一つの流れ星みつけた 流れ星に願いをかける 欲しいものが手に入るように 温もりを与える星 青い髪の青い瞳の少年 気に入ったので捕まえた しかし少年は俺を拒む、仕方ないので檻の中に入れた 少年は冷たい牢の中、一人じっと座っている 俺が牢からそれを覗くと、激しく睨む 少年は未だに俺を拒む どうしてやろうか、どうしたら少年は俺をうけいれる? 痛めつけても駄目だ、この少年は心が強い 少年は常に仲間を心配している 窓の外を常に切ない顔で見つめている 形見の時計のような物を大事そうに握り締めている 誰かに想いがあるから俺が見えないのか? 仲間がいるから俺を受け入れないのか? 気に入らない お前の心の安らぎを お前の心の支えになるものを 全てとってしまおう まず、少年の形見を目の前で壊す 少年は烈火の如く怒りを露にする 俺は無駄な抵抗をする少年を軽くあしらい、部屋を出て行った 少年は悔しそうに粉々になった形見を涙目で見つめている いい眺めだ だがまだ足りない この程度では心の支えはなくならない そうだいいことを考えた 少年の仲間を一人づつ目の前で殺してやろう 心が折れる手前まで 仲間がいなくなれば、関係のない人間を殺していけばいい きっと耐えられないはずだ その時少年はどうするだろう 心の強い少年はどうするだろう 狂ってしまうだろうか それとも自ら死を選ぶだろうか だが自殺をされてしまうと困る 死ねない体にしてしまおうか そうだそうしよう 俺は少年を死ねない体にする そして、俺は少年の仲間(支え)を殺す まずは一人目 少年は俺に憤怒し泣き叫ぶ 俺を絶対許さないと、怒りの炎をその瞳に宿しながら 二人目 少年は泣き叫ぶ、俺に懇願する 今までどんなに痛めつけても懇願することなどなかったのに やめてくれ、頼むからやめてくれと、必死に懇願する 俺は条件を突きつける 俺の物になれば二度と手出しはしないと 少年の目から光が消え憂いを含んだ青い瞳が静かに伏せられる しばらくして少年は小さく頷いた どうやら負けを認めたようだ 俺は仲間を放してやる 約束は守ろう だから貴様も約束は守ってもらう 約束を破ったときは仲間が死ぬ 四角い窓の中から少年は仲間をそっと見送る 少年の仲間を見送る笑顔が悲しいものへ変わっていく その大きな瞳から涙が一筋流れた そのまま静かに涙をこぼし、地面にてんてんと跡をつくる 永遠の別れとなるのだ仕方ない その姿はとても哀れで綺麗だと思った これから少年は自分の言いなりになる お前が今まで仲間に与えてきたすべてのものが これからは一つ残らず、俺だけが手にすることが出来る その温もりも、愛情も、他の誰にも与えることは出来ない 俺だけに微笑み、俺だけに泣きつき、 俺だけを求め、俺だけに全てを晒し出せ きっと時間はかかるだろう 本当のお前を手に入れるのには だがお前は必ず俺の手におちる いや、おとしてみせる これからが楽しみで仕方ない 流れ星は願いを叶えてくれた ひとつのながれぼし、おちた 一つの流れ星みつけた 流れ星に願いをかける 欲しいものが手に入るように 温もりを求める星 茶色い髪の緑の瞳の少年 気に入ったので捕まえた しかし少年は俺を拒む、仕方ないので檻の中に入れた 少年は冷たい牢の中、一人じっと座っている 俺が牢からそれを覗くと、激しく睨む 少年は未だに俺を拒む どうしてやろうか、どうしたら少年は俺をうけいれる? 痛めつけても駄目だ、この少年は心が強い 少年は今孤独だ、心の支えだった友達が俺のせいで死んだ 少年は俺を憎んでいる 俺に会えばいつでも憎まれ口をたたく 煩い口だ、聞きたいのはそんな声ではない 俺は少年から声を奪う 少年はかわりに一層俺を強く睨むようになる 目は口ほどにものをいうとはよく言ったものだ 「おまえをゆるさない」とその目が語っていた ある時少年は窓の外の月を見て目を輝かせていた 憧れと尊敬のまなざしでそれを見つめている 俺には決して見せないであろう優しいまなざしで 気に入らない 視界も奪ってしまおう 少年は声と視力を失った そして少年はお返しに、俺の声に対して顔をそむけるようになった ある朝少年は、小鳥の声に耳を傾け、自分の手にしたパンを 千切ってほうりなげていた 小鳥が少年に近づきパンを啄ばむ やがて小鳥は少年のひざの上に乗る様になる 少年は小さな温もりの上にいるであろう小鳥に向かって微笑む 気に入らない お前の心の安らぎを お前の心の支えになるものを 全てとってしまおう きっと耐えられないはずだ だが自殺をされてしまうと困る 死ねない体にしてしまおうか そうだそうしよう そして少年は死ねない体になる 今や少年は言葉も、視覚も、聴覚も、嗅覚も全てが消えている 俺が消した、いらないものと判断したからだ 少年は苦しんでいる、何も判らないのだから当たり前だろう 叫びたくても声は届かず、その体に触れる物は冷たい無機質のものだけ 窓は閉じ、虫一匹も入らないようにしてやる 暗く音のない孤独の中、時折震えて頭を抱えて蹲っている そろそろいいだろう 俺は扉を開けるが少年は気づかない しかし俺が少年の頬に触れると少年は驚き、その手を 決してはなすまいと強く握る 優しくその手で頬を撫でると、少年は必死でそれにすがる 俺が抱き寄せると、少年は黙ってその身を委ねた 俺が敵だとわかっているのかどうか判らない 正常な思考など、もうないのかもしれない もしかしたらこれは芝居で、油断させたところで その小さな牙をむいてくるのかもれない だが、どうであれお前はこの館から逃れなれない 運よく俺の命を絶てたとしても、お前に残された道は 死ぬことも許されない、無限に続く孤独という地獄が待っているだけ お前にはもう俺しかいないのだ お前の相手はこの世で一人だけ お前に温もりを与えてやれるのはこの俺だけなのだ 少年の顔はとても安らいで、俺にその身を預けている 視覚を失った緑色の、あどけない瞳を時折まばたかせながら この手を離せば、その顔は悲痛なものへと変わるのだろうな せいぜい必死にしがみついておけ、俺のからだの一部分のように 切り離されたらお終いだ、一生懸命すがりついていればいい ああ、なんと脆くて愛おしいのだろう 流れ星は願いを叶えてくれた ひとつの流れ星、おちた 一つの流れ星みつけた 流れ星に願いをかける 欲しいものが手に入るように 温もりを拒む星 黒い髪の青い瞳の少年 気に入ったので捕まえた しかし少年は俺を拒む、仕方ないので檻の中に入れた 少年は冷たい牢の中、一人じっと座っている 俺が牢からそれを覗くと、激しく睨む 少年は未だに俺を拒む どうしてやろうか、どうしたら少年は俺をうけいれる? 痛めつけても駄目だ、この少年は心が強い 少年はこの年頃にしては珍しく、孤独を恐怖としない。 いつも目を閉じ、冷たいベットの上に寝転んでいる 逆に言えば孤独を愛しているのだろうか いや、孤独を愛する人間などいない どうしても孤独が必要なのだ 自分と相手を守るためには そう、この少年には見えない「棘」が生えている その「棘」は自ら望んでつけたものではない 触れなければ痛くないが、無理に触れればケガをする まるで棘を持つ植物や魚や動物のように 一見、凶暴なようだがこの手の生き物は戦いを好まない 相手に教えているのだ、触れなければ何もしないと しかし相手が信頼できるものであればその棘をたたせることはしない そしてまさに、その信頼できる相手がいまは「孤独」だけなのだ 気に入らないな お前の心の安らぎを お前の心の支えになるものを 全てとってしまおう きっと耐えられないはずだ だが自殺をされてしまうと困る 死ねない体にしてしまおうか そうだそうしよう そして少年は死ねない体になる あとは簡単だ、必要とする「孤独」を奪ってしまおう 俺は少年に幻惑をかける 少年の下に「人」を送り込む、「人」は少年に語りかける まるで少年の心を覗き見するように 少年は無視する、時折「人」を罵り、拒絶する言葉を投げかける 俺は「人」を増やし少年はそのまま無視し続ける 「人」は少年を見つめる、延々と見つめ代わる代わる話しかけていく やがて無表情な少年の眉間にしわが寄る 少年の怒鳴り声が辺りに木霊する その手を、その足を「人」に向かって容赦なく振るう しかし当たらない、幻惑であるから当然だ 少年はシーツに蹲り、その身を固める きっとその中では耳も目も塞いでいるのだろう そんな事をしても耳にも心にも「同情の声」は届いてしまうと言うのに 「人」は少年の心を優しく労わる 閉じている心の殻を無理やり引き剥がしながら 今や増えすぎた人たちは牢の中で溢れかえっている 少年が拒めば拒むほど、「人」は増えていく 少年が拒めば拒むほど「人」は心に深く入り込んでいく これが何日も続く、休む時間もなく、少年が「俺」を拒んでいる限り 狂いたいのだろうがそう簡単に狂うことなど出来ない 心が強ければ強いほど苦しむ時間が増えていく ある日少年が俺を呼ぶ その表情と瞳は虚ろで当初のギラついた光はまるでない その沈んだ瞳の蒼は、冷たい海の底を連想させた 俺は少年に選択させる 俺だけの管轄下に置かれるか、 心に浸入し続ける沢山の「人」の管轄下に置かれるか 少年は力なく「俺」を選択した 少年はそのまま俺に黙って手を引かれる 抵抗は無駄であり、生き地獄への逆戻りでもあるからだ 俺に従えば自分だけの時間も与えてやる そう付け加えると、少年は冷たい表情のまま黙って頷いた しかし少年の心はまだ折れてはいない きっと次のチャンスを伺っているのだろう たまに険しい表情で俺を見る、それがその証拠だ でもそれでいい、そのほうが面白い だが覚えておけ 俺にその手を預けた瞬間からお前は負けたのだ 俺は今からお前の心に侵入する お前の心を征服する 抵抗しても無駄だ、お前はもう「負けた」のだ 「次」のチャンスなどと言うものなどない 殻の中のお前の「本当の姿」は一体どんなものなのだろうな 流れ星は願いを叶えてくれた 一つの流れ星 墜ちた 戻る |