深い溜息をつく。
眼下には大きな水槽。
つぼの中には大きなタコ・・・がいない。
まさかと思い水槽をくまなく見て回ると
思い切り水槽の内面にタコが張り付いてた。

「あっ!畜生!また張り付いてやがる!!」

ジョナサンや承太郎や他の連中に蛸の事を
聞くと皆つぼに大人しく入っているという。
しかしジョセフのときだけはいつも水槽の
内面に張り付いているのだ。
最初から妨害してやると言わんばかりに。
これがジョセフがタコ当番を嫌がる原因の
一つでもあった。

「この・・たこ焼きの具の分際で!!」

思い切り引き剥がしにかかるが、吸盤の力が
強力すぎてなかなか剥がれない。
おまけに体がぬるぬるしているので
掴みづらいのも手伝って引き剥がすのに難航する。

「てめー・・塩塗りたくってやろうか!」

いつの間に持っていたのか食卓塩を
ズボンのポケットから出して手に振り掛ける。
するとそれが判ったのかタコは自らするすると
つぼの中へ入っていった。

「チャンス!」

そのチャンスを逃さずつぼごと外に出す。
これで第一関門はクリアーだ。
次は水槽の清掃をしなければならないが
なるべくストレイツォが来るまでには終わらせたい。
だが雑にしてしまうともう一度やり直さなければ
ならないので迅速且つ丁寧にこなさなければならないのだ。

中の海水を抜き、砂利を退かしスポンジでぬめりを取る。
ストレイツオもまだくる気配がない、
今日は早いトコ終わりそうだ。
しかしタコはしずかにジョセフににじり寄っていた。

「わっ!!くっつくな!食卓塩のパラパラ攻撃を
 受けてーのか!?」

しかしポケットの中の食卓塩はジョセフより先に
タコが取ってしまい、そのままゴミ箱の中へ
捨てられてしまった。

お前本当にタコか!?

余りの頭の良さに唖然とするジョセフの体に
タコがしがみついてくる。
足だけでなく胴体や肩にまでその触手を
伸ばしてくる。
まさにその様は今にも食べられそうな
人間の図だ。

「わーーーータコに殺される!!」

「そんなことするか、そのタコは賢いんだ。」

不意に聞こえてくるその声にジョセフはぎょっとする。
そして青ざめる。
何故ならそこにはいつの間にやら入ってきたのか
ストレイッツォがたっていた。
しかも一番遭いたくないもう一つの人格の
ストレイツォだ。

「どうしたジョセフ。それはタコ踊りか?」

まとわりつくタコに七転八倒をしている
ジョセフを見てストレイツォが楽しそうに
嫌味を言う。
このタコはストレイツォとカーズのゆうことは
よく聞くので、普段生徒がタコに困らされていても
彼らの一声ですぐやめさせることが出来る。
だが性格の悪い人格の方の
ストレイツォにジョセフを助けようという気など
全くおこる筈もなくなすがままにさせていた。

「踊ってねーし!!てゆーか助けるだろ、
 生徒がこんなになってたら!!」

「助ける必要はないな。何度も言ったが
 そのタコはお前を殺そうとはしない。
 まあ・・悪戯するかもしれないがな。」

「悪戯って何だよ!くすぐり攻撃か!」

「ほう・・子供らしい発想だな。ところでお前
 タコと絡み合う人間が描かれた古い春画が日本に
 あるのを知っているか?」

「春画」、なにやらどこかで聞いたことがある響きだが
今は悠長に考えていられる状態ではない。
無知だと思われるのは癪だが気になるので
聞いてみる。

「春画って・・・?」

「今で言えばエロ本だ。」

「げっ・・・。何で昔にそんなマニアックな
 ものがあるの!?」

昔からエロ本というものは存在していたと
言う事はうすうす判っていたが
まさか触手プレイのようなものが
昔からあることに心底驚く。

「そんなの知るか、もう一つ教えてやる。
 その八本の足の中に生殖器があるんだが
 お前それはどれだか判るか?」

「知るか!!」

虚勢は張っているものの体にへばりついている足を
何となく気になって見回してしまう。

「タコは気に入った相手を見つけると
 足同士を絡ませて、生殖器を挿入するそうだ。」

「おれタコじゃねーし、タコみたいな足ねーし!!」

 「そうだな、だがタコの足みたいなものがあったら
  そこに足を絡ませてどこか近くの穴に生殖器を
  挿入させてくるかもしれないぞ?」

ちら・・とストレイツォがジョセフの下半身に
視線を落とす。
つまりタコの足のようなものとは・・・
そしてその近くの穴というのは・・・・。
イヤンな想像をしてジョセフは途端に青ざめる。

・・・・うそーん!!おいタコ!早まるな!
 俺はお前好みじゃないぞ!それに俺は男だ!」

「そいつにとって人間の雄雌なんかどうでもいい事だ。
 お前らは知らないだろうがそいつは気に入った人間が
 いると太ももの方まで這い上がっていくんだ。
 実はなかなかの色好みで、ももまで這い上がって
 いく相手は大体美少年と決まっている。
 良かったじゃないかタコに認められて。」

うれしくねーー!!

半ギレしながら一生懸命タコの足を
引き剥がそうとするが、なにせ人間の手が
二本なのに対し、タコは八本だ。
その上ぬるぬるするので一本づつですら
うまくはがせない。

「おいおい、いいのか?タコの足がお前のズボンの中に
 浸入したぞ?そのままいくと春画のような
 結末になるが・・・?まあ俺は構わんが・・。
 こんなプレイお目にかかることはなかなかない。
 いい機会だじっくり楽しむとでもしようか。」

ストレイツォはにやりと笑いながら
椅子に腰掛ける。

「ぎゃーーー蛸に犯される!!初めてのお相手が
 蛸だなんていや過ぎる!!お願い!!先生止めて!
 ・・・いつみてもいい男ですね★!!

「お約束乙だな、自分で防げ、だがどれが生殖器だか
 教えてやるつもりはない。ヒントもなしだ。」

ジョセフのお約束のお世辞もさらりとかわし
カーズ張りの陰険さと冷たさでそれに応える。
憎たらしい相手の前で最後まで弱みを見せまいと
虚勢を張っていたジョセフだったが、
それも時間の問題で段々余裕がなくなってくる。

「PTAに訴えてやるー!くそ・・・えーとどれだ?
 あっ!!左足にも伸ばしてきやがって・・。」

「一本一本はがしていると間に合わなくなるぞ?
 くくくく・・・。」

もはや本気で楽しんでいるストレイツォに
命がけの懇願は無意味だ。
ジョセフはなんとかタコに必死で訴えかける。

たこちゃん!!やめてお願い!もう誰でもいいから
 ヘルプミー!!

そしてそのヘルプミーの声が届いたのか知らないが
返事の代わりにボールが保健室の窓を割りついでに
ジョセフの頭にも直撃した。
その衝撃で蛸は慌ててつぼに戻りストレイツォも
不意に正常な意識を取り戻す。
そして外から叱り声が聞こえ、シーザーが慌てて
窓へ駆け寄ってくる。

「すいません!!生徒が球を謝ってそっちに・・・
 誰かけが人は・・・・。あ・・・。」

心配して窓から覗き込んだシーザーの眼下には
ジョセフがうつ伏せになって倒れており
けが人が出てしまったことに思わず閉口する。

「・・・大丈夫だ気絶しているだけだ。」

人格の戻ったストレイツォが速やかに
ジョセフの状態確認をする。
そして問題がないのを確認すると
シーザーに安心するように言い聞かせた。
ちなみにストレイツォにはジョセフを苛めていた
時の記憶は微塵もない。
気づいたらジョセフが清掃していた、それだけだ。

「蛸の水槽の清掃中に・・・悪い事をしたな。
 ストレイツォ先生、今日はこいつの変わりに俺が
 やります。」

行儀が悪いとは思いつつもシーザーは窓から
保健室へ入ってきて、ジョセフの傍に
座り込んだ。
そしてそっと彼を抱き起こす。

「いいんですか?忙しくはないですか?」

心配するストレイツォの傍らで
シーザーがジョセフを静かにベットまで運んでやる。

「生徒達には部活を中断させたくないんで。
 なぁに、こいつより俺は仕事速いですから。」

笑いながら腕をまくると
シーザーはてきぱきと清掃をこなしていく。
清掃が終える頃ジョセフの意識はやっと戻るが
何でこんな事になったのか記憶があやふやとしていた。
ただ蛸にひどい目にあわされたという事だけは
ぼんやりと記憶に残っていた。
そしてシーザーとストレイツォに心配されながら
ジョセフは保健室からふらふらと出て行った。
心にわけの判らないモヤモヤした物を残したまま。

二時間後お好み焼き屋にて

「美味しかった!スピードワゴンの焼き方が
 上手だったからかな?」

「そんなことないぜ!ここのお好み焼きが
 美味いからだぜ。へへへ・・・。」

上機嫌でお好み焼きを食べ終えたジョナサンと
スピードワゴンは、充実した気分に酔いしれていた。
そしてスピードワゴンはそんな機会を作ってくれた
弟分たちに感謝せずにいられなかった。

(俺はいい弟達を持って幸せ者だぜ・・・。)

思わず涙ぐみそうになるのを必死で堪える。
そんな時近くの席から聞いたことのある
声がする。

たこ焼きをください・・涙の数だけ・・。

「ジョセフ!?」

「に・・・にーちゃん!!それとスピードワゴン!
 あ・・俺あっち行っていいすか?知り合いがいたんで。」

そう言うと店員の返事も待たず、ジョナサン達の
席に滑り込む。

会いたかった会いたかった会いたかったyo!

いきなり感情的になってしがみつくジョセフを
何とか落ち着かせ、取り乱した訳を聞く。
よくわけの判らない言い分も多かったが
蛸のせいでエライ目に会ったという事だけは
理解できた。
よく判らないが傷ついている弟を
慰めようとジョナサンがメニューを手に取る。

「ジョセフなんか食べる?僕が奢るよ。
 あ、良かったらスピードワゴンも・・・
 お礼といっちゃあ何だけど・・。」

「いや俺は・・・!」

ジョナサンの好意に慌ててスピードワゴンが
首を振る。
いい所を見せるために奢ったのにその日の内に
奢り返しされるなんて、これでは弟分たちの
好意が無駄になる。
腹が膨らんでもう入らないことを理由にでも
しようと断ろうと思ったその時。

いいや!俺が二人の分奢る!すいません!
 コーラー大ジョッキ三人前!それと
 たこ焼きチャレンジコース三人前!!

何を思ったのかジョセフがとんでもない
注文をいきなり大声で頼みだす。
周りからオオーと感嘆の声が響く。

ええー?

ちょ・・ジョセフ!たこ焼きチャレンジコースって
 なんだよ!?

ジョセフが言ったたこ焼きチャレンジコースとは
百個のたこ焼きを一時間以内に食べれたらタダになる
という地獄のコースだ。
しかもそれを三人前だ、一人百個なのは変わりないが。
因みに食べられなければ一人千円も取られてしまう。
ジョセフは残しても自分が皆の分もキチンと払う
からいいと言っているが、ほかの二人としては
はいそうですかと、甘んじるわけにはいかない。

おのれタコめ!敵をとってやる。

テーブルの皿の上に盛られた大量のタコ焼きを
ジョナサン達はただ呆然と眺めていた。

そして一時間後言いだしっぺのジョセフは
何とか平らげたが、ジョナサンは三十個残し
スピードワゴンは五十個残した。
因みに残したたこ焼きは持って帰れるのだが
スピードワゴンは家族はタコ嫌いだし
弟分たちはたこ焼きなどは当分食いたくないと
言っていたのを思い出し、残りを全てジョナサンに
持ち帰らせた。

ジョナサンは動けないジョセフをおぶり
たこ焼きで一杯になったお腹を抱えながら
よろよろと家へ帰っていった。

夕方、一人先に帰った承太郎は夕飯は何にしようかと
冷蔵庫を覗く。
今夜は我が家の女三人が、全員旅行に行くとのことで
夜ご飯を作る者が承太郎たちしかいないのだ。
その時ふとチャイムの音がなり、客でも来たのかと
インターホンの来客センサーを覗く。
しかしそこにはジョナサンがジョセフをおぶって
更に何かを手にぶら下げて突っ立っていたので
慌ててドアを開ける。

承・・・太郎・・・ただ今・・・。

なにやら顔色が良くないが目立った外傷はなく
喧嘩などをしたわけではないらしい。
そのままふらふらと歩き、ガクンと玄関に膝をつき
ジョナサンとジョセフはそのまま
苦しそうに倒れこんだ。

最初食中毒か何かと思ったが理由を聞くと
たこ焼きの食べすぎという呆れた理由に
承太郎は溜息をつく。

「何やってんだよ・・・。みっともねー・・。
 じゃあ、二人は晩飯はくわねーよな?」

コクコクと頷く二人を居間まで引きずると承太郎は
自分の夕飯の支度をするべく台所に入る。
しかし不意にジョナサンの声が承太郎を止める。

「承太郎・・・。たこ焼き嫌いじゃないよね?」

「あ?まあな・・。百個も食いたいとはおもわねーけど。」

まるでジョセフにあてつけるかのように
ちろりと本人を睨む。
当の本人は伏せているのでそれに気づいていないが。

「これ食べてくれない?お持ち返り分・・・
 正確には食べ切れなかった分。」

「・・・まあいいけど・・夕飯作る手間が省けるし。
 何個あんだよ。」

「八十個・・・。」

八十!?八個の間違いじゃなくてか!
 無理に決まってるだろ!?

承太郎は他の二人と比べ、食が細い。
それでもそこ等へんの女子よりは食べるが
バカ食い、やけ食いの類は今までしたことがない。

「今日中に食べなきゃもたないんだ・・。どうしても・・
 無理なら・・・僕頑張って・・手伝うから・・。

明らかに一口も口に入らない様子の
ジョナサンが健気な事を言うので
承太郎が意を決したように口を開く。

判ったよ・・・俺が食うよ!!くそ・・・
 おい元凶!フツー「俺も頑張って食べる」って
 お前が言うべきだよな!!

言いながらいつまでもへたばっているジョセフの
尻をぐりぐりと踏みつける。
それに対しジョセフは「寝たふり」で承太郎に
応戦する。

「すやすや。」

揺すってやろうか!オラオラ!

やめてーリバースするぅー!

結局二人の腹は深夜になってもなかなか
減る事はなく、承太郎は一人で時間をゆっくり
かけながらなんとかたこ焼きを頬張った。

そして翌日、休日ではあったが
完全に消化不良を起こした三人は
バットモーニングをむかえ、げっそりしながら
どこへも行けず、家の中で長い一日をすごしたという。



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