![]() 前書き それぞれのキャラが 次元を超えて出会う作品と なっております。こういう作品は 今後もどしどし出てきますので どうぞお付き合いください。 二人の鬼 エピソード1 「不思議な鏡」 ジョースター家に強盗が入った。 メイドを人質にしてナイフを振りかざす。 しかしそのナイフがメイドに振り落ちることはなく 強盗犯はその大きな体を床に沈めた。 背後から忍び寄ったジョナサンにきつい一撃を食らったのだ。 メイドや執事、使用人たちからの歓声。 ジョナサンは意気揚々とその場でガッツポーズをとった。 しかしその歓声は厳格な家主の叱咤によって静まり返る。 「ばかもん!!なにをしとるか!!」 思わず身を竦めたジョナサンだったが、階段から降りてくる 父に向って誇らしげに自分の行為が正しかったことを語る。 だが相変わらず父はその厳しい表情を変えることはなく あたりに響く声でジョナサンを再び叱咤した。 メイドや執事、使用人たちの懇願もむなしく ジョナサンは倉庫に閉じ込められてしまった。 もちろん昼飯と夕飯は抜きである。 どうして判ってくれないのか、何が不満なのか。 正しいことをしたのに何故あんなに怒られなければならないのか。 ジョナサンも、もう十五歳。 あれからディオとも仲直りして今はよきライバルだ。 ただ今はディオはいない。父の知り合いの名家に呼ばれ 少しの間そこで過ごすことになっている。 だからこそ、今はこの家を僕が守らなければいけないのではないのか? 父が自分を憎んでいないことはわかる。心配してるから怒っていることも。 だけどもう少し自分を信用してくれてもいいのではないだろうか。 ジョナサンはあれからメキメキと強くなっていき、この辺じゃ彼にかなうのは ディオくらいだ。二人ならチンピラ如き倒すのは造作もないことだ。 ほかの少年より二人は体格はいいものの、 まだ大人にかなう体型ではない。 それでもその二倍の大きさの大人に勝つこともしばしばあった。 「あーあー、お腹すいたな・・・・・。」 薄暗い室内でため息を漏らす。ふと誰かが見ているのに気づく。 「うわ!・・・って・・なんだ鏡か・・・」 安堵のため息を漏らし鏡に近づく。かなり埃をかぶっているが 自分の姿はかろうじておぼろげにみえた。 「へえ・・・」 自分の身長よりある大きな鏡。シンプルなつくりだが何か気になる。 なんか惹かれるというやつだ。ジョナサンはそっと 鏡の埃を手で拭った。 「痛っ・・・」 滑らかな鏡のどこで手を切ったのがわからないが、ジョナサンの指に うっすらと血が滲んでいた。 いけない・・・・父さんのコレクションを血で汚してしまった。 慌てて手で拭おうと鏡を見ると確かにジョナサンの血はついていたが 次の瞬間・・ ス・・・と消えてなくなった。 「どうして・・・?」 何度も目を凝らす。怖いとゆうより不思議だった。 しかし何度見てもジョナサンが拭き取った跡と そこに移る自分の翡翠色をした瞳しか映らなかった。 よし、こんなチャンスめったにない。この鏡のことを徹底的に調べよう。 どうせ今日はもうここから出してもらえないだろう。 腹は空いていたがそれよりも彼の好奇心が 空腹を忘れさせた。 しかし大抵そういうときは上手くいかないもので・・・ ガチャ・・・後ろのドアが開く音。 優しそうな執事が微笑みながら 「お許しが出ましたよ・・・・。」 そういってジョナサンをそこから出した。 ああ・・・今日は何をやってもうまくいかない日なのだな・・・ そう思いつつもジョナサンは執事たちの優しさに素直に感謝した。 あれから書斎に入り込みあの鏡のことを調べようとしたが 父親はまだご立腹で、ジョナサンが自室から出ることを許さなかった。 ジョナサンは苦いコーヒーを無理やり口に流し込み、チョコレートを口直しに たべる。一つ、また一つと。見る間に箱の中のチョコはなくなっていく。 「あ・・・いけない、いけない・・・。」 夜更かしするためとはいえ、夜分に甘いものは控えるべきだ。 エリナにも注意された。 『もう・・あんまり食べると太っちゃうわよ?そうなっちゃったら 私ジョナサンに手作りのケーキを食べさせてあげられないわよ?』 そう言って意地悪そうに笑ったっけ。 未練がましく箱の中を見つめつつも、思い切ったように机の引き出しに それをしまう。 そろそろいいかな・・・。ランプに火を灯し静かにドアを開けあたりを伺う。 あたりはシン・・・と静まり時計の音のみが聞こえる。 幸いなことに裸足なのでいつもより音を 立てずに倉庫に近づくことができた。 白い大きめな寝巻を翻しドアを開けてさっと倉庫の中に入り扉を閉める。 ジョナサンが、かちゃ・・・と鍵をかけたと同時に後方がまぶしく光る。 驚いて後ろを見ると先ほどの鏡がキラキラと光り輝いている。 「・・・・すごい!!」 思わず手に持っているランプを落としそうになりながらも 鏡に近づく。悪い癖だ。好奇心が何よりも勝ってしまう。 何があるかわからないのに、手を伸ばしてしまう。 ディオもこれを見たらきっと驚くだろう。 今日でも戻ってくるのならぜひこれをみせてやりたい。 だが・・・その光は徐々に薄れていきそして・・・・ まるでランプの光が消えたようにふっと 真っ暗になってしまった。 「あ・・・あーあ・・・」 がっくりと落胆するがそこで諦めるようなジョナサンではない。 とにかくこの鏡に関する資料がないか。 今ならだれも使っていないであろう書斎に行こうとドアに手をかけた。 がちゃり・・・ ? 何かさっきと感触が違うような気がする。 まあいいか・・・。 なるべく音をたてないようにそーっとドアを開ける。 しかし次の瞬間ジョナサンは目を疑った。 いつもみなれた大広間・・・しかし徹底的に違うのは まるで何百年も住んでいなかったかのように エピソード2 「おにごっこ」 あまりの突然の出来事に頬を叩く。頬をつねる。 これは夢だ。きっと夢をみているんだ。 そうだもう一回倉庫へ戻ろう。そう思い踵を返すジョナサンだったが 何故かもう一片方の足が固まって動かない。 それもそのはず、土気色した乾いたミイラのような手がジョナサンの 足首を握っていたからだ。 「う・・うわあああ!!」 足を思い切り振る、手に渾身の力を込め引きはがす。 ミイラの手首を叩き落とした地面からぼこぼことほかの手が 湧き出てくる。 今までどんな相手でも怯まず戦ってきたジョナサンだったが こんな敵が相手とは想定外だ。しかも相手が生き物かどうかも分からない。 相手に背を向けるなんて・・・・などと言ってられない。 しかし彼に逃走する選択はなくなっていた。 今出てきた出口がないのだ。 呆然とする彼の白い寝巻をなにかがひっぱる。そう手首だ。 普通の少年なら腰を抜かして絶望するであろうがジョナサンは違った。 そこら辺に落ちている木の棒で果敢にも戦いに挑む。 かなりの長期戦を覚悟したその時だった。 「待て。貴様ら。」 誰が発したか判らない言葉が手首の動きを止めた。 ジョナサンは手首にかまわず声をしたほうをみつめる。 見つめたほうから声がする。 「ジョナサン・ジョースターか?」 聞いたことがない声の持ち主に名前を当てられ、ジョナサンは 不審に思いながらも「そうだ。」と力強く返事をした。 その途端カツンと地面に鋭い音がしたかと思ったら ざざざざ・・・と周りから何かが引く音がした。 そのままかつんかつんと誰かが近づく気配がする。 そのだれかの足音を聞きながらぼんやりと考えた。 聞いたことがない声・・・?ほんとにそうだったか。 誰かに似た声をどこかで聞いたことがないだろうか。 思い当たる節はある。でも彼なはずがない。 目の前にその姿がくっきりと浮かぶにつれそれは確信に変わる。 しかし何点か腑に落ちない点もある。似てる・・・。 声だけではなく顔も・・・・。 「やはりな・・・・しかしその姿はどういうことだ。」 美しく顔立ちが整っているその男はジョナサンを見下ろして呟く。 そこら辺の男たちよりもさらに高い身長。金髪。 マントの中に隠れてて判らないが 肩幅から言ってもきっと鍛え上げられた肉体であろうことは間違いない。 切れ長の紅い瞳がジョナサンを射抜く。 いまだ彼を見つめることしかできない。 ジョナサンに男は再度尋ねる。 「貴様はどうしてここに・・・・?」 その言葉にジョナサンはばつが悪そうに眼を伏せて 彼に訳を話す。きっと馬鹿げていると鼻を鳴らされるかもしれないが 嘘をつく事は出来なかった。 「・・・・わからない・・・家の倉庫の不思議な鏡をみて・・・ 急に光ったと思ったら、いきなりここに・・・戻ろうと 思ったけど出口がなくて・・・。」 金髪の男は表情を変えないままジョナサンを見下ろし戸惑いを 隠せない口調の彼の言葉に耳を傾ける。 「ふん・・それで貴様はこれからどうするのだ?」 相変わらず無表情のままジョナサンに質問を投げる金髪の男。 その言葉にジョナサンは口をきつく結び、大きな瞳を男に向けた。 負けない。絶対に諦めないぞ。絶対にここからでるんだ。 彼の言葉の代わりに決意の強い瞳が、そう語っているような気がした。 「きっと出口を見つける・・・!例え時間がかかっても!」 そういうとジョナサンは踵を返し探索を続けようと 足場の悪い地面を慎重に歩き続ける。なにか手がかりはないか。 ふと、必死で探す背中から含み笑いが聞こえる。 無駄なあがきと馬鹿にしているのか。思わず男を睨む。 しかしその男のあまりにも冷たい笑みにジョナサンは 体が石になったように固まってしまった。 「最高の・・・ひまつぶしができそうだ・・・。」 金髪の男が一歩一歩と近づく。本能が危険を呼びかけているのか 一歩一歩後退するジョナサン。 「鬼ごっこをしてやろう。俺が鬼だお前は逃げろ。捕まっても三回だけ 逃げるチャンスをやる。もし最後まで逃げ切れなかったら・・・」 言いながらもゆっくりと近づいてくる金髪の男。 「お前はおしまいだ・・・・。」 紅い目が光る。 怖いのを紛らわす為か馬鹿にされて許せないためか ジョナサンは男に向って叫ぶ。 「ふざけるな!!僕はそんな馬鹿げた遊びに付き合ってられないんだ!」 男はそんなジョナサンの叫びを無視して数を数え始める。 「いーち・・・」 「おいっ!きいているのか!!」 「にーい・・・」 「やりたいんなら勝手にやればいい!僕はしないからな!!」 「さーん・・・」 「・・・・・」 「しーい・・・」 「くっ・・・!!」 駆け引きに早くも負けたのはジョナサンのほうだった。 金髪の男の動向に注意しながら軽やかに階段をかけ上る。 確かこの部屋はバルコニーに通じているはず。 素早くドアのノブに手をかける。 だがそれより先に一回り大きい男の手が ジョナサンの手をつかんだ。 「うあっ!!」 力強く掴まれたせいで指の骨がきしむ。 痛みをこらえようと男の手から自分の手を振りほどき もう片方の手で懸命におさえる。 「これで一回目だ」 悔しそうに睨むジョナサンを男は満足そうに見つめると くるっと背を向けてまた数を数え始める。 「つ・・・」 悔しがってる暇なんてない、逃げなければ。 隠れなければ。いつもなら戦うという選択肢を 忘れていないジョナサンだったが、今は訳の判らない 恐怖から逃れることしか考えられなかった。 階段のさんを使って下に滑り降りる。今もそうだが 父親の見ていないときはこの手をよく使って 遊んだものだ。 ものすごいスピードで下の階に到着する。 この間まだ二秒しかたってない。次のドアはどこだ。 目の前に広がる大広間そのすぐ先は食堂。 他にもワイン蔵や地下室も頭に浮かんだが食堂に向う 足から急にそちらには曲げられない。 食堂のドアを思い切りあけるとそのまま厨房へ。その外へと 手を伸ばす。ここで先ほどの嫌な思いがよみがえり 後ろを振り向く。いない。いける。 しかし振り返った彼の体にぶつかったのは、冷たく硬い 鉄の扉ではなくヒトの体だった。 腕を組みながら冷ややかな笑みを浮かべて ジョナサンを見下ろす金髪の男。 一瞬固まるも、すぐ踵を返すジョンサン。 まだ捕まってない。逃げるチャンスはあるはずだ。 しかし次の瞬間ジョナサンの体は宙に舞う。 男に足を蹴り上げられたのだ。そのまま男に 足を捕まえられると厨房の大きな調理台に叩き付けられる。 男にしたら『軽く叩き付けた』なのだろうがジョナサンは息が詰まるほどの 衝撃に背中を丸くして唸り声をあげた。音を立てて転がる食器。 突然ジョナサンが更に悲鳴を上げる。大きく鋭い包丁が彼の ふくらはぎを切ったのだ。 「ち・・・。」 金髪の男が忌々しそうにその包丁を払いのける。 自分の手で傷をつけるのならともかく、こんなもので傷を作るなどと・・・ 一瞬ジョナサンの寝巻の襟首をたくし上げる男だったが、何を思ったのか そのまま料理台にジョナサンをそっと戻す。そして血の流れている ジョナサンのふくらはぎを『軽く』掴んだ。 その痛みで再び悲鳴を上げるジョナサンのふくらはぎを男は自分の 赤い舌で舐めとる。 その瞬間痛みに耐えて閉じていた瞳をかっと見開くと、どこにまだ そんな力が残っていたのか男の顔めがけてこぶしを繰り出す。 肉を打つ音。だがそれは顔ではなく 大きな掌に当たった音だった。自分より一回り小さなその拳を 握ったままジョナサンの肩の後ろへと回す。 ジョナサンは無理な方向に腕を曲げられて顔をしかめ呻く。 金髪の男はその様子ににやりと笑うと再びふくらはぎの傷に 舌を這わせる。わざと舌を傷口の中に入れるように。 「ぅわあああ!!」 あまりの痛みに足に渾身の力を込めるがびくともしない。 涙目になりながらも睨みつけることを止めないジョナサンの 顔に男は鼻と鼻が当たる距離まで近づけて・・・・ 「二回目・・・」 そう言って唇についた血を舌でなめとった。 その時白く尖る歯をジョナサンは見逃さなかった。 いや男がわざと判るように見せたのかもしれない。 吸血鬼・・・ 本で読んだことはあるが、まさか本当に見れる日が来るとは思わなかった。 それもその被害者がまさか自分になるということも。 男に解放された、まだじんじんと痛みの残る足を引きずりながら ジョナサンは男に尋ねる。 「おまえ・・・吸血鬼なのか?」 「そのようだな」 「狙いは僕の血か?」 「そうでもありそうでもないと言える。」 「・・・!どっちなんだ!!一体目的はなんだ! 何故見ず知らずの僕にこんなひどい仕打ちをするんだ! 僕はあんたに何もしていないはずだぞ!」 ぎりっと歯を食いしばりなおも男を威嚇するジョナサン。 そんなジョナサンをしばらく見つめていた男だったが 突然掴んでいた手首をひねりあげる。 「いっ・・!ああああ!!」 再びくる痛みになんとか耐えながらジョナサンは男を見上げる。 鬼・・・・ そこにいるのはまさに鬼の形相をした男だった。 今にも噛みつかんばかりの形相をした男は ジョナサンの顔を片手でつかみ無理やり自分の顔に近づける。 「なにもしてない・・・だと?なら教えてやろう・・・大人になった貴様は この俺の行く手を阻み、この俺の野望をことごとく邪魔し、こともあろうに 何度もこの俺に敗北感をあじわさせてくれる。これでもなにもしてないとい えるのかああ!」 「うう・・・!!」 顎の骨をくだかれそうな力に何も言えないジョナサンに男は続ける。 「あまり・・俺を興奮させるなよジョジョ・・今のお前は脆い・・ この俺がどれだけ『我慢』をしているか『手加減』をしているか まだわからないのか・・・?いまお前の顎をつかんでいる この手を軽くスライドさせただけでお前の首は胴体と おさらばさせることだってできるのだぞ?」 男の手に力籠る。一瞬覚悟を決めたジョナサンだったが 男の気配が離れていくのを感じ恐る恐る目をあける。 男はジョナサンに背を向けたまま話を続ける。 「さ・・・ファイナルチャンスだ・・。」 10カウントを始める間一髪にジョナサンが止めに入る。 「まってくれ!聞きたい・・聞きたいことがある!」 男は背を向けたままジョナサンの質問に返事をする。 「・・・一回だけだ。ただし俺の正体に関する質問には答えん。 俺たちの関係やお前の未来に関することもな・・・。」 ぴしゃりといわれ言葉を詰まらすジョナサン。一番聞きたいことを 否定され、仕方なくいずれわかるべきであろう今の自分の 結末を彼に質問することにした。 「・・・僕を殺す気なんだな・・・?」 それだけの質問をゆっくりと投げかける。しばしの間。 いきなり男の笑い声があたりにこだまする。 男はそのままジョナサンに顔を向けると半ばあきれ顔で 馬鹿にしたように笑いながら呆然としているジョナサンに 言った。 「お前は何を聞いていた?大人になったお前が 俺を邪魔しに来るといっただろう?」 「だ・・・だから障害になる前に殺そうと・・・」 ばん・・・とジョナサンの座り込んでいる料理台に手を置く男。 相変わらず呆れ顔のまま身構えるジョナサンに対して言った。 「・・・アホが・・俺はなお前と戦うこと自体はすごく楽しみに しているのだ・・・。気に食わないのはお前が俺に一瞬でも 勝つことだ・・・。あらゆる面でな・・・・。」 男はまた背を向けるとそのまま話を続ける。 「そうだな、頭の足りないお前に判りやすいように 説明してやろう。お前が負けたら・・・・」 「犯してやる・・・いや・・情婦のように 扱ってやる・・といえばわかるか?」 ジョナサンの目が大きく見開く。情婦のことも 性のことも決して詳しいわけではないが、耐え難い辱めを 受けるということだけは判る。明らかに動揺している 瞳を男は楽しみながら耳元で囁く。 「お前は、穢れ無き魂をたくさん持っている。 その中の一つ、純潔の魂・・・」 「おれが『お前はおしまいだ』といったな。 それはお前の中の純潔の魂はおしまいだ・・・ そういいたかったのだ・・・・。」 「もっとも・・・その魂が壊れるか壊れないかは お前のその精神力にかかってくるわけだが・・・・。」 「お前の心が強ければ強いほど、俺は愉しめる訳だ。」 そういうと、とん・・とジョナサンの体を押し、後ろを見せる男。 「いーーーち・・・」 その声に、はっと我に返り外への扉を開けようとする。 「・・・外に逃げられるなどと思わんことだな。」 男の冷ややかな言葉。それ以上は口にせず再び 数を数えだす。つまり外は全て無駄たということ。 ジョナサンには元来た道を戻るしか手段がなかった。 再び大広間に出る。だがジョナサンはこれ以上逃げるのを止める。 逃げても無駄なら戦うしかない。確かここにあったはず・・・。 すがるような目であたりを見回す。 あった。壁にかけてあるサーベル。その輝きはまだ失われていない。 慌ててそれを取ると、ブンと一振りして 今から来るであろう敵に向って構える。 学校でも家でもサーベルの扱いは一通り勉強している。 もっともそれで人を傷つけたことはないが。 怯んだらやられる。心を鬼にして剣を振るうしかない。 額に汗がにじむ、まだ肌寒いが緊張の為、顔が紅潮する。 相手が鬼なら自分も鬼になるしかない。 そしてその『鬼』はゆっくりと近づいてくる。 男は満足そうに笑うとその手を伸ばしてくる。 今しかない。 ジョナサンは気合を入れた叫び声とともに男の胸に 深々と剣を突き刺した。 感触はあった。だがとても嫌な感触。人の肉を 切る感触。これ以上耐えられず柄から手を離そうとするが 男の手に掴まれる。 男の苦悶の表情。苦しそうに呟く。 「さすがだ・・・そうだそうこなくては・・」 そういうとジョナサンの手ごと剣を引き抜く 「だが・・・・」 「心臓の位置はここだぞ?ジョジョ・・・」 そう言ってジョナサンの手ごと男は自身の胸に剣を 深々と突き刺した。 「ううっ・・・!!」 固く目をつぶりぶるぶると手を震わす。ゾクッとする 嫌な感覚が体を走り抜ける。 まるで自分が刺されているような感覚さえ覚える。 男から顔をそむけていると小さく笑い声が聞こえる。 「痛みを感じるのか?ジョジョ・・・刺されているのは 俺なんだぞ・・・?本当に『感じやすい』んだな貴様は・・・。」 思わず男を凝視する。男は剣を引き抜き・・・ 「チェックメイト」 そう呟いてジョナサンをあざけわらった。 エピソード3 「絶対絶命」 大広間に怒声と叫び声が木霊する。その声は全部 ジョナサンのものだ。彼は今だ柱にしがみついて 抵抗していた。情けないと笑われてもいい。臆病だと 罵られてもいい。だが、自分は負けた時の条件を 承諾しているわけではない。男はそんな諦めの悪い ジョナサンを呆れた顔で見下ろしていた。 「やれやれ仕方ない。『ここ』でするか・・・。」 一気に血の気が引く。男の顔が近づく耳元で囁く。 「見ろ・・・あの者どもを・・・」 そう言って指をさした方向にはいつの間にいたのか 気味の悪い化け物たちがジョナサンのほうを見つめている。 「奴らは人間がいたぶられるのを見るのが好きな化け物どもだ。 おまけに血も大好物でな・・・俺たちの『行為』を見て 興奮してくるかもしれん・・・・」 「俺も見られていると興奮するたちでな・・そうなるとお前に 『手加減』出来なくなる。出血させることもあるだろう。 いたぶられた上に血を流している人間なんかを見た日には あいつらも堪らなくなって『行為の最中』でも構わずに、 お前の血を舐めにくるだろうな・・・。」 そう告げるだけ告げると再び男は立ち上がる。 そう時間もたたずして、ジョナサンは目を見開いたまま柱から手を離した。 「賢いな。いい子だ。」 紅いマントを翻すと、軽やかに跳躍して男は二階の階段の、さんの 所に座りジョナサンを見下ろす。 「エスコートなどされたくないだろう?その足で上ってこい。 奴らには手を出させん。勿論姑息にも 逃げようと思わなければの場合だが。」 ジョナサンはのろのろと立ち上がり、ゆっくりであるが階段を一歩一歩と 登っていく。まるで死刑台への階段だ。 俯いた彼の表情は男から見えない。口をきつくむすび肩を震わせながら、 一歩一歩登る。一歩一歩登るたび階段に ひいてある赤い敷物に染みを作る。 最後の一段。染みの原因である両目を袖口で拭うと激しく男を睨みつける。 「・・・・最高の表情だな・・・」 男はうっとりとした笑みを作ると目の前の扉を静かにあける。 「入れ・・・」 「いわれなくても・・・っ。」 ぎり・・と歯ぎしりをして扉の中に入るジョナサン。しかし 部屋を見た途端、驚いて目を見張る。 と同時に後ろのドアが閉まっていく音がする。 はっとして引き返そうとするジョナサンの体を男はむりやりベットへと 押しつけた。 なんてことだ。これは父の寝室。壁の上には優しく微笑んだ父の肖像画が 飾ってある。 「お前は・・・・!どこまで卑劣なんだ!!」 両手をわなわなと振るわせて今にも噛みつかんばかりの ジョナサンをしり目に男は壁を、ドンとたたく。 その衝撃で父の肖像画が落ちる。ジョナサンと丁度目線の合う位置に。 「・・・尊敬するお父様に貴様の『成長する姿』を見てもらえ・・・。」 そう言って男はマントを投げ捨てるとジョナサンの首元に顔をうずめる。 「この・・・卑怯者おお!!!」 ありったけの声でジョナサンは叫ぶ。男を一層 喜ばすことも知らずに。男の腕を肩を指が食い込むまで 強く掴む。無駄だということも判らずに。 そんなジョナサンを男は無視して寝巻の前のボタンを外していく。 腹のところまで外し終わると、手を滑り込ませる。その途端 ジョナサンの体が弓なりに沿った。 震える手で男の腕を掴むが、なんの制止の意味も持たない。 「ふ・・・細い筋肉だ・・・」 鍛えているとはいえまだ少年特有の幼さを残した 体を男は撫でまわす。 「やめ・・・ろっ!」 首を振ってジョナサンは拒絶する。ふと前を肌蹴た男の 胸が目に入る。さっき自分が刺したものと男自身が傷つけたもの。 まだ血は滲んでいたものの、もう深々と突き刺した傷ではなくなっていた。 「舐めろ・・・」 男の命令に「誰が!!」と強く言い返す。 男はクク・・・と笑い「その答えは正しいぞ」 と言うとジョナサンの顔を自分のほうに向かせた。 「俺の血を飲んだものは俺と同じになるかもしれんからな・・・」 俺と同じ・・・男は吸血鬼だ・・・つまりそれは・・・ 「忠告はしたぞ・・・今からする行為にどう対応するか気を付けるんだな・・」 そういうといきなり尖った爪の指でジョナサンの口をこじ開け、自分の舌を 強引に割り込ませる。初めて口の中を嬲られる 感触にジョナサンは総毛だった。 つい反射的に舌を噛み切ってやりたい 衝動に駆られるが、男の言葉をはっと 思い出し、歯を立てられなくなった。 『俺の血を飲んだものは・・・』 「う・・・っ・・・う・・」 懸命に懸命に男の背中を引っ掻く。血が出ている感触がわかるが 先ほどの剣のことでも判るように男には何の痛みも感じないのだろう。 まさに無駄なあがきしかできない。こういうのを 蟷螂の斧とでもいうのだろうか。 ジョナサンからすれば果てしなく長い拷問 からようやく解放され、咳き込みながらも 一生懸命呼吸する。 「お利口なものにはご褒美をやろう。そうだろう?お父様?」 男がにやりと笑い肖像画に視線を配るとつられてジョナサンも、つい『父』 のほうを見てしまった。何故見てしまったんだと激しく後悔する ジョナサンを心の底から楽しむように、はだけた腹から下の寝巻を一気に 切り裂く。 そしてわざとゆっくり時間をかけるようにまだ幼さの残る彼の上半身を 舐めまわした。一番感じやすいであろう胸の当たりは丹念に ゆっくりと。 一方のジョナサンはそんな男の気の狂いそうになるような愛撫という 屈辱に、自分の腕を噛みながら必死に耐えた。 血が滲むほど強く噛む。そうでもしなければ気が狂う。 涙があふれる。いいように嬲られる悔しさと狂うような 感覚にたえられずに。 ふと男の愛撫が止まる。瞬間腕を噛む力を緩めるジョナサンから 腕を引きはがす。 男は血のにじんだジョナサンの腕をひと舐めすると とても優しい、残酷なほどやさしい顔で彼に囁く。 「・・・かわいそうに血が滲んでいるじゃないか・・・ ほら・・・噛むのなら俺の指でも噛んでいるがいい。」 そういうと男は無理やり口の中に指をねじ込んだ。 「んぐ・・・・ううっ!!」 指はジョナサンの舌を嬲りながら再び男は胸への執拗な 愛撫を始める。 「うううっ!!」 もうおかしくなりそうだ。早く殺してほしい。 どうせ敵わないのなら、無様に生き恥をさらすなら。 涙が止まらない。そんなみっともない姿を父にみられていると思うと なおも涙があふれる。そんな自分を見て男が喜んでいると思うと余計に。 でも・・・負けたくない・・・こんな男に絶対屈したくない。 「ん・・・?」 男が再び愛撫を止める。ジョナサンが男の指を噛んだのだ。 血が出ないほどにではあるが、普通の人間なら痛みに指を 引っ込めるくらいに。男にしては蚊に刺されたほどでも ないだろうが、一瞬気が緩んだのかジョナサンの手で 簡単に指が引き抜かれる。 指を力強く掴んだまま男を睨みつける。その目は もう涙を流していない。強い光を宿した瞳だった。 男がふ・・・と目を伏せる。 そして次の瞬間あたりに響くような大声で笑った。 「ははははは!!!最高だ!!貴様はなんて最高な奴だ!」 男は笑いながらなおも叫び続ける。 「面白い!最高に愉快だ!!快感だ!!そうでなくては! 貴様はそうでなくてはな!!」 「どんな女と寝ている時でもこんなに気分が高揚したことはないぞ!」 未だに笑いが止まらない男の様子をジョナサンは注意深く伺う。 どこかに隙はないか・・ずり・・と後ろに後ずさりする。だがその瞬間 先ほどよりも強く男にベットに押し付けられる。 男の顔が近い。切れ長の紅い瞳が真近にせまる。 「すまなかったな・・・子ども扱いをして・・」 優しく、とても優しく、偽の笑顔を張り付けて。 「今から貴様を大人と同等の扱いにしてやる。」 そう言った男の顔からはもう優しい笑顔などない。 狂気に歪んだ笑みを浮かべた鬼のような顔をした男がいた。 「・・・頼むから簡単に壊れないでくれよ?先ほどの物とは くらべものにならない感覚がお前を襲うだろうが・・・ 出来るだけ保ってくれよ?この俺の『快楽』の為に・・」 そう言ってジョナサンの下着に手をかける。 が・・ ズン・・・・外から重々しい音がする。それを聞いた男は 表情を硬いものに変え、体をジョナサンから離す。 ジョナサンはその隙を見逃さず、素早く男との 距離を取った。男はそんなジョナサンを無視し憎々しそうに 扉の外を見つめる。 「とんだ邪魔者だな・・・。」 誰か来ているのか?ジョナサンにはわからない。 ただ男の様子だと歓迎する相手ではないようだ。 男はマントを羽織るとジョナサンに一言忠告した。 「ここを暫く出るな、お前は今以上に後悔することになる。」 それ以上男は何も言わず父の部屋を出ていく。しばらく様子を 伺うジョナサンだったが相変わらず外は何の音もしない。 そっと扉を開ける。しかしその扉はそれごと物凄い力で 外された。思わずノブから手を離し床に叩き付けられるジョナサン。 自分を見下ろす黒い影に、ばっと影の持ち主を見上げる。 顔は暗くて見えない、かろうじて金の髪を持っていることだけは判った。 だが・・・さっきの男ではない。さっきの男がまるで大したことのない 存在に見えるくらい物凄い威圧感を体で感じる。 「・・・ジョナサン・・ジョースターだな・・・?」 また、見ず知らずの男に名前を呼ばれた。 一体どうなっているのか。この男も自分と因縁のある男なのか。 男は返事をしないジョナサンの肩をいきなり掴んだ。 決して強くではないが掴まれた肩にすごい重圧を感じ 思わず小さく呻く。 「ちいさいな・・ま・・よかろう・・・。」 そういうと片手でジョナサンを持ち上げる。 突然のことに面喰いじたばたともがく。 「・・・無駄なことをするな・・・」 ギュウ・・・とジョナサンを抱えている腕に力を込める。 「く・・・苦しい!!」 上手く息ができない。男は無表情のまま『どこか』へ向かう。 「どこへ・・!!僕をどうする・・・!!」 息も絶え絶えにジョナサンはなんとか男に質問する。 男は無表情のまま、あの男と同じ冷たい瞳を向けたまま その質問に答える。 「俺の存在する世界へ連れて行く」 「な・・・なぜ!!」 「お前の体が必要だからだ。」 「だから・・・どうして・・!?」 ジョナサンの苦し紛れの質問に男はぴたりと 足を止める。そして一言。 「来れば判る。」 そういってある部屋へと入っていく。 そこの部屋は倉庫のような部屋だった。 おかしい・・・確かにさっきは消えていたのに・・。 壁を見ると大きな黒い穴、どこに続いているかわからない 暗い闇。その傍らに先ほどの鏡。思わず手を伸ばすが届かない。 男の冷たい声がジョナサンの耳をかする。 「お前はもう戻れない。これからは俺がお前を飼う。」 そう言って男は初めて表情を変えた。暗くてよくわからないが それは笑っていたように見える。 「俺はお前が憎い、だがお前に執着もしている。」 一歩また一歩と闇に近づく。 「俺はお前が屈するさまを見たい。最後の最後で 俺の手で・・・屈するさまを・・・」 深い穴へ。闇の穴へ。 「それまで俺が飼ってやる。期待するな・・・ 愛など与えられると思うな。死にたいと思う 毎日を俺がこれからじかに与えてやる。」 男の片足が闇の中に入ると同時に 突然男の紅い舌がジョナサンの輪郭をなめる。 「お前の全てを支配してやる・・。」 体に悪寒が走る。 同じだ。この男も同じなんだ。ジョナサンはしきりにあがく。 その拍子に、する・・と男の腕から体が外れる。 男が近づく。この状況を楽しんでるかのように。 せめて一太刀浴びせられないか。周りを見回す。 ふと鋭利なものがあるのに気づく。がむしゃらに それを掴むと男の肩に向って突き刺した。 素早く距離を取る。しかし男は笑ったままだ。 だが次の瞬間男の表情が消える。 それと同時に男の姿も消えていく・・。 「ふん・・・貴様は本当に運が良いな・・・ だが・・俺は諦めた訳ではない。その時まで せいぜい生きていろよ・・・・」 男の体が完全に消えると同時にカシャンと何かが 地面に落ちて砕けた。鏡のかけらのようだった。 ジョナサンは脱力して鏡に寄り掛かる。 何が運がよいものか。運がよかったら こんな目に合うもんか・・・ もうだめだ。意識が遠のいていく。 今日は余りに色んなことがありすぎた。 段々考えることが出来なくなり、 ジョナサンはそのまま深い眠りへと落ちて行った。 エピソード4 「ディオと鏡」 暗い暗黒街。耳をつんざく悲鳴。暗い闇の中 黒いフードを着た人物が闇へと走り去っていく。 それは誰もいない港へ着くと血の付いたナイフを海へと捨てた。 「あの詐欺師が・・・」 憎々しそうに舌打ちする。黒いフードから覗く白い肌。 まだ幼さの残る整った顔立ち。昨日ジョースター家に 戻ってきたディオだった。 何時ものように嘘の笑顔を張り付けてジョースター家の扉を開けるディオ。 途端に聞きなれた明るい声。そこには憎たらしいあいつが立っていた。 でも何故か松葉づえをついていた。片足には痛々しい包帯のあと。 こうなった理由をディオは何となく判っていた。 それはディオがジョースター卿の親戚のうちに長期滞在が決まった 時のこと。夜間ディオは黒いフードをかぶり館を抜け出し 暗黒街の呪専門の店を訪ねていた。 呪いなどに普段は頼らないディオだったが、あまりに評判がいいとの噂な ので 冷やかし半分に覗いてみた。そこには怪しげなものがたくさんあり、その中 でもひときわ大きな鏡に目が釘付けになった。 「主人・・・・これは・・・?」 ディオが聞こうとするといつの間にかそばに立っていた 小男がいやらしい笑みを受かべたまま説明した。 「これかい?お客さんお目が高いねえ。・・・その前に お客さん呪いたい相手はいるんだろうねえ。」 ねっとりと絡みつく視線を無視しディオは 「勿論。殺しても飽き足らないくらいね」と答えた。 男の声が興奮したものに変わる。 「それじゃあぴったりだ!いいかいこの鏡はね、仕返ししたい相手に 対し将来の君が代わって仕返ししてくれる鏡なんだ。勿論将来の君が 相手より強くなきゃダメなんだけど、なあに汚い手を使えば何とかなるさ 。使い方はね相手の血を鏡につけること、ああ、大丈夫この鏡は触っただ けで切れるようになってるから、それとほかの関係ない誰かが 触っても大丈夫。君が念じた憎い相手以外には何の反応も しないから。まあ・・君が殺したい と思っているなら特に注意点は言わないけど、この鏡はその憎い相手を 将来の君のいるところに送るんだ。戻らすには同じ鏡に触れること。 そのままもし鏡が割れてしまったらその相手は戻れないよ。まあ、少し 欠けたくらいだったら戻れちゃうけど・・・。」 ディオは要点だけに耳を傾けると「いくら?」と主人に聞く。 主人は「お高いよ」耳打ちすると欲しい金額を言ってくる。 なんだそんなものか・・ディオが言われた金額を差し出すと 主人は喜んで鏡の所にディオを連れて行った。 「さあ、さっき言ったように念じて。勿論心の中でね。」 嘘でもついてたら、殺して金を返してもらおうとディオは心のなかで 思いながら念じる。 『未来の俺・・・。ジョナサンジョースターを・・・憎いあいつに 限りない屈辱と敗北感を味あわせておくれ・・・』 一通りの『儀式』を終わらすとディオは運び屋に頼んで 鏡をジョースター家に持ち帰った。 家に持ち帰ったのはいいが、この鏡をどうやってジョナサンに接触 させるかだ。しかも悪い知らせは続く。どうやら自分はジョースター卿の 親戚の所へしばらく厄介にならなければいけなくなったらしい。 心の中で舌打ちをする。そんな時使用人の怒る声が下から 聞こえてきた。 「ジョナサンぼっちゃま!また倉庫に忍び込んで!」 ばつが悪そうに頭をかくジョナサン。 「だって・・・面白そうなものがあるから・・つい・・」 上目づかいで許しを貰おうとするジョナサン に使用人はため息をつく。 「いいですか?坊ちゃん・・だめなものは・・・」 その時間一髪ディオが使用人の言葉を遮る。 「まって!ジョジョを許してやって!」 「ディオ坊ちゃま・・・。」 「ありがとう!さすがディオだね!」 「まあ!もう・・・仕方がないですね。次は旦那様に 怒られても知りませんからね」 怒りながら去っていく使用人を見送るとディオは ジョナサンにそっと耳打ちする。 「僕がいないとき何か面白そうなものを見つけたら教えてね!絶対だよ?」 ジョナサンは心底嬉しそうに「まかせて!」とディオに返した。 さあ・・準備は整った。あとは、あいつがあの鏡に触ればいい。 そうだ、毎日あいつに手紙を送ろう。あのバカ正直者は必ず 毎日手紙を送り返してくるだろう。 もしその手紙が来なくなったとき・・ あいつに『なにか』あったときだ。 なるべく煽ってやろう。『何か発見はあったかい?』と。 くだらない使命感に煽られきっと倉庫に入るはず。そして 見たこともない鏡を触らずにはいられない筈。 ああ楽しみだ。 親戚の家でディオは手紙にペンを滑らす。 『名探偵の君へ』と出だしをつけて。 そんな期待もむなしくあいつは戻っている。 最後の日手紙が返ってこなくて、しめたと 思っていたのに。こともあろうにバカみたいな明るい 笑顔で。確かに五体満足ではないさ。 でもなんだ、あの癇に障る笑顔は。 『ディオ!おかえり!!』 『ジョジョどうしたんだい?その足・・・』 『それが・・・よくわからないんだ、骨折したらしいんだけど その時の記憶が全然ないんだ。なんか気を失ってたらしくて 使用人の何人かが見つけてくれたみたいなんだけど・・ 僕が寝間着姿で夜中に大広間で倒れていたらしいんだ』 『そうなんだ・・・大事に至らなくてよかったね。 足のほかは何ともないのかい?』 『ふくらはぎに傷があったって・・・あとはかすり傷 程度・・・寝巻が派手にやぶれていたらしく、 父さんなんか、悪戯してて派手に転んだんだろうって また怒られたよ・・・。』 『ははは、ほどほどにね。』 そう言うやりとりをして、ジョナサンは大柄な使用人の男に 支えられながら階段を上っていく。 使用人の男は随分ジョナサンを気に入っているらしく 丁寧にジョナサンを介抱していた。 『そのままその男に犯されてしまえば面白いのに・・・』 ジョナサンに見えないところでディオは悪態をついた。 ディオはそのまま倉庫に忍び寄り中をのぞくと自分の買った 鏡が淵しか残っていないのに気づく。どうやら割れて その破片は使用人が片づけたらしい。間違いない ジョジョはこれに接触している。そして悪運の強いあいつは こちらに戻ってこれた。けがをして。 だけどそれがなんだというんだ?肝心の出来事は全部 忘れているじゃないか。何があったのかは知らないが 将来の俺たちが何もしてない筈がない。 完全に欠陥品だ。 あの小男め・・・。今日をお前の命日にしてやる。 俺をコケにする奴は許さない。 勿論ジョジョおまえもだ・・・。 お前だけは・・・ 絶対許さない・・・。 終わり ![]() |